かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 126

2020-11-28 17:36:19 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究14(14年4月)まとめ 『寒気氾濫』(1997年)50頁~
  参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、N・F、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
  レポーター:鈴木良明 司会と記録:鹿取 未放
             

126 直立で泣き叫びいし翌朝の杉は一層まっすぐに立つ

         (レポート)
 夜に入ると、寒気団による「からっ風」が吹き荒れたのだろう。そのために、前の歌では緘黙者であった杉は一晩中泣き叫び続けたのである。翌朝は、風も治まり静けさを取り戻したのだが、直立に立つ杉が一層まっすぐに立っているように見えたというところに、自然の営みの絶妙な調和、バランスが感じられて、この歌の魅力になっている。(鈴木)


         (発言)     
★杉が天から降ってきて着地したというような歌や、木の直立を疑わぬ人といて……という歌もあ
って、そしてこんな歌もあるわけですが、その幅を面白く思います。(鹿取)
★直立の杉だからいいですね。松だったら違う感じ。(藤本)
★きっとこの杉は風にもみくちゃにされて寒くて辛かったんでしょうね。そんな自分をちょっと恥
 ずかしがっているように翌朝は背筋を伸ばしてまっすぐ立っている、なんだか小学生を見ている
 ようないじらしい気がします。(鹿取)

  ※鹿取の発言の歌
     大空ゆ哭きたくなりて降る幹がつぎつぎ着地して杉林
          『歩く仏像』(2002年)
     木の直立をうたがわぬ人にきょう会いて退屈はわれを震えあがらす
                   『けやき少年』(2004年)


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