東京地検特捜部は、自民党派閥の政治資金パーティー券疑惑をめぐり、最大派閥・安倍派(清和政策研究会)の松野博一前官房長官や高木毅国対委員長ら幹部に任意の事情聴取を要請した。同派では、パーティー券の販売ノルマ超過分を政治資金収支報告書に記載せずに所属議員にキックバック(還流)していた。特捜部は、経緯や認識などを確認する見込みだ。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、一部メディアの内閣支持率が「退陣水域」ともいえる10%台まで下落した岸田文雄首相と、警戒される最強官庁・財務省と特捜部の思惑に迫った。 自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部が19日、政治資金規正法違反の疑いで安倍派と二階派の事務所を家宅捜索した。これは、一体何を意味しているのか。 私は今回のスキャンダルが明らかになる前から、一貫して「特捜部と財務省が鍵を握っている」と指摘してきた(11月24日発行本欄)。とりわけ財務省だ。彼らは自分たちの「傀儡(かいらい)」として増税に邁進(まいしん)するはずだった岸田政権が、真逆の「減税」にかじを切ったことが許せなかった。 特捜部としても、最大派閥の安倍派をたたくのは、「この国の真の権力者は誰か」を世間に見せつけるうえで、大きな意味があった。そんな両者が「最強タッグ」を組んで、安倍派たたきに動いた。そして、政権を「自分の手のひら」に乗せてしまった。それが、この事件の本質ではないか。 マスコミは連日、大報道を続けているが、彼らがまったく指摘しないのは、特捜部が本格的な捜査に動き出す前に、岸田首相が「なぜ、あれほど大規模な安倍派パージの人事に踏み込めたのか」だ。 私は「安倍派に捜査が集中するという情報を、岸田首相は事前に入手していたのではないか」と疑っている。人事を断行した後になって、「実は〇〇派の方が悪質で、そちらが本筋だった」などという展開になったら、大変だ。下手をすれば、人事のやり直しになってしまう。そんなリスクを避けるために、喉から手が出るほど捜査情報が欲しかったに違いない。 岸田首相はその気になれば、法相を通じて検察情報を入手できる。あるいは、自分が直接、検察に接触することもあり得る。「政治が個別事件の捜査に介入するのはタブー」とされているが、実は、水面下で検察が首相に接触したと疑われる例がある。 野田佳彦政権当時、法相だった小川敏夫元参院議員は、小沢一郎氏の裁判に関連した特捜部の虚偽捜査報告書事件を振り返った著書『指揮権発動』(朝日新聞出版)の中で、指揮権発動を決意して、野田首相と面談する前日に突如、法相を解任された経緯を暴露している。 死刑廃止論に傾いていた前任者の平岡秀夫元法相も、死刑制度存続論に立つ法務官僚と対立し、解任されていた。いずれの解任も、小川氏は「法務官僚が首相官邸にねじ込んだのではないか」という趣旨の疑念を記している。法務検察当局はいざとなれば、首相に接触できるのだ。ということは、逆も当然、あり得る。 岸田首相が捜査情報を入手したうえ人事をしていたなら、それ自体が大スキャンダルだ。政治的思惑で捜査情報を利用したかたちになるからだ。そんな話がリークされたら、政権は一発で倒れてしまう。これが当たっていれば、岸田首相は特捜部に首元を抑えられたも同然である。すべてが闇に埋もれている限り、政権は生きながらえたとしても、もはや自分の思い通りには動けないからだ。 岸田政権はいま、財務省と特捜部の恐ろしさを脳裏に刻んでいるに違いない。強制捜査は始まったばかりだ。事件の展開は予断を許さない。
産経新聞
それというのも、公安部はAについてこそ把握していなかった可能性はあるが、その他の関係者についてはすべてわかっていた節があるからだ。実は米国が伝えてきた携帯電話の名義人はBという女性。張が頻繁に連絡を取っていた先のひとりであったため、すでに公安部は、Bの存在をつかんでいたというのだ。 「この女性は、中国大使館や中国軍系企業とされるファーウェイに勤務したことのある経歴の人物で、現在は中国のエージェントとして活動。車関連のIT技術や特許の窃取、また、それらについての知識や技術を有する人材のヘッドハンティングなどの工作が任務だ。そうした任務柄、米国が提示した中国企業の日本法人ともコンタクトがあった」 米国からの通報を踏まえ、公安関係者は、そんなことを明かしたのである。また、日本法人についてはこうも述べている。 「その会社は、中国の政治協商会議(政府の諮問機関)の指示や在日大使館のバックアップのもと、最新のEV技術の窃取の目的で、すでに技術に優れる日本企業4社を買収し、傘下に収めている。また、買収専門の別会社を設けてもいる」 つまり、公安部は張を泳がせておくことで、Bという工作員の存在、Bと関係のある中国系企業の活動ぶり、そして、中国系企業の背後に中国政府や大使館が控えていることなどを把握していたのである。そこに、新たに米国のシリコンバレーで暗躍し、CIAにもマークされていたIT専門のエージェントが加わったことが判明し、ついに事件に着手したという図式ではないのか。 公安関係者は、スパイ映画を地で行くかのようなエピソードをも明かしたが、これは現在、Aについても十分にトレース済みであることを示している。 換言すれば、米国の通報以上に、日本を舞台にしたEV技術窃取工作の一大ネットワークに通じているということである。その証拠に、公安関係者はこんなことも口にした。 「このネットワークの中心は関東だが、名古屋エリアには名古屋総領事館の指揮ものと、トヨタをターゲットとしたEV工作チームがある。複数の企業や関係者によって構成されているが、こちらの主要メンバーは在日韓国人らだ。最近、中国人自身が動くのを避けている証左のひとつであるが、この中に関東の(教育機関の看板を掲げつつ、実際は中国共産党のプロパガンダなど数々の情報工作を行っている)孔子学院に出入りしている者もいる。とすれば、目的が同じである以上、関東との連携は言わずもがなだ」 ネットワークは、米国を巻き込んだばかりか、さらに広がりつつあるようだ。 公安部の十八番は寸止めで、なかなか真剣勝負に出ないというものだが、この件に関しては、今後の捜査が進展することを大いに期待したい。 アサ芸プラス