かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 99 スペイン④

2024-09-21 09:54:48 | 短歌の鑑賞
2024年度版馬場あき子の外国詠11(2008年9月)
    【西班牙3オリーブ】『青い夜のことば』(1999年刊)P58~
     参加者:F・I、N・I、T・K、N・S、崎尾廣子、T・S、
       藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:渡部慧子 まとめ:鹿取未放


99 西班牙のオリーブの樹人口の五倍を立てりその実の津波

      (レポート)
 オリーブと人口の具合を計数化させたものをまず据える。EUの加入による援助を受ける一方で、農業技術の効率化、それに伴う農業人口削減、それらの人々の海外へ出稼ぎ、また輸入が恒常的に輸出を上回る等の事実が生じる。総合判断すれば効果大なりというところへ達していないことも考えられる。スペイン近代化に伴う大きな痛み、揺れの部分をオリーブの実に照準を当て「その実の津波」ととらえた一首である。(慧子)

 
    (当日発言)
★こんなに収穫できても国が豊かになれない、社会詠(T・H)


     (まとめ)
 レポーターのいうような農業技術の不足や農業政策の貧困、輸出入の問題などオリーブ栽培には問題は山積しているのだろうが、それは措いて歌に限ってみてみよう。この歌、まずはオリーブの木が人口の五倍もあることの驚きをいっている。オリーブの木が見渡す限り豊かに実って津波のように波打っているのだろう。実(ミ)と津波の「ミ」が弾んだリズムを生んでいる。スペインはオリーブ生産量で世界一だが、その七割をアンダルシア地方でまかなうそうだ。収穫は2月でジブラルタル海峡を渡ってはるかモロッコから季節労働者がやって来る。灌漑を利用して半月に一度はオリーブの根元に充分な水やりもしている。収穫したオリーブはその日のうちに工場で搾られ良質なオリーブ油になるという。(鹿取)

コメント
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