橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

土曜ドラマ「再生の町」

2009-09-27 11:43:18 | Weblog
このところのNHKドラマは、時代の予言者のようである。

NHKの土曜ドラマ「再生の町」がゆうべ最終回を迎えた。
このドラマ、財政破綻しそうな市を立て直すというテーマだが、
ニュータウン計画という巨大公共事業を見直すか否かという
ことを軸に話が組まれていた。
奇しくも、放送期間中に、八ッ場ダム中止が話題となり
ダムとニュータウンの違いはあれ、とてもリアリティが増した。

今現在、日本が抱えている問題点や、国民が漠然と感じている不満や
期待感を昇華する形でドラマをつくるということに関しては、
NHKは完全に民放を凌駕している。

同時期にTBSでは「官僚たちの夏」を放送していたが、
しかし、こちらは、官僚が熱かった時代という過去の話だ。
官僚はこうあって欲しいという思いは託せるものの
今、新政権が霞ヶ関の変革に挑戦しようとしている中、
この話にシンパシーを感じるには、
少々、歴史に対する認識が必要となるだろう。

一方で、「再生の町」は全く今現在の出来事をモチーフにしていて
誰でも感情移入ができる。
しかし、視聴率自体は、実は、この「再生の町」も一桁だったようだ。
最終回の視聴率はまだ出ていない。
ちなみに「官僚たちの夏」は初回14%台から徐々に一桁に落ちていっている。

「再生の町」をべたぼめにしてるようだが、
全5回という制約もあってか、作りは粗い。
話もよく言えば分かりやすいが、悪く言えばステレオタイプかもしれない。
それでもなぜ私が、このドラマを評価するかというと、
それは、このドラマで描かれたようなわかりやすい変革と
人々の熱い思いが今の日本には必要だからだ。

ドラマは、財政再建のため、ニュータウン計画を凍結させ、
医療や子育て、高齢者施設、教育など
暮らしに関係する現場の予算削減を最小限にとどめるという
財政再建プロジェクトチームの役人と
ニュータウン推進の市議会議員やそこにつながる役人の戦い。
そして、そこにニュータウン推進を公約に当選した市長が加わる。
(この市長は自らの公約をめぐって苦悩することになるのだが)

ニュータウン凍結に変わる町の将来ビジョンを示せと言われた
プロジェクトチームは、
パートナーシップ構想という市民参加の行政構想を提示。
行政コストを下げるため、市民にも参加してもらおうというものだ。
また、市営住宅の空き部屋を子育て支援や高齢者施設に流用するなどの
プランを提示する。
これは、行政の縦割りを廃し、各部局の垣根を取り払わねば実現できない。
また、国(国交省)に申請し許可を取らねばできないことだ。
まさに地域主権の実現である。

そして、これは民主党や社民党など、現在の与党が考えている構想と合致する。
ドラマはやや勧善懲悪的なところもあって、手放しで礼賛というわけではないが、
これから各地で、このドラマのようなぶつかり合いが次々に起こると考えられる中
市民に取ってなんらかの参考になったんではないかと思う。
とはいえ、最後、市長のびっくり発言で一件落着みたいな、
ちょっと水戸黄門的なところもあって、そんな簡単じゃないよなと思ったのも事実だけどね。

とにかく、
これまで、国の決めたことはどうせ動きゃしない、
どうせ大きな企業が議員とつるんで何でも決めてしまうから
一市民にはどうしようもないとあきらめていた人々に、
世の中は、市民一人一人が中心の新しい時代に入ったということを
実感してもらうという意気込みが感じられるだけでも
このドラマは評価されてもいいと思うのだ。

ちなみに、このドラマで、ニュータウン推進派の急先鋒である
市議会のドンを演じていた近藤正臣は、
長良川河口堰撤去を訴える「2009長良川救済DAY」の呼びかけ人に名を連ねている。
現代の悪代官役、やりがいあっただろうなあ。

最初に書いた、NHKドラマは予言者という言葉には
もう一つの理由があるのだが、
長くなったので、あとでアップします。
ちょっとお出かけ