今日から第十三章に入ります
網代黒山松一件御通詞控、表紙
解読 文化辰巳年 古座浦
網代黒山松一件御通詞控
慶應元年丑閏五月御用控より
写し出ス 読みは省略します。
解説 「文化辰巳年」・・・文化五年六年(西暦一八0八、一八0九年)。本書作成の約六十年前。 「古座浦」・・・現在の和歌山県東牟婁郡串本町古座地区。江戸時代は古座組内の古座浦でした。 「浦」は「村」と同じ、江戸時代の最小行政単位で、年貢を米で納めている農村を「・・・村」と呼び、海岸沿いで漁業を主とし、年貢を現金で納めている漁村を「浦」と呼びました。 「網代」・・・『あじろ』と読みます。漁業を行う場所。(一定の海面)。特に漁業権の有る海の事。 「黒山」・・・山林の名。 「松一件」・・・「松の木に関する事件。 「通詞」・・・『つうじ』。一般に「通訳」の事。本件の場合は、お役所からの通知の言葉と言う意味か。 「手偏」に「口」と書いて「控え」と読み、意味も同じ。備忘のため書き留めて置く文書。私のソフトでは、この字は出ませんので、「控え」「ひかえ」と書いています。 次行最初は年号の「慶應」です。この「慶」の崩し方は最も難解な字の一つです。 「丑閏五月」・・・丑年の閏月の五月。閏月は前に説明しました。太陰暦で、季節と暦の月とを調整する為、一年を十三ヶ月とする年が有り、閏月は同年の二度目の月のこと。慶応元年には、五月が二回有る事になります。 「御用」・・・役所の案件。 「ひかえ」の次は「より」(合成字)。 「写し出ス」・・・約六十年前の書類から筆写したものである。