これは古書に纏わるフィクションではありません。
週に2~3回、神田などの古書店を巡り歩くことを常とする友にSさんがいる。先週金曜日の16日、池袋「すしざんまい」で一献傾けた。その日は神田から五反田に廻り、古書祭を覗いてきたとのこと。
Sさんと知り合ったのは30年前。向丘高校の同僚として知り合い、同じ学年を組み、50数回の山行を共にして来た。山行のみならず、旅行・温泉・お酒・スキー・ゴルフ・味噌造り・釣りなど実に多くの遊びも共にして来た。彼の故郷青森県脇野沢を訪ねたこともある。人事院委員会に提訴した闘いでは、共に代理人を務め最終陳述もした。
長い付き合いの中で聞いたその経歴は強烈なものであった。中学卒業後通った大湊高校定時制は、遅くまで続く力仕事の為、午後6時過ぎでないと登校出来なかった。卒業後上京し、仕事をしながら大学も夜間部に入学、途中昼間部に転部し、大卒後は大学院でも日本古典文学を学び続けた。
働きながら学んで来た人には親近感を抱きやすい私は、同じ学年を組んで直ぐに彼と意気投合した。多くの趣味を持つSさんは、取り分け古書蒐集に情熱を燃やしている。
3ヶ月に一度程度会って来たSさんと一献傾けるのは今年になって初めて。このところ良く利用する「すしざんまい」に行った。極上本マグロがウリで、回転寿司ではないのが気に入っている。その夜もマグロを中心に食して、お安く終わった。
二人の間で話題になったのが古書。彼は毎週2~3回の古本屋巡りで、夏目漱石・森鴎外・藤沢周平・吉村昭などの著になる単行本の殆ど全てを手に入れかつ読み終えたとか。それも初版本を狙っているが、一冊5万円は下らない書もあり、そこまでは手が回らないと。最近は松本清張の著作を中心に買い集め、後20冊で全て揃うとのこと。因みに「『熱い絹』は読んだ?」と聞くと、読み終えているそうで、流石!と感心。
古書蒐集と読書に情熱を傾ける友の話を聞いて、私はコレクターではなく、オンライン派ですが、煽られたような感覚になりました。百名山は現在65の彼とは次回は金峰山に登る事を約して別れた。