かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 326

2024-09-29 10:52:16 | 短歌の鑑賞
 2024年度版 渡辺松男研究39(2016年6月実施)
     【明解なる樹々】『寒気氾濫』(1997年)133頁
     参加者:S・I、泉真帆、M・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部 慧子   司会と記録:鹿取 未放
 

326 樹のもとに感情もまたみどりにてふかまなざしの君を恋いおり

     (レポート)
 もとより樹を好む作者が樹のもとへゆく。樹の包容力にたちまちに同化したのかもしれないと思ったが、「ふかまなざしの君を恋いおり」とあるように、「にて」と「おり」によって既に恋に落ちている状態。「ふかまなざしの君」とは、他の誰でもない「樹」なのだ。(慧子)
     雪国に子を生んでこの深まなざし   森澄雄
 

        (当日意見)
★ 「ふかまなざしの君」とは、他の誰でもない「樹」なのだとレポーターは言ってい
 らっしゃいますが、皆さんいかがですか?(鹿取)
★樹に恋しているんですか?そうすると分かりやすいし、ういういしいですね、みど
 りの季節に。(S・I)
★私は慧子さんに賛成です。樹が深まなざしをしていて、その樹に恋している。何首
 か前の歌(ぶつけあうこころとこころ痛すぎて樹々のみどりへ眼そらせり)に対す
 るM・Sさんの解釈のように奥さんとケンカしていて、ぶつけあうこころとこころと
 いうものがあって、でも最終的に は君に恋しているって考えることもできるけど、思
 い入れのある樹に恋しているととりたいです。(真帆)
★前の歌(一本のけやきを根から梢まであおぎて足る日あおぎもせぬ日)と関連して
 いるので、樹に恋している説に納得しました。(S・I)
★まあ、皆さんがおっしゃる解釈でまちがいとはいえませんが、少し先にとてもリアル
 な君が出てくるので、ここは女性を想定したいと私は思います。(鹿取)

コメント
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