マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

猿之助の宙乗り

2016年06月09日 | 映画・美術・芝居・落語
 6月4日(土)に、六月大歌舞伎「義経千本桜」のうちの第三部「狐忠信」を観て来た。その後半”川連法眼館(かわつら ほうげん やかた)”のフィナーレで、猿之助は歌舞伎座では初めての宙乗りを演じ、万雷の拍車を浴びつつ幕となった。私達は2階席からの観劇で、宙乗りを観るには絶好の高さ。宇宙飛行士が遊泳する様な妙技を堪能した。(写真:東京新聞より。2012年の「四の切」での宙乗り)













 6月の歌舞伎座は「義経千本桜」からの三部構成で、全五段のち今回は二~四段目を上演。猿之助は第一部の「碇知盛」、第二部の「いがみの権太」、第三部の「狐忠信」と、全三部に出ずっぱりの大奮闘。元気溌剌とした猿之助。
 歌舞伎座での3部制興行は過去には「納涼歌舞伎」などで開催されたらしいが、改装なった歌舞伎座では初めてのことではないか。2部制では1幕が長すぎるとの外国人観光客の意向を意識しての試みの実施とか。第三部は午後6時15分の開演で21時少し過ぎには終演となった。

 まずは”道行初音旅”。都を追われた義経の後を追って静御前(染五郎)は、桜満開の吉野山にやって来る。義経の命で、その静御前を守りつつ同行するのが佐藤忠信(実は源九郎狐。猿之助)。
 登場した静は満開の桜を背景に一人で義経を想い踊る、まさに絵になる舞台。忠信狐は、静がいつも持っている鼓(初音の鼓)を打つとかならず姿を見せる。その二人は壇ノ浦の合戦の様子を思い出しながらに舞う。狐忠信は静をなぐさめるために、あたかも義経の如く、恋人のように舞うがのだが、私にも本物の恋人同士の仲睦まじい舞に見えた。染五郎の優雅にしてきりりとした舞が美しい。
 さて夕食休憩が終わると“川連法眼館”。その粗筋は・・・吉野山中の川連法眼の館に潜んでいる義経のもとへ本物の忠信が参上。義経は忠信に静の行方を尋ねるも本物の忠信は知る由もない。そこへ静と狐の化身忠信が現れ、本物と鉢合わせ。忠信に化けた狐の化けの皮がはがれてしまう。狐忠信は、もう隠せないと観念して、自分の正体を語り始めると、
 実は狐は「初音の鼓」となった狐夫婦の子供で、親を思う子狐の情愛にうたれた義経がその鼓を子に与えると、子狐は大喜びで飛ぶようにして古巣へと帰っていく。その喜びを猿之助は宙乗りで表現したのです。
 この宙乗りは四段目にあり、それ故”四の切”とも呼ばれている。猿之助は「四の切は一生演じたい」と抱負を語っているが、そう何度も演じられないだろうし、私達も再び観劇できるとは限らない。歌舞伎座での猿之助の初”四の切”を見られたのは大きな幸運だった。