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NATO拡張、東地中海、アルカイダ

2016-06-20 23:22:05 | 欧州情勢複雑怪奇

今週はBrexitが23日にあるので、先週からなんだか奇妙な展開になってきている。それが一番大きいな問題だろうけど、その背後にはあと1カ月ぐらいするとNATOの総会があるのでそれを巡って欧州方面が非常に騒がしいのも特徴。

そういえば今週土曜日にはプーチンが習主席の招きで北京訪問という行事もある。どんんな感じになるんでしょうか。

さて、NATO方面。基本的にはあいかわらず、ロシアのaggression(攻撃、侵略)に備えなければならな~いという報道が盛んで、それに伴いバルト3国+ポーランドにそれぞれ1000人程度の部隊を置くことになっている模様。

さらに、黒海方面ではNATOの演習だけでなく、黒海艦隊を作るのだとかいってる向きもあるようだ。

で、ぶっちゃけ、それだけ見るといかにも威勢がいいし、実際マジで危険なことをしているとも思う。戦争には偶発事象の悪化から大衝突になるという経緯はつきものだから。

が、1000人×4のうち、アメリカは最初から1ユニットしか出さないといっていて、ではともう一つをイギリスが出すことにした。そこまでは今年の冬にほぼ確定っぽかった。しかし残りの2つがどこも渋って、おそらくドイツが1つ拾うことにしたらしくはある。これによって、1945年以来初めてロシア国境にドイツ兵が立つんですね! という騒ぎが生まれている。

恥ろよドイツって感じなんだけど、あの国は本当におかしいっつか、一般人が常識ラインをどれだけ語ろうとも政治が完全に権威主義というのか集団独裁。なんせ、野党という存在を無くしている状態でやってますんで、推してしるべしってところ。

■ ブルガリア首相、NATO艦隊になんか入らない

そんな中、まぁ大勢に影響があるかどうかわからんけど、ブルガリアの首相が、黒海はリゾートの海、戦争の海なんかにしない、そんなの受け入れられないと語った模様。現地報道をBloombergが拾ったのをRTが拾っていた。

‘I don’t need war’: Bulgarian PM rules out joining NATO flotilla in Black Sea
Published time: 17 Jun, 2016 10:44
Edited time: 17 Jun, 2016 14:16
https://www.rt.com/news/347087-bulgaria-nato-black-sea/

また、ルーマニアの大統領も、誰もNATO艦隊を黒海に作りたいなんて思ってない。ナンセンスだ、NATOにはそんなリソースはないし、黒海艦隊を維持したいなんても思ってない、と語った模様。

“Nobody wants to create NATO fleet. That’s nonsense. NATO has neither the resources nor the desire to maintain a Black Sea fleet,” Iohannis said as cited by TASS.

 

ぶっちゃけ、NATOはルーマニアとブルガリアを占拠して奴隷化したので、黒海が自分の海に見えているわけね。だからそこに邪魔なロシアがいるんだから、という話になってくるわけだけど、この2国にとって黒海艦隊創設って、ほとんど国運をかけた大事業だよね。ここは(笑)という感じ。

そもそも、なんでロシアに突っ込んでいかなければならないのか、誰にもわからない。あはははは。

■ ドイツ外相「NATOは挑発してる」と示唆

一方、被害者のふりをしつつ結局NATOを使って、念願の第四帝国を作ったも同然といった趣のドイツの外相ステインマイヤー氏は、先週月曜日にドイツのBuild紙で、属国の首長クラスとしては思い切ったことを言っていて、それが故にニュースになっている。

私たちは、戦争を挑発したり強気に出たりして状況を悪化あせるのを避けなければならない

東部国境でシンボリックに戦車のパレードをすることが同盟(NATO)のセキュリティを強化することになると考えている人はみんな間違ってる

と言ったらしい。

で、これが文脈からすれば、ロシアに対してNATOが挑発していると取れるので、話題になったわけですね。まぁシンプルにいって実際彼の言ってる通りなんだけど(笑)。

Germany slams NATO 'warmongering' on Russia
AFP
•June 18, 2016
https://www.yahoo.com/news/germany-slams-nato-warmongering-russia-115515814.html

"What we should avoid today is inflaming the situation by warmongering and stomping boots," Steinmeier told Bild in an interview to be published Sunday.

 "Anyone who thinks you can increase security in the alliance with symbolic parades of tanks near the eastern borders, is mistaken," Germany's top diplomat added.

 

とはいえ、ドイツは、この外相が親ロシア、反戦争、みたいなことを言う係、みたいな感じがしてしまうところもある。

ドイツ内の親NATOグループはしっかり存在しているし、メディアは、今にもロシアに侵攻していくんかいというほど反ロシアで、その傾向はまったく修正されていないから。

 

NATOの演習の様子付の短いニュース。

German FM criticized back home for calling NATO actions ‘warmongering
https://www.youtube.com/watch?v=8PQvuXJQl1g
 

■ 何をしているんだろう

で、一体全体何をしているんだろうというのは、前から何度か書いたけど謎。

NATOがバカな挑発を繰り返して少なからぬ冷静な欧米人を怒らせたり恐怖を感じさせたりしているこの状況は、一見すると軍事的に見える。いや、まぁそうなんだけど、しかしよく考えると、もしこの組織が純粋に軍事的にこんなことをやっているのだとしたらバカとしか思えない。

NATOは信じられないぐらいロシア国境に寄っている。だけどこれって、ロシアからの工作も容易になるという意味でもある。現在のロシア政府にはそんなことをして得られるメリットはないという判断をするだろうが、でも、純粋に軍事的に考えるのなら、NATOがバカみたいにまとまりのない兵隊をばらばらそこらに放置している状況というのは、ロシアの工作可能性が高まるってことでもある。

で、国境紛争からロシア軍がラトビアを制圧したとしよう。NATOが有効な反撃をする前にこの取り組みは終わる。間に合わないのは誰でも知ってる。

さて問題はここですね。ラトビアを奪還するためにロシア軍と戦おうという欧州軍は誰でしょう? さらに、実はラトビアにいたポーランド兵が先に撃ったのだのへちまだのという話が持ち上がった場合、スペインだのフランスがこの取り組みに興味を持つとは到底思えない。

つまり、グルジアの二の舞。

あるいは、ラトビアあたりを混乱の地点とみせかけて、その時既にクリミアの軍がルーマニアとモルドバを巡って交戦中、トルコ軍応援にかけつける、みたいな状況だと話は大きくなるけど、それでも、取られたモルドバを巡って、欧州勢+アメリカが戦いを挑むとしたら、それってつまり、モルドバには核戦争もいとわぬほどの魅力があるってことなの? と考えてくると、これもやっぱりとてもヘン。

別の言い方をするれば、NATOがロシアを攻めている状況は、攻め方がバカなために、実はロシアの側に場のコントロール権があるということ。なぜなら、ロシアが本当に作戦行動を実施したら、NATOは現在まで作ってきた軍事同盟としての外観が崩れてしまうから。

ちょっと尖閣を巡る日米同盟と似てるところがあるかも。

 

■ 東地中海

で、私が考えているのは、おそらくこれは、対ロの条件闘争なのではあるまいか、ってこと。

何を闘争しているのは、それはシリアであり東地中海じゃないんでしょうか。

シリア問題はまだ決着していないし、ケリーをはじめとしたアメリカの現政権は、ずるずるいろいろ理屈をつけたりイベント作ったりしながら、停戦するようなしないような、したら手持ちの駒に暴発させて停戦を破ったり、ってなことをずっとやっている。

シリアは独立国家なわけですから、この状況は既に異常な状態なわけですね。だって外国軍がうろちょろして、出て行かないと言い張ってるんでから。シリア国家が正式にいてください、加勢してくださいとお願いしたロシアと欧米は立場が違う。

つまり、突き詰めて考えると、現在掛かっているステーク、つまり利益は、

アメリカ(欧米)はアルカイダと手を切れるのか?

でもあり、もう少し大きく言えば、

ジハード→アルカイダ→ISを使った中東・北アフリカ支配、すなわち東地中海支配という野望を捨てられるのか?

じゃないでしょうか。

その調整の場というか条件闘争の道具としてNATOのロシア国境のぐじゃぐじゃがある、ってことじゃないのかな、ってこと。

だけどこれはつまりルーマニアとかブルガリア、あるいはポーランドあたりも含めえ、彼らをただの道具、奴隷化されたっつーか惨めな娼婦みたいな存在にしちゃってるのと同義なわけです。

といって彼らに政治的なパワーはないわけだけど、言うことを聞かない、思ってもいないところで頑固さを発揮する、みたいなことが発生する確率は時間と共に大きくなり、それをきっかけとしてNATOを操ってるつもりの側の作戦が崩れるってのもありそうだな~とか思う。

ローマ帝国末期も、そういえば別に何か目立った敗戦があったわけでもないのに属州民が言うことを聞かなくなって崩れたわけで、ああいう感じにあるのかなぁとちょっと思う今日この頃。

 


 

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2 コメント

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『東ヨーロッパ担当』は中国 (ローレライ)
2016-06-21 13:18:23
『東ヨーロッパ担当』は中国で『日本担当』はロシアと分担がはっきりして来た中での『プーチン訪中』や『中国のTu22量産』。
返信する
たすき掛け (ブログ主)
2016-06-21 14:39:53
そうそう、役割分担ができたなって感じですね。
で、ユーラシア側は独(EU)・中・露、極東部分は日・中・露の合従連衡に収斂されていくんないですかね。
露はどっちの側でもバランサー。

で、たすき掛けはその変数ってか肝ってかって感じ。ロシアからすると、ドイツと中国が組んで狂うというのが悪夢だけど、中国の背中の安全を担ってるのはロシアという恰好なので、背反に対する保険になってる、って感じ。
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