政府が準備を進める日本最東端の南鳥島(東京都小笠原村)沖の海底で確認されているレアアース(希土類)の試掘開始時期を巡り、当初の計画から約1年遅れ、令和7年度以降となることが分かった。海底から泥を吸い上げるための「揚泥管」と呼ばれる機材の調達がずれ込み、計画全体に遅れが生じた。複数の政府関係者が30日、明らかにした。
ウクライナ戦争などの影響で、英国の製造企業が軍事部門に人手を注力した結果、揚泥管の製造に遅れが出ているという。揚泥管は遅くとも令和7年夏までに完成する見込みだ。
南鳥島沖では、水深約6千メートルの海底でレアアースを含む泥が大量に確認されている。東大などの調査では、世界需要の数百年分相当の埋蔵量があるとみられる。
政府は当初、7年1~3月に試掘を始める方針で、5年度補正予算に海底で作業するための水中ドローン(ROV)の製作費用を計上するなど準備を進めていた。
政府の試掘計画は、地球深部探査船「ちきゅう」から水深約6千メートルの海底まで揚泥管を伸ばし、1日当たり約70トンの泥を吸い上げる―というもの。揚泥管は英国から輸入する計画で、すでに3千メートル分は完成しているが、残りの3千メートル分を来年調達する予定だった。
日本国内で利用するレアアースは、中国からの輸入が約6割に上る。中国は近年、対立する国への経済的威圧を展開しており、平成22年にも尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を機に、レアアースの対日輸出を規制した。政府は南鳥島沖でのレアアース調達を通じて、中国依存からの脱却を目指している。
産経新聞