かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞 210

2022-09-23 10:45:52 | 短歌の鑑賞
     ブログ版 清見糺の短歌鑑賞    
                      鎌倉なぎさの会  鹿取 未放
            

210 それでもなおせかいはすてたものじゃない正義もとめて一〇〇〇万のデモ
             2003年3月制作

 支部で鑑賞の折「作者は参加されたのか、それとも傍観者だったのか」という意見が出た。それに対して異議が殺到、参加しなかったからといって傍観者だとは決めつけられないという意見で、私もそう思う。おそらく作者はデモに参加して久しぶりに連帯の思いを深めたのではないか。しかし、不参加だったとしてもこの歌にこもる真摯な祈りは伝わるだろう。
 サルトルの「アンガージュマン」という言葉が流行し、政治の世界へ身を投じることが問われた時代から遠く隔たってしまった。作者は六〇年安保を経験し、教員時代、選挙違反だと密告されて逮捕、拘留され、職場へ戻ってからも長い差別に耐えて生きた。政治に対して屈折した思いを引きずって長年生きてきた作者が、一〇〇〇万人のデモにどれだけ励まされたことだろう。
   
コメント
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