【カイロ=佐藤貴生】イランが周辺国を相次ぎ攻撃して緊張が高まっている。イラクとシリアへの攻撃に続き、16日にはパキスタン南西部バルチスタン州をミサイルと無人機で攻撃したと発表した。パキスタン外務省は17日、5人が死傷したとして「強く非難する」との声明を出した。
イランはイスラム原理主義組織ハマスへの攻撃を続けるイスラエルや後ろ盾の米国と対立し、中東の親イラン民兵組織は紅海などで攻撃を強化している。イラン自らも行動をとることで地域の不安定化に拍車がかかっている。
国営イラン通信などによると、イランはバルチスタン州にあるスンニ派民兵組織の基地2カ所を攻撃した。この組織はシーア派大国イランでも反体制活動を行っており、昨年12月にはイラン南東部で警察署を襲撃、18人が死傷した。イラン政府は「国内外を問わず、犯罪者は処罰する」との立場を強調した。
最高指導者に近いイランの革命防衛隊は15日、イラク北部のクルド人自治区アルビルに弾道ミサイルを発射した。イスラエルの特務機関モサドの「スパイの拠点」が標的だったとしている。昨年12月にはイスラエルによるとみられるシリアへの攻撃で革命防衛隊の幹部が死亡し、イランのライシ大統領は「代償を支払うことになる」と述べ、報復を誓っていた。
この攻撃でイスラエルとの貿易を手掛ける富豪ら少なくとも4人が死亡した。イラク政府は駐イラン大使を呼び戻して抗議の意を示し、米仏もイラクの主権を侵害する「無謀」な攻撃だとイランを非難した。
現場は米国の領事館の近くだが、施設や職員は無事だった。イスラエルへの報復であり、米国との対立を煽(あお)るつもりはないという意思表示とも受け取れる。
革命防衛隊は15日、シリア北西部イドリブにも弾道ミサイルを発射した。標的はスンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の拠点で、ISは3日、イラン南東部ケルマンで90人近くが死亡した爆発事件で犯行声明を出していた。
イラン外務省報道官は16日、イラクとシリアへの攻撃は主権と治安を守るのが目的だとし、「報復する権利はためらわずに行使する」と述べて警告した。イランは連携する中東各地の民兵組織に兵器や資金を支援しているとみられるが、国民や要人が攻撃を受けない限り戦闘には深入りを避ける姿勢もうかがえる。
産経新聞
能登半島地震の被災地支援として、在日米軍は17日、航空自衛隊小松基地(石川県小松市)から能登空港(同県輪島市)にヘリコプターで支援物資を輸送した。同日、能登空港を視察した木原稔防衛相は「まさにトモダチ作戦の再現と感じている」と語った。
自衛隊は今回、固定翼機を被災者の2次避難に充てているため、防衛省が在日米軍に航空機による物資輸送の支援を要請していた。
この日、在日米軍のUH60ヘリコプター1機が、小松基地と能登空港の間を2往復。食料品や紙おむつ、生理用品などを運んだ。小松基地から能登空港までは50分以内で移動できるという。18日も実施する予定。
輸送された物資は、孤立地域に物資を運ぶ陸上自衛隊の統合任務部隊(JTF)の遊撃隊と、空自の空港業務支援隊に渡された。今後、被災地などに配られる。
在日米軍は平成23年の東日本大震災で、最大約2万4500人を投入した支援活動「トモダチ作戦」を展開。28年の熊本地震では、輸送機MV22オスプレイによる被災地への物資輸送を担った。
木原氏は能登空港で、在日米軍航空大隊の大隊長、ニクラス・C・フランク中佐と握手を交わし「困ったときに助けてくれるのが真の友。まさにトモダチ作戦の再現だ」と述べた。
産経新聞