元日夕の能登半島地震で大規模火災が発生した石川県輪島市の「輪島朝市通り」周辺地域では、多くの犠牲者が確認され、いまも安否が分からない住民が複数いる。
火災と被害の全容はまだ把握されていないが、朝市周辺のような木造住宅密集地域は全国各地に点在する。地震など災害時の防火対策を検証し、強化を急がなければならない。
国土交通省の研究所が行った現地調査によると、朝市周辺の焼失面積は約5万800平方メートルに及び、住宅など約300棟が焼損したとみられる。延焼速度は時速20~40メートルと推定され、阪神大震災で起きた市街地火災と同程度だった。
延焼を防げなかった原因は複数ある。道路の寸断で消防の到着が遅れ、断水で消火栓も使えなかった。大津波警報が発令されたので海からの取水もできず、住民は初期消火よりも避難を優先するしかなかった。プロパンガスの爆発も起きたとみられ、火災現場は消火活動よりも安全確保を優先すべき状況になったと考えられる。
災害時には、いくつもの要因が重なって消火活動が困難になる場合があり得る。火災時に延焼リスクが大きい木造住宅密集地に限らず、複数の消防水利を確保する必要がある。
政府は、大規模火災の恐れがあり、住民避難が困難だと予想される地区を「地震時等に著しく危険な密集市街地」と位置づけ、自治体と連携して建て替え促進や消防・防災機能の強化を急いでいる。
対象地区は昨年3月時点で東京、大阪など12都府県の計91地区だが、輪島市の朝市周辺は含まれていなかった。
延焼リスクが大きい密集地は他にも多くあるだろう。政府は令和12年度までに対象地区を解消する方針だが、地震はいつ、どこで起きてもおかしくない。政府と自治体は方針を前倒しし、対象外の地区にも拡大して、火災対策の検証と強化に早急に取り組んでもらいたい。
産経新聞
あらゆる事態に対応できるように備えるのは極めて困難ではあるが、地震、津波、道路の寸断や断水など一つ一つの要因は想定できる。たとえば、地震後の通電火災を防ぐ感震ブレーカーの設置などは今すぐにも実行すれば、複合リスクの軽減につながるはずだ。