大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒が自殺した問題で、教諭が自殺当日、男子生徒への「いじめ」を校長に報告した文書が存在していることがわかった。遺族が市などを相手取った民事訴訟の第3回口頭弁論が18日、大津地裁であり、市側が文書を提出した。学校側は「(自殺前に)男子生徒へのいじめを認識した教諭はいなかった」と説明してきたが、事前にいじめを認識していた可能性が浮上した。
市教委の松田哲男教育部長や中学の校長によると、校長は文書について市教委に報告していなかった。県警が今年7月、男子生徒への暴行容疑の関連先として学校を捜索した際に押収した。市教委の職員が今月に入り、県警から返却された資料から見つけた。
文書は「生徒指導連絡」と題する報告メモ。男子生徒が自殺した昨年10月11日、「知っていることを報告してほしい」という校長の指示で、3年の生徒指導担当(当時)の男性教諭が作った。
男性教諭は、昨年10月5日に学校のトイレで男子生徒が同級生に殴られた件について、「男子生徒が弱い立場にいる。加害生徒の行動をいじめ行為としてとらえた。被害者として指導する」と書いていた。他の教諭から聞き取りした内容という。
校長はその日に内容を確認したが、放置していた。校長はこの日の記者会見で「我々が把握している事実と違った。誤解と判断した」と釈明した。また、「当時は聞き取りが十分できていなかった。当時の判断は間違っていない」と話した。
一方、松田部長は「学校を信用した甘さがあった。今までの説明と違い、学校がいじめを認識していた疑いがある。極めて大事なことで、しっかり調べたい」と強調した。また、市教委から文書の存在を指摘され、校長が教諭10人から話を聞いたところ、3人が「(自殺前に)いじめの疑いを持つべきだと判断していた」と答えた。
越直美市長は「学校の姿勢は問題があった。厳しく問い直されるべきだ」と話した。
滋賀県大津市でいじめを受けていた男子生徒の自殺をめぐり、両親が市や加害生徒らに損害賠償を求めている裁判で、市側は自殺の前に教諭らがいじめと認識していたことをうかがわせる証拠資料を提出しました。
3回目となった18日の弁論で男子生徒の遺族側は、「いじめを目撃した生徒が教諭らに報告したにもかかわらず、口頭での注意に留め、いじめを放置した」と主張しました。また、両親の要求を受けて今回、大津市は、生徒70人分の聞き取りメモや生徒指導に関する業務日誌などの証拠資料を提出しました。
これまで学校や教育委員会は、「アンケート調査をするまでいじめに気付かなかった」と主張してきましたが、この証拠資料の中には、男子生徒が亡くなる1週間前に受けた暴行について「いじめと捉えて指導する」と書かれた文書も含まれているということです。
「学校の先生方がいじめを見ておきながら、それを見逃してしまったことであるとか。大津市にとって不利、我々にとって有利な内容が含まれている証拠が提出されている」(原告代理人・石川賢治弁護士)
18日の裁判で、いじめたとされる同級生側は、自殺の練習や万引きの強要については、「そうした行為自体がなかった」と全面的に否定しました。