8月9日(月)に、井上ひさし追悼公演の一つ「黙阿彌オペラ」を観に、家人と新宿紀伊國屋サザンシアターに出掛けました。珍しく、観劇は家人と共通の趣味で、特に30代~50代に掛けて井上ひさしと清水邦夫の作品を何本も観に出掛けました。井上ひさしの作品だと「薮原検校」「雨」「イハートーボの劇列車」「化粧」「頭痛肩こり樋口一葉」などを懐かしく思い出します。どの作品も面白く、観劇の楽しさ・面白さを存分に味わいました。
清水邦夫作品では「タンゴ、冬の終わりに」「とりあえず、ボレロ」「夢さりて、オルフェ」「わが魂は輝く水なり」などの長い名前の作品や、「哄笑」でも主演を務めた松本典子のきりりとした演技が大好きでした。ただ私の耳が聞こえ辛くなった事もあり、この数年は観劇に出掛ける機会が極端に減ってきていました。
久し振りの観劇でした。井上ひさしさんは今年の4月9日に亡くなられ、新たな作品にお目にかかれる機会が永遠に失われてしまいました。家人から誘われた時、井上作品への懐かしさから即「観に行く事」と返答していました。今が旬の、人気の藤原竜也も出演するとあってか、前売りは完売されるほどの大盛況。ウイークデーの昼間、サザンシアターは熱気に溢れています。
幕が開くと吉田鋼太郎演じる河竹新七(後の黙阿彌)と藤原竜也演じる五郎蔵が、いきなり、柳橋脇の二八そば屋へ飛び込んで来ます。その店の、熊谷真実演じる”とら”が二人の様子を聞くと、今しがた二人は川に飛び込んで自殺を図ろうとしたとの事。かくして3人のテンポ良い会話が始まるのでした。
登場してきた役者さんたちの、セリフの切れと発声が実にいいのです。江戸弁だから早口なので、流暢でした。舞台のセリフが聞きづらくて、それも原因で芝居から遠ざかっていた事もあり、年か!と思っていたのですが、舞台では発声の良い役者たちの声が実に良く聞こえるのです。藤原竜也の舞台は初めて観ましたが、秀逸の演技。小声も聞こえるし、姿が美しい。舞台の花は姿なのだ!と改めて思います。
次の幕が開くと時代は江戸から明治へと移っています。二八そばの看板の代わり「国立銀行柳橋支店」の垂れ幕が。株仲間だった登場人物はそこの役員に様変わりしていました。その役員4人、新しい時代に相応しいオペラを書く様に黙阿彌に詰め寄りますが、黙阿彌は「地に足を着けて生きろ」と、逆に元仲間の4人を相手に熱気を帯びて力説します。井上ひさしさんの姿がダブる瞬間です。新しい時代の先端を生きようとした4人は・・・。
大分前の作品でしょうか。3時間15分の大芝居。時代も維新前後の井上ひさしらしい作品でした。
(追記)明日から18日まで、ブログも夏休みいたします。