月刊パントマイムファン編集部電子支局

パントマイムのファンのためのメルマガ「月刊パントマイムファン」編集部の電子支局です。メルマガと連動した記事を掲載します。

アーティストリレー日記(139)前田秀さん

2023-01-22 15:30:35 | アーティストリレー日記

今回は、SOUKI出身でパントマイムの舞台だけでなく、映像でも幅広く活躍する若手パントマイミスト、前田秀さんの日記をお届けします。

初めましての方は初めまして、前田秀(マエダシュウ)と申します。
スーパーパントマイムシアターSOUKIにて10年研鑽を積ませて頂き、只今フリーで活動しているパントマイムアーティストです。
振り返ること昨年の、2022年12月に開催されました
⼀般社団法人日本パントマイム協会主催公演『JAPAN PANTOMIME NEXT 2022』の公演にて、自身も出演させて頂き、普段はお会いする機会のない多くの世代を越えたパントマイミストの方々と交流させていただくことが出来ました。
JPN公演HP:https://japanpantomime.com/jpn2022/
その節はお世話になりました皆様、ありがとうございます。
この業界は個人で動いている方の方が多いですから、こうした交流の機会というのはとても稀有で貴重な時間だったと実感しております。
本日は執筆の機会を頂きましたので“キッカケと環境”というテーマに関して少し語らせて頂きたいと思っております。

パントマイミストの皆様が“どのような経緯でパントマイムと出会ったのか”
自分はここに結構興味があります。
人は生きていると色々なものに触れて出会う機会があります。
その中には野球や体操や水泳もあるでしょうし、ダンスや演劇や楽器なんてものもあるでしょう。普通に生きていれば当たり前のように身近にあるそれらのジャンル。
興味を持つのはなんでも良いはずなのに、我々はどこかでパントマイムに魅せられてその道を歩み始めたわけですから。不思議なものだなと他人事のように感じますね。
自分ごとを簡単にお話させていただくと、2つのキッカケがありました。
21歳で東京へ上京して来た際に目指していた声優という道。しかしその道が違うんじゃないかと
感じ初めていた頃に、その養成所にいた平井さんという男の子が少し習っていたパントマイムを
披露してくれたこと。これが⼀つ。
そしてもう⼀つ、当時ハマっていた【ラーメンズ】というコントユニット。彼らの作品は、台詞はあるものの舞台上では小道具なども何も用いず、衣装も変わらず、真っ黒な背景の中で様々なキャラクターや世界を演じていてめちゃくちゃ面白いと感じていました。その面白さの根幹を考えた時にパントマイムなのではないかと気づいたこと。そして自身もやってみたいと思いました。
この2つのキッカケを経て自身は【SOUKI】の門を叩いてキャリアがスタートしたのですね。
出会いやキッカケは十人十色であると思います。
しかし、その出会いとキッカケがなければその先の人生が無かったわけですから、本当に縁するということは大きなターニングポイントだと思いますね。
そして、どのようにその縁を紡いでいくかというのも物凄く大切なことだと実感しております。
ちょっと例え話になりますが、こんな実体験の話を。
自分は高校生の頃に弓道をやっていたのですが、弓道というのは道具や道場も必要な競技である
ため気軽に出来るものではない。当然ながら卒業以来、⼀度も道場を訪れることも無かったので
すが、ふとしたキッカケで10年以上ぶりに的前に立つ機会がありました。
友人の娘さんが弓道をしており、道場で練習したいとのことで⼀緒に練習に赴くことになったの
ですね。 久々とはいえ基礎となる動きは忘れておらず、その日のうちに的前に立ち何本か射ることができました。思いの外楽しめたこともあり、大人の趣味として気が向いたときにこうして通えればいいなと思い、その日からちょこちょこと道場に通うことにしたのですが、それも長く続きませんでした。
理由は環境の閉塞感だったと思います。
道場はかなり年配の方しかおらず、その中でもやはり作法に厳しい方が多かったのですね。
気軽という言葉とは縁遠い空間、自分はその空気に辟易として結局通うのを辞めてしまいました。武道である以上きちんとした作法はあり、危険もあるので適当であることは許されませんが、それにしても取り組むことに対するハードルの高さを感じました。
これは弓道にしろ、パントマイムにしても、少し似ている部分があるのかなと思います。
要は“初めての方が取り組むことに対する入り口の狭さ”です。
業界として、気軽であり身近であることは重要だと思います。 誰でも《始めるチャンスがあり、場所があり、先生がおり、学べる土壌がある》こと。 難しさだけが先に立ち、最初から間国が狭く、高尚なものとして排他的である限りそのジャンルは衰退していってしまいます。
⼀子相伝のような専門分野であることも必要かもしれませんが、
例えば野球のような大きなジャンルに例えるならば、やっぱりリトルリーグがあって、部活動が
あって、甲子園、プロ野球、メジャーリーグのようにきちんと階層があって。世間からみてもそのレベルの差が理解出来るだけの認知を届け、その上で未熟であっても取り組むことはウェルカムであることが、ゆくゆくは業界の未来のためになるのではと思います。
最初から誰もがプロになれるわけがないのは当然として、それでも様々なプレイヤーがいるから
こそ、その中から未来を担う人材が現れることがある。ここ数年だと大谷翔平くんや藤井聡太さんのような。
話を戻すと、パントマイムに出会う場所、そしてそれを学ぶ環境があったこと、ここがとても重要であったと思うのです。
自身も業界の中では若手かもしれませんが、キャリアは15年を越えてアラフォーの世代です。
自身がこの業界を魅力的なものとして感じていただけるよう広い世界で活躍することと共に、これからの未来ある人材を育むような活動を両方努めてゆかねばと、この業界に育てて頂いたものとして⼀つの役割を感じております。
とは言え、たった⼀人で出来ることなどたかが知れておりますので
せっかくご縁させて頂いた、同じ業界で志高く活動している方々との力と共にですね。
パントマイムって面白いと、自分もやってみたいなと思った方へ、その先へ続く道を作る役割を担ってゆければと思っております。
いつまで経っても若輩者ですが、また本年も偉大な先輩方とそして未来を担うまだ見ぬ後輩たち と共に業界を盛り上げていけたらと切に願っております。

2023年1月 パントマイムアーティスト前田秀

追伸
今は休止中ですが、パントマイムに関する様々な側面をテーマごとに記す【パントマイムの教科
書】という活動をしておりました。⼀個人による分析と考察となりますが、もしご興味ありましたらご購読いただければと思います。
*パントマイムの教科書
https://note.com/smime/
*前田秀 公式HP
https://smaime.com/


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アーティストリレー日記(138... | トップ | アーティストリレー日記(140... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アーティストリレー日記」カテゴリの最新記事