マムシの害を避けるまじない歌
2021.7
蝮蛇の害を避ける歌、というのが、奥州にある。
土地の人が、松茸を採ろうと山に入るその前に、一首の歌を三遍となえると、マムシの害には遭わないそうである。
ある樵(きこり)の話であるが、
その歌は、古くより言い伝えられていて、効果があるそうである。
戯(たわむれ)に記すと、
此(この)山に にしきまだらの 虫あるは 山たつひめに 談り聞さん(かたりきかさん)
(訳者注:全体の文章から、この歌の意味は、「マムシよ、出てきたら猪に教えて、お前を食べてもらうぞ。」であろう。)
と云う。
(訳者注:ここに言う虫とは、蛇=マムシを指す。古語では、マムシや蛇を、ムシ=虫とも言う。
漢字でも、蛇は虫偏です。蛇は、本草学では、虫類に分類します。足のあるムシは、蟲、足の無いムシは虫です。)
考察するに、にしきまだらとは、蝮蛇(まむし)の事を言う。
「本草綱目」に曰く、「頭斑身赤文斑」。
又「本草拾遺(原文では、蔵器)」に曰く。蝮蛇錦文とあるのによって、にしきまだらと言う。
また、考察するに、山たつひめとは、鹿の事である。
本草書に、鹿の別名に、斑龍の名がある。それで山龍姫とも言う。
鹿は草を食べて、虫類を食べる事はない。
蝮蛇を好んで食べるのは、猪である。
和歌に山龍姫とあるが、この場合には、猪の事を指すのであろう。
以上、「中陵漫録」の「蝮蛇の歌」の項より。
最新の画像[もっと見る]
- ワニの標本江戸時代の 「重訂本草綱目啓蒙」 3ヶ月前
- ワニの標本江戸時代の 「重訂本草綱目啓蒙」 3ヶ月前
- 江戸時代の入れ墨の刑 図示(風俗画報) 4ヶ月前
- 皿屋敷 諸国里人談 8ヶ月前
- サッカー(蹴鞠けまり)の精霊 千年前の 「伊勢参宮図会」 2年前
- アマビエ か? アマビコ か? 昔日叢書「長崎怪異書簡之写」 2年前
- 獺祭=カッパの恩返し 信濃奇談 2年前
- 青鷺の妖怪 「尾張名所図絵」玉滴陰見 4年前
- 邪馬台詩:江戸時代に流行した予言の詩 その1 5年前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます