渡辺松男研究2の10(2018年4月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
【邑】P50~
参加者:泉真帆、K・O、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取未放
76 沈黙のひかりの層のぶあつきを突破しながら翡翠(かわせみ)となる
(「翠」の文字は、歌集では「羽」部分が旧字体「羽」です)
(レポート)
主語は「われ」でよいのだろうか。なにか突破しながらカワセミがカワセミとなる、とも思ったが、むしろ青葉の季節、重層的に感じる光のなかを抵抗感をもちつつ突破してゆく作者自身が、カワセミのように飛び、青く発光してゆくさまを思い描いた。(真帆)
(当日発言)
★「沈黙のひかりの層」は認識までの時間かと思いました。(慧子)
★魅力的な歌で惹かれます。宇宙空間を猛スピードで突き進んでいるような感じ。ものすごい抵抗
を押しのけて突き進んでいるうちに自分があの美しい緑色の翡翠になった。分厚い光の層という
のが読む側に実にリアルに伝わってきて、自分も一緒に飛んでいて息苦しさを覚えているような
気になる。(鹿取)
★スピード感のある歌ですね。時空を突破していく。「沈黙のひかりの層」は認識までの時間とい
う意見もあったし、いろんなものを含んでいるのでしょう。その前には太い樹になっているし。
とにかくかっこいい歌です。(K・O)
★タイムトラベルとか平行宇宙とかいろいろ想像させられます。分厚くて渦巻いている、ものすご
い大きな時空間。でも、ホーキングとかと違うところは、そこにあんな小さな美しい翡翠を持ち
込むところ。科学者と詩人って、そこがちょこっと違うのかな。(鹿取)
★『泡宇宙の蛙』って歌集の題に触れるところのある一首かなと思いました。(K・O)
★そうですね、「泡宇宙」というのも難しい概念でしたよね。(鹿取)