カボチャの収獲はなかなか手強かった。上に伸びた蕗のような葉っぱと地を這う蔓が畑を覆っている。歩くだけでもつまづきそうになるが、8人ほどが横一列になって両足で葉っぱを左右に振り分けながら前進し、カボチャを見つける。
T農場には左右にコンベアが伸びた自走式の収獲機械があった。ハサミで切るか、ひねってもぐかして採ったカボチャを後ろで控えているコンベアに乗せる。
何人かの手によってヘタは切り揃えられ、ピックアップされ、最後は金属カゴに収納される。トラクタがトラックへとピストン運搬する。
聞くと、一般的には採ったカボチャは畑の数カ所にまとめて置いておき、順次、ピックアップしてトラクターのカゴに収納する方式らしい。T農場は会社組織でもあり大規模作付けと収獲の機械化が進んでいるのだろう。
足でカボチャの葉っぱと蔓の海を払っている時に学生時代のRugby仲間の“写楽”を想い出した。
手を使えないラックという密集が形成される前に地上のボールを拾い、後方から来る味方にパスしてから倒れる技術が秀逸だった。それも写楽の絵のような小さな手で。
ある時、レフリーが笛を吹いてプレーを止め、「この密集からこんなに綺麗にボールが出る訳が無い。」と一人一人起こして一番下にいた“写楽”を指し、「ピックアップ!ペナルティ!」と宣告した。ラックの中で手を使ったというのだ。先入観に囚われたレフリングだが逆らえない。
カボチャ畑はまさにラック状態。脚で払って現れたカボチャは“写楽”の奮闘で突如現れたボールのようだった。
“写楽”はそのものズバリのニックネーム。仲間の飲み会で度々登場する話に「オレ、そんな事してないよ。」と真剣だ。
茶目っ気たっぷりに「実は・・・」と白状する男なので真実だ。カボチャ収獲は足を使い、手を使い、立ったりしゃがんだり。最前線でボールが出やすいように奮闘していたFW1列目の苦労を偲びつつ結構キツイ収獲作業をした。
暑くて1日でスポーツドリンク5缶、麦茶の普通ボトル2本を飲んだ。あの頃は水分補給禁止の時代だった。
《「味の総括」なる品種》