かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 348

2024-11-22 12:05:25 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 渡辺松男研究42(2016年9月実施)
    『寒気氾濫』(1997年)【明快なる樹々】P143~
     参加者:M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:鈴木 良明    司会と記録:鹿取 未放





           「短歌と書」展  渡辺松男の歌



348 あこがれのハヤブサを見しばかりにて鐘なるごとき冬空の紺

     (レポート)
 隼はタカ目ハヤブサ科の猛禽類。飛翔しながら小鳥などの狩りをするが、急降下時の速度は一説によると時速390キロに及ぶという。巣を作らず、断崖の窪みなどに卵を産み、生息数は減少しているので、普段目にすることも少なく、隼はあこがれの存在なのだ。その隼が冬空に偶然飛翔する姿を目にしたために、鐘の音と冬空の紺色の響き合った。(鈴木)


      (当日意見)
★あこがれハヤブサを観た喜びが「鐘なるごとき冬空の紺」によく現れている。(慧子)
★「鐘なるごとき」はウエディングベルのような幸せ感かな。(M・S)
★正岡子規の句の「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」はお寺の鐘。この歌では鳴ったと
 言ってはいないけど鐘の音の厳かな感じとか爽快感とか、ハヤブサを見た一瞬の感動
 を重ねている。そしてそれが冬空の深い紺色にも通じると。(鹿取)
★具体的にお寺とか教会とかいうのではなく、鐘でハヤブサのスピード感を表してい
 る。(鈴木)
★佐藤佐太郎に夕焼けが轟くごとくという歌があるのですが、景を音で例えるという主
 事法がある。(慧子)
★佐太郎には聴覚の歌が多いですよね。佐太郎を読むと耳の良い人なんだろうなといつ
 も思います。(鹿取)
★音と色彩を合わせた。紺には何か音があるような気がする。(鈴木)
★この間鑑賞した歌にも、 凧がそれぞれの紺の空にあるというのがありましたね。
   (鹿取)


      (まとめ)
 渡部慧子の当日発言の歌
はなやかに轟くごとき夕焼けはしばらくすれば遠くなりたり『歩道』
鹿取発言の歌
それぞれにそれぞれの空があるごとく紺の高みにしずまれる凧『寒気氾濫』

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