かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 388

2025-01-27 15:41:36 | 短歌の鑑賞

  2025年度版 渡辺松男研究47(2017年3月実施)
     『寒気氾濫』(1997年)【睫はうごく】P157
      参加者:泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、
            A・Y、渡部慧子、鹿取未放
            レポーター:鈴木 良明        司会と記録:鹿取 未放          


388 あじさいの藍濃きこれの世に覚めて足裏ひそと湿りていたり

               (当日発言)
★「覚めて」がとても大切な役割をしていると思います。覚醒と目覚めるとふたつの意味を持っていると思います。夢を見ていたのかなあとまで想像させるしくみになっている。    (慧子)
★「これの世に覚めて」以外は普通の歌だけど、この言葉で凄い歌になっている。    (M・S)
★私も「これの世」で日常から飛躍していると思います。これの世というからにはあれの世、普通「あの世」って言いますけど、に対応させているんですよね。ということはやはり存在論の領域ですよね。それから皆さん全員「あしうら」って読まれて、確かに広辞苑には「あしうら」しか出ていないですが、「ひそと」という柔らかい古語に対応させて私は「あなうら」と読みたいです。まあ、ルビは無いので作者の意図は分かりませんが。いずれにせよ、「あじさい」「あいこき」「あなうら」と頭韻を踏んでいて明るくてやわらかなリズムでしっとりした歌ですね。(鹿取)


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