世界遺産の島・宮島に「黒いギャング」景観破壊「このままでは厳島神社も」カワウ脅威【羽鳥慎一モーニングショー】(2024年3月6日) (youtube.com)
世界遺産・厳島神社がある宮島にカワウが大量発生しています。カワウのフンによって宮島の原生林が枯れて土壌が崩れ落ちるなど様々な被害が出ています。 ■厳島神社の宮島 原生林が枯死 カワウの脅威 広島県廿日市市にある宮島は日本三景の一つで、去年は460万人を超える観光客が訪れました。 朱色の大鳥居が映える世界遺産・厳島神社は、毎年多くの参拝客でにぎわっています。 そんな宮島に今、大量に居座っているのが…。 空には無数の黒い鳥。空全体を覆って一斉に島から飛び立っていきます。 黒い鳥の正体はカワウ。警戒心が強く、船が近付くだけで一斉に飛び立ちます。 地元の人によると、宮島では10年ほど前から秋から春にかけて大量のカワウが居座り始めたといいます。その数およそ3000羽。 「黒いギャング」とも呼ばれるカワウの襲来は、宮島に深刻な危機をもたらしています。 貴重な原生林が白く変色。ドローンで上空から見てみると、一部だけでなく、広範囲が白く染まっているのがよく分かります。 この白い部分はすべてカワウのフン。その被害は色の変化だけにとどまりません。こちらの一角は草木が枯れ果て、表面の土が崩れ、地肌がむき出しになっています。 上の方を見てみると、かなり奥の方まで茶色く変色してしまっています。岩肌があらわになってしまっています。 広範囲に渡って荒れ果て、ここから草木を再生させるのは難しいことが分かります。 なぜ、カワウのフンで草木が枯れてしまうのでしょうか。 実はカワウのフンはリンを含んだ酸性で、そのため草木に付着すると枯れてしまうのです。 さらに今後、被害が広がる恐れもあります。 水産技術研究所 坪井潤一主任研究員 「もっと観光地に近い側に移動する可能性も、無きにしもあらずで。今たまたま反対側にカワウがいますけども…」 カワウの寝床となっている原生林が枯れたエリアから、厳島神社までは約1.5キロ。 このままカワウが移動を続けると、厳島神社周辺も寝床となる可能性があります。 このままでは世界遺産・厳島神社の景観が、カワウによって破壊されてしまう可能性もあります。 鹿児島からの観光客 「確かに鳥の命も大事だけれども、この世界遺産のこの景観は、本当にずっと引き継いで行ってもらいたい」 ■稚魚食いつくすカワウ 対策できず漁師悲鳴 なぜカワウは宮島にやってくるのでしょうか。カワウは日本全国に広く分布する鳥で、集団で行動し、越冬・繁殖のために寝床やコロニーを移動します。 宮島には餌(えさ)となるアナゴやカレイなどの稚魚が多く山や岩場が風を遮る場所となるため、カワウにとって越冬しやすい寝床となっていて、10月ごろに県内外から大量のカワウが宮島に飛来してくるのです。 カワウの生態で一番厄介なのが、その食生活。「一日で約500グラムもの魚を食べる」と言われていて、宮島にいるおよそ3000羽のカワウが一日に食べるエサの量は単純計算で約1.5トンにもなります。 また、大きな魚を丸のみにしてしまう様子も…。カワウの半分ほどの大きさのナマズを尾ひれまでしっかりと丸のみにしてしまいます。 宮島の漁師からは悲鳴も。 宮島漁協 丸本孝雄組合長 「私らが、筒漁で以前のようなアナゴが取れなくなったのは、もうカワウが多いというところもあるんですけど」 宮島の名産品であるアナゴは、10年ほど前は一晩で200匹ほど取れました。 しかし、カワウによって稚魚が食い荒らされ、今は取れても以前の2割ほどだと言います。 アナゴを食べに来たという観光客は次のように話します。 アナゴを食べに来た観光客 「残念ですね、それが食べられてしまうと」 「これ以上アナゴ取れなくなったらもっと高くなるよ」 地元の漁業に深刻な被害をもたらすカワウですが、宮島は島全体が特別史跡と特別名勝に指定されていることなどから、個人で対策を取ることはできません。 そのため、丸本さんら漁師は漁場を荒らすカワウを黙って見ていることしかできないといいます。 丸本組合長 「カレイの稚魚とかメバルの稚魚、いろんな魚をカワウは捕食するので。漁師さんも皆ね、もうため息をつくしかない」 ■対抗策 カワウ大群VSドローン&白テープ 個人での対策が困難ななか、広島県と廿日市市は対策に乗り出しました。使用するのは白いテープ。 廿日市市 産業部農林水産課 鹿野陽介主任 「テープ張りをして追い払いをかける対策」 カワウの寝床となってしまったエリアに、ドローンでテープを張り巡らせていきます。人が入れない山奥にも。このテープ、どのような意味があるのでしょうか。 風が吹くことで生じる音をカワウは嫌がるため、追い払いの効果があるということです。テープ自体も自然に分解されるプラスチックでできています。 この日は、あわせて長さ8キロメートルほどのテープを張り巡らせました。 鹿野主任 「まずは宮島から(カワウに)出て行ってもらう。警戒してもらうのが、最初の取り組みかなと」 県と市によって対策が施された宮島。5日、再び訪れてみると、テープを張った場所から少し離れた場所にカワウの姿がありました。船が近付くと、一斉に飛び立ち空を覆いつくす大量の黒い影。 対策前と変わらないカワウの姿が、そこにはありました。 丸本組合長 「(いなくなって)ちょっと安心しとったんじゃけど、やっぱしダメだったね。もうこればっかりは、打つ手がないんでね。本当、海の密猟者じゃわ。私ら本当に指くわえて見よるだけじゃもんね」