防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しを巡る自民、公明両党の実務者協議に暗雲が垂れこめている。年内にもまとめる方針だったが、実務者間で方向性を共有していた国際共同開発品の第三国輸出について、公明内で慎重意見が浮上しているからだ。党内外から「ちゃぶ台返しだ」との批判が出る一方、岸田文雄首相の政治決断を求める声も上がっている。
共同開発、日本のみ不利な状況
「党の正式見解だ。これまでのあり方を大きくはみ出すので慎重であるべきだ」。公明の石井啓一幹事長は1日の記者会見で、政府が英国、イタリアと共同開発を進める次期戦闘機を念頭に置いた国際共同開発品の輸出解禁についてクギを刺した。
英伊両国は日本の事前同意を得て第三国へ輸出できる一方、日本からの輸出対象は共同開発国の両国だけ。日本のみ不利な状況に置かれている。
だが、1日の実務者協議でこの点は議題にならなかった。協議関係者は「あえて触れなかった」と打ち明ける。公明幹部から「まず政府側から国民が納得する説明をすべき」と異論が出たからだ。
ただ、共同開発品の輸出をめぐり、両党の方向性は早い段階で一致していた。7月までの協議を踏まえた論点整理で、解禁へ向け「議論すべきという意見が大宗を占めた」と記載されていた。
池田大作氏死去で原点回帰
終盤での〝変節〟の背景には、支持母体・創価学会の池田大作名誉会長が11月に死去し、党の姿勢を改めて打ち出す必要が強まったとの見方もある。公明党は結党以来、「平和の党」を掲げており、原点回帰を図ったというわけだ。
両党の実務者協議関係者の間には日英伊3カ国の調整を控え、「年内には一致したい」との思惑がある。自民側の案は共同開発品の輸出解禁は「決着済み」と記載。約10年後と想定される戦闘機配備後に輸出解禁を検討する意向を示す公明幹部には、一部公明議員も「10年以上後に議論すればいいはずがない」と憤る。