かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 38

2023-05-06 10:31:43 | 短歌の鑑賞
 2023年版渡辺松男研究5(13年5月実施)
    『寒気氾濫』(1997年)橋として
     参加者:崎尾廣子、鈴木良明、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター  鈴木良明 まとめ  鹿取 未放


38 影として霞ヶ関の上空を月のねずみは過ぎてゆきたり

       (レポート)
 霞が関といえば東京千代田区の桜田門から虎ノ門にかけての官庁街。国の行政枢要機関が並ぶ。本歌は、この上空を影として月のねずみが過ぎていった、と詠む。何のことだろう。月は前首を受けてぶよぶよの月だが、そこのねずみとは、作者自身ではないだろうか。作者は、地方自治体の職員として、霞が関の所管官庁を訪れ、担当の仕事について意見交換をしたのではないか。大きな実りがあれば実在としてのねずみを実感できるが、そうでないと影のような存在としてゆき過ぎたことになる。   (鈴木)

     (当日意見)
★月に兎がいるっていいますけど、ここでは月にねずみが住んでいて、そのねずみ
 ごと鬼や蛇や暗黒のもろもろが蠢いていると一般に思われている霞が関の上空を
 ねずみが影としてひょうひょうと過ぎていったというのが面白い。もちろん含み
 はいっぱいあるし、ねずみは〈われ〉の分身でもあるのでしょう。霞が関に叱ら
 れにゆくという歌もあったので、実際には役人として霞が関の担当者と事務上の
 打ち合わせをしたり、命令を受けたりしたこともあってそれを反映しているので
 しょう。 (鹿取)
   
 ※はるばると書類は軽く身は重く霞ヶ関へ叱られに行く『寒気氾濫』
38番歌もこの歌も表記は「霞ヶ関」となっているが、中央省庁の代名詞として使う場合は「霞が関」が正しいそうだ。省庁のある地名も「霞が関」だが、なぜか東京メトロの駅名は「霞ヶ関」。(鹿取)

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