能登半島で1日に発生した地震で、石川県志賀町では最大震度7を観測した。正月の穏やかな午後を自宅で過ごしていた吉井哲浩さん(62)は「これまでの地震とは全く別物だった」と声を震わせた。
震度7の地震が起こった1日午後4時10分ごろ、吉井さんは90代の両親とともに自宅でテレビを見ていたという。能登半島では近年、何度か大きな地震があったために自宅は耐震補強していたが、襲ってきた揺れはあまりにも大きく、家全体が傾き、床には剝がれた壁土や倒れた家具が散乱した。
「これまでの地震とは別物。今回の地震には、耐震補強は意味がなかった」と肩を落とした。
両親を車に乗せて高台のガソリンスタンドまで避難しようとしたが、車庫のシャッターがゆがんで車を出すことができない。両親は足腰が弱く、歩いて高台まで連れていくことは不可能。「津波が来たらあきらめて死ぬしかないと思った」
幸い津波は到達せず、車庫の中で一夜を過ごした。両親は軽トラックの荷台で横になり、吉井さんは椅子に腰掛けて目を閉じたが、たびたび余震があり、恐怖のあまり眠ることはできなかった。
自宅の中は、棚が倒れて落ちた食器の破片が飛び散ったまま。余震が続くために当分は車庫で過ごし、食料は近くに住む姉に持ってきてもらうことになっている。「これからどうすればいいのか、不安な気持ちしかない」と訴えた。(鈴木文也) 産経新聞