マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

三月大歌舞伎『佐倉義民伝』を観る

2012年03月09日 | 映画・美術・芝居・落語

 3月7日(水)、新橋演舞場で三月大歌舞伎「佐倉義民伝」を観て来ました。
 今までに”義民佐倉惣五郎”の話は書物などを通して何度か読んだことはありましたが、映画や演劇・歌舞伎などでヴィジュアルに観るのは初めてのことです。頂いたチケットは前から3番目の席で、期待を膨らませ新橋演舞場へと足を運びました。
 
 3月大歌舞伎の夜の部の演目は次の3つ
 1・佐倉義民伝
 2・唐相撲
 3・小さん金五郎

 佐倉義民伝で下総佐倉の名主木内宗吾を演じる松本幸四郎の渾身の演技が一番印象に残りました。
 時は承応2年(1653年)、所は下総佐倉。名主木内宗吾は不作と、領主堀田上野之介の過酷な課税に苦しむ農民を救おうと、死罪覚悟で将軍への直訴を決意し、家族に別れを告げる為密かに帰国します。印旛沼の渡し場では、宗吾詮議のため、夜の渡し船が禁止されています。そこへ事情の知らない宗吾がやって来ます。ここから幕が開け、物語が始まります。
 1幕目の場面は渡し小屋。宗吾の覚悟に感銘した渡し守甚兵衛(配役左團次)は、自らの危険をも顧みず、舟を繋いでおいた綱を鉈で切り捨てて舟を出します。そこに至るまでの、二人の相手を思いやる気持ちが伝わって来る場面です。前から3列目、二人の表情がはっきり見え、思わず二人の思いやりに感情移入し目頭が熱くなります。自らの命を捨ててまで、恩義ある宗吾を助けようとする、老いた甚兵衛を演じる左團次がはまり役で、これまた良いのです。
 漸くの思いで我が家に辿り着いた宗吾。福助演じる妻おさんに離縁状を用意していました。直訴後の災難が家族に及ばないようにとの配慮です。それに気が付き、運命を共にしようとする妻おさん。この芝居の最大の見どころです。
 場面は暗かった佐倉から一転、紅色まぶしい上野寛永寺へ。4代将軍家綱へ直訴する場面です。漸く思いを果たす宗吾。ここで幕となりました。
 史実によれば、年貢は軽減されますが、宗吾と妻おさんは磔の刑に。男子は死罪。
 死を覚悟して大義に殉じた宗吾と、その思いを共有して果てた妻と甚兵衛の生き方が心を打ちます。