転職者による企業の社内情報の持ち出しがまたしても刑事事件に発展した。5日に警視庁公安部に逮捕された電子部品大手「アルプスアルパイン」(東京)の元社員は、自動車大手「ホンダ」に転職する直前に、営業秘密にあたる設計データを持ち出した疑いがある。 「大きな資産である技術情報の持ち出しは大変遺憾だ。対策は打ってきたつもりだったが……」。アルプスアルパインの担当者は5日の取材に、情報管理の難しさを打ち明けた。 不正競争防止法違反容疑で逮捕されたのは、中国籍で同社元社員の男(32)。2017年4月に入社し、自動車関連部門に勤務していたが、21年11月9~11日、同社の営業秘密として管理されていた車載機器の設計データを私有ハードディスクに複製して持ち出したとされる。 アルプスアルパインでは、秘密情報へのアクセス権限を特定の社員に絞り、私物のハードディスクなどを社有パソコンに接続することも禁止していた。社員が退職する際には業務上知り得た情報を流出させないことを約束する「秘密保持契約」も結んでいたという。 だが、男は秘密情報へのアクセス権限を付与されており、同社がデータ持ち出しに気づいて警視庁に相談したのは退職から約4か月後だった。
読売新聞