かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 411

2025-02-28 16:19:32 | 短歌の鑑賞

  2025年度版 渡辺松男研究49(2017年5月実施)
     『寒気氾濫』(1997年)【睫はうごく】P164~
      参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
        レポーター:泉 真帆               司会と記録:鹿取未放 
 

411 花蕎麦のしずもれる日よ天体の外側へ消えゆきしはたれか

             (レポート)
 作者の内側から「氾濫」してゆくものをあてどなく感じ怖れているのではないか。「天体の外側へ」と物理的にとらえることで、自己の怖れを俯瞰し、得体の知れない怖れと対峙している作者の強い精神力を感じる。(真帆)


           (当日発言)
★消えていったのは光りではないでしょうか?蕎麦の花が咲いているんですよね。景がすばらしいですね。(A・Y)
★「たれか」で受けるのは普通は人間ですよね、光ではないと思います。(鹿取)
★消えてゆきしは死のことを言ったのではないかなあと思います。(慧子)
★この歌があるから、さっきの410番歌(みずからのひかりのなかにわく涙きみのそとへそとへあふれだす)の「そとへそとへ」が気になって抽象的な読みにも拘ったんですけど。松男さん、裏側とか外側とか拘ってたくさん詠っていますね。(鹿取)
★死ぬことを詠っているのですか?(T・S)
★煎じ詰めればそういうことかもしれないですね。「たれか」ってぼかしていますけど、特定の人を指しているのではないのでしょう。蕎麦の白い花が広がっている静かな光景の中でふっと死の ことを思っている歌かもしれませんね。小さくて地味な花が主役のように前面に出ているのが面 白いですね。(鹿取)


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