2023年10月に発生した、イスラエルとパレスチナの武装組織「ハマス」との大規模な衝突。これをきっかけに、地中海とインド洋とを結ぶ重要な航路である紅海で、民間船舶が次々とミサイル攻撃の被害を受けるという事件が発生しています。事件の首謀者は、アラビア半島の南端に位置するイエメンの反政府勢力「フーシ派」で、イスラエルに関係する船舶を無差別に攻撃しています。
この状況に対して、アメリカは当初から軍艦を紅海へ派遣して、ミサイルを撃墜するなど必要な措置をとってきました。そして、今後はこれを国際的な取り組みに移行するべく、実施が発表されたのが「オペレーション・プロスペリティ・ガーディアン(Operation Prosperity Guardian)」です。
日本語に訳すと「繁栄の守護者作戦」となる本作戦は、2022年に編成されたアメリカ海軍の任務部隊(タスクフォース)である「タスクフォース153(CTF 153)」による統制のもとに、参加国の艦艇や航空機、人員が紅海を航行中の民間船舶を護衛するというもの。
現在のところ、この作戦にはアメリカおよびイギリスが軍艦を派遣しており、ほかにもカナダやデンマーク、オランダ、オーストラリアなどが活動に関する幕僚スタッフの派遣を表明しています。
紅海は、地中海とインド洋を結ぶスエズ運河の東側の入り口にあたる海域で、物流上の重要拠点であることから、日本にとっても他人事ではありません。では、日本政府はどのようなスタンスなのか、もっというと自衛隊はこうした国際的な取り組みに参加できるのでしょうか。
日本ならびに自衛隊が「タスクフォース153」に参加することは可能なのか。これについて結論から言うと「極めて困難」これに尽きます。まず、自衛隊の能力面の問題があります。
現在、海上自衛隊では、アフリカのソマリア沖海賊対処、および中東における船舶航行に関する情報収集のため、護衛艦1隻と対潜哨戒機1機をそれぞれアフリカのジブチに派遣しています。
しかし、これらはいずれも商船に対する直接的な乗り込みによる襲撃などを想定して派遣されているもので、ミサイル攻撃から商船を護衛することは活動範囲に入っていません。
加えて、こうした攻撃への対応は、現在派遣されている、むらさめ型護衛艦「あけぼの」よりも高度な防空能力を有するあきづき型護衛艦や、高度な防空能力を有する「イージス艦(イージスシステム搭載護衛艦)」のこんごう型、あたご型、まや型でないと難しく、DD(汎用護衛艦)であるむらさめ型やたかなみ型では、ほぼ無理な領域だと言えるでしょう。
とはいえ、イージス艦は現在、北朝鮮による突発的な弾道ミサイルの発射に対応しなければならないため、日本近海から離れられない状況が続いています。また、それ以外の護衛艦も、活発に活動を続ける中国海軍へ対応するためなどで多忙を極めています。そのため、現状ではこれ以上の護衛艦派遣が困難なのです。
さらに、派遣に関する法的な課題も横たわっています。たとえば、民間船舶にフーシ派が直接乗り込んでくるとなれば、これを海賊行為とみなして、海賊対処行動ないし海上警備行動という、警察活動の一環としての対処が可能となります。
ところが、ミサイルによる攻撃となると話は別になってしまうのです。
前述の海賊行為の場合には、海上の秩序維持という観点から、海賊行為を行っている船舶、およびその被害にあっている船舶の船籍(船が掲げている旗の国)に関係なく、一定の措置をとることが国際法上許されています。
しかし、ミサイル攻撃となると、日本の現在の国内法では、日本に関係する船舶のうち、日本船籍の船舶のみ実力をもって防護することができる、そのような限られた状況となっています。
つまり、他国の船籍を持つ船舶を防護するとなると、一般的には集団的自衛権の行使と判断される可能性が出てくる恐れがあるのです。その場合、外国籍の船舶に対する攻撃により、「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」が生じる事態、いわゆる「存立危機事態」となる必要がありますが、これは容易には認定されないでしょう。
なお、集団的自衛権以外の根拠を国際法に求める場合、たとえば緊急避難や海上警察活動の一環としての実力行使なども考えられます。しかし、これらを根拠にする場合は、日本政府がそれに関して見解を整理する必要があります
しかし、現状では実行する際に必要となる国内法上の根拠が存在しないため、自衛隊による具体的な行動は不可能と言わざるを得ません。
このように、能力的および法的な問題や課題が山積している以上、日本が即座に「繁栄の守護者作戦」に参加することは難しいでしょう。
これまで長らく日本は、この地域を通航する民間船舶を介した海上交易により、経済的な繁栄を享受してきました。海洋国家たる日本が、この事態に手をこまねいているのを世界がどのように見るか、今一度、国家としての覚悟が問われそうです。
稲葉義泰(軍事ライター) の意見
中国の医薬品規制当局がヘアカラーを手がける化粧品大手「ホーユー」(名古屋市)の愛知県の工場をオンラインで調査し、生産工程の問題点を指摘した上で商品の輸入を停止したことが28日分かった。オンラインとはいえ国境を越えて日本の工場を中国当局が直接調査するのは異例。外資への監視強化の一環とみられる。中国への情報流出の懸念もあるとして日系企業の間で警戒感が強まっている。 日本政府関係者は、監視が強くなればなるほど外資の対中輸出が抑制的になり、中国の国産品に有利になると指摘。習近平指導部があらゆる産業分野で国産化を進めていることが背景にあるとの見方を示した。 産経新聞
28日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比42銭円高ドル安の1ドル=141円35~45銭を付けた。ユーロは1ユーロ=1・1056~66ドル、156円40~50銭。 米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に利下げを開始するとの観測を背景に、日米の金利差縮小を見越したドル売り円買いが優勢となった。
産経新聞