マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『みちのくの仏像展』を観る(その2)

2015年03月18日 | 映画・美術・芝居・落語

 若い頃から東北が好きだった。大学時代になると、周遊券を利用して鉄道の旅に出るようになっていたが、東北方面への旅が多かった。教員となってからは夏休みや春休みを利用して、福島県の学生村への長期滞在の旅もあった。東北人の素朴な人情に接することもあったが、それよりもその風土や風景がわたし好みだった。それ故か東北地方への勝手な身贔屓がある。そんな眼から見て、この展示で出会えた、殊更気に入った仏像数点に触れたい。

 円空仏は3体展示されていた。中でも、秋田県・龍泉寺の十一面観音立像は今までに観たことの無い造りだった。円空といえば、鉈彫と呼ばれる表面に斧で割って出来た木目が残る作品を観てきたが、この作品は表面が平で、頂上には如来面や如来立像・菩薩面などが刻まれ、より丁寧に制作されたことが窺えた。円空の作品としては前期に属する作品とのこと。








 勝常寺の薬師如来の脇持・月光菩薩立像は女性の様だった。仏像は中性とされているが、この仏様を下から仰ぐ様にみると、その面立ちは女性と感じられた。解説によれば開山の徳一は空海や最澄とも交流があり、都から遠く離れた会津で、これだけ濃厚な仏教文化が栄えた一因と考えられると。








 宮城県・給分浜観音堂の十一面観音菩薩立像は優しいお顔だ。給分浜は牡鹿半島の先端の高台にある集落。高台故に、それは遠くからも目印になる灯台のような存在で、2011年の東日本大震災では、津波は集落にまで押し寄せたが、高台にあった故に難を免れたそうな。








 山形県・本山慈恩寺(創建は行基とされている)の十二神将立像(丑神・寅神・卯神・酉神)からは、力強さが伝わってくる。運慶の弟子たち「慶派」によう制作と考えれれる、鎌倉時代最先端の作風と解説されていた。みちのく寒河江の地にこのよう仏像が作られた謎を、図録解説は、そこが藤原氏荘園の地であったからと解説していた。(写真:丑神)

 展示品は数少なかったが、多くの作品から、東北地方らしい雰囲気が感じられ、満ち足りた思いで東博を後にした。