気分はガルパン、、ゆるキャン△

「パンツァー・リート」の次は「SHINY DAYS」や「ふゆびより」を聴いて元気を貰います

搭乗車を換えた逸見エリカ

2021年08月16日 | ガールズ&パンツァー

 最終章第3話、無限軌道杯第2試合の対プラウダ高校戦にて、防御を固めて高地に陣取る相手の砲撃に、得意のパンツァーカイルで挑んだ黒森峰女学園。その指揮は西住まほに代わって新隊長となった逸見エリカが務めました。
 その戦法は定石通りの陣形で重装甲および火力で正面から押してゆく正攻法でしたが、その楔の要となるマウスがあっさりと撃破され、次いでエレファントも白旗を挙げ、作戦は一気に破綻に陥りました。

 

 この時の黒森峰女学園の陣容は、劇場視聴にて確かめた限りにおいては9輌、マウス、エレファント、ティーガーⅡ、ヤークトティーガー、ヤークトパンター、パンター3輌、Ⅲ号戦車J型、でした。試合後の中継画面での陣容表を見ると他にもう1輌のⅢ号戦車J型がいたようなので、試合規定数の10輌で参戦したわけです。

 この10輌のうち、マウス、エレファント、ティーガーⅡ、ヤークトティーガーの4輌の重戦車群がパンツァーカイルの前面で盾の働きをなすべきところを、たて続けにマウス、エレファントの2輌を失った形でした。チーム全体が混乱に陥り、進撃は緩み、逸見エリカ隊長に指示催促が矢のように寄せられました。
 隊長の指示が絶対、隊長の指示によって行動する、という黒森峰女学園の有り方がここでは一気にマイナスに転じてしまいました。それぞれの車輌が単独に判断して適切な行動をとるというパターンが、このチームでは有り得ないのでした。

 なので、高所の相手からの砲弾の雨にさらされて各車の被弾が増える状況に至っても、陣形は崩せないまま、皆が逸見エリカ隊長の次の声を必死に待つのみでした。西住まほならば、すぐに作戦を換えて迅速に指示を与えて態勢を立て直してゆくのでしょうが、逸見エリカには西住まほと同じ要領で進めることは殆ど不可能であったのでしょう。

 その事を最もよく分かっていたのが西住まほであったから、逸見エリカに対しては自分なりにやりたいようにやれ、とアドバイスしていたのでした。西住まほの戦術は西住まほにしか執れない、逸見エリカに同じことを強要はしない、それよりも逸見エリカには彼女なりの得意分野があり、それを彼女なりに追求すれば良い。それが西住まほが後輩に託した思いの全てであった筈です。
 同時に、西住まほは、黒森峰女学園の新たなる可能性は、きっとこのエリカが切り開いてくれる、と信じていたのでしょう。

 その思いが逸見エリカに確かに届いていました。彼女は窮地より一気に本来の得意分野、彼女なりに追求すべき可能性へ向けて動き出しました。確実なのは、今の正攻法の作戦は無理だという点であり、なおも高地に陣取る相手に対して効果的な攻撃を行うには、攻め位置を変えるしかない、こちらも高地に登って敵の虚を突くしかない、という作戦イメージがわきあがった筈です。
 そうなると、攻め位置を素早く変えなければなりません。かと言って残存全車をそれぞれ動かすのは至難の業です。攻め位置の変更はすぐに移動可能な足の速い車輌だけで行ない、あとはもとの陣形のままで牽制を続けて陽動に徹する、という作戦にまとまるわけです。

 この場合、足の速い車輌はパンター3輌とⅢ号戦車J型の4輌でした。これを抽出して攻撃部隊となし、一気に攻め位置を変え、相手の側面か後方に素早く回り込むことが目標となります。
 あとのティーガーⅡ、ヤークトティーガー、ヤークトパンター3輌には、撃破されたマウスやエレファントを盾にしての牽制射撃を行わせ、攻撃部隊から敵の注意をそらして時間を稼ぎます。

 この作戦を急遽採った逸見エリカは、したがって新たな作戦単位である攻撃部隊のほうに属して直接指揮をとるべきですが、彼女の搭乗車はティーガーⅡでした。それでは指揮が執れませんから、攻撃部隊のいずれかの車輌に搭乗車を変更しなければなりません。
 だから、すかさず彼女は西住みほ顔負けの跳躍ぶりを見せて入間アンナ車に入り、交替を依頼して入間アンナをティーガーⅡに行かせました。

 この交替の際、逸見エリカが「やっばりこっちの車輌が合ってるから」という意味の説明をしています。これからやろうとする攻撃作戦で指揮を執るならば、このⅢ号戦車J型が機動力に優れて攻守のバランスも良いから合っている、という意味に受け取れますが、機動力に優れて攻守のバランスも良い車輌ならば、パンターも同じです。
 むしろパンターの方が防御値および火力が強いので、そちらが頼りになると思うのですが、しかし逸見エリカは「やっばり」という言葉を加えています。つまりは、やっぱりⅢ号戦車J型が私には合ってるから、という意味でしょう。

 でも、この解釈はもう少し掘り下げる必要があるでしょう。なぜⅢ号戦車J型が合ってるのか、という理由が示されておらず、むしろ逸見エリカとしてはⅢ号戦車J型しか選択肢が残っていなかった、というようなニュアンスが感じられるからです。

 アニメ本編では描かれていませんが、公式監修のコミック版「フェイズエリカ」等では逸見エリカの搭乗車として38(t)戦車、35(t)戦車が描かれます。チームの練習風景においてはⅢ号戦車J型も登場していますが、逸見エリカがそれに乗る姿は描かれていません。
 ですが、コミック版の描写をアニメ本編への前章と位置付けた場合、ティーガーⅡに乗る以前の逸見エリカの経歴としては、38(t)戦車や35(t)戦車等の軽戦車クラスが主であったことになります。それで色々活躍してきたわけですから、本質的に重戦車のティーガーⅡよりも、機動力に長じた軽快な車輌のほうが合っているのかもしれません。

 そして、逸見エリカがプラウダ高校相手に試みようとしている新たな攻撃作戦は、コミック版にて何度も描かれた、38(t)戦車や35(t)戦車等に拠っての高機動作戦と大して変わらない内容でした。
 それならば38(t)戦車か35(t)戦車へ乗り換えたくなるのでしょうが、しかしアニメ本編での陣容にはいずれの車輌も存在しません。それに最も近い軽快な中戦車としてⅢ号戦車J型のみがチームに居たから、それを逸見エリカは当座の作戦指揮位置に定めた、ということに過ぎないのかもしれません。

 そして逸見エリカは、おそらく本来の得意分野であっただろう、機動力を生かしての素早い回り込み攻撃で相手の陣形の一角のフラッグ車のみを狙い、パンター3輌の火力と防御力を全て盾とみなしてカチューシャらのT-34の迎撃を跳ね除け、唯一残ったⅢ号戦車J型で相手の砲火を潜り抜けて跳躍、会心の一撃でクラーラのフラッグ車を倒しました。

 Ⅲ号戦車J型の火力は試合での参加車輌のなかで一番弱いのですが、高位置からの至近距離で撃てば十分に有効打となります。逸見エリカはそのことをよく分かっていたのでしょうし、パンター3輌を連れて行ったのも、敵中突破用のコマと見なしていたからでしょう。
 またパンターはスペックが高いので相手からも目標にされやすく、どうしても格闘戦になれば狙われて損耗が発生します。そのリスクを避けるための、一番見逃されやすいⅢ号戦車J型への乗り換えであったのかもしれません。

 いずれにせよ、西住まほが信じた黒森峰女学園の新たなる可能性は、逸見エリカが鮮やかに切り開いてゆきました。観戦していた西住みほが、黒森峰女学園の出身でありながら驚愕していたのは、その試合ぶりが従来までの黒森峰女学園では考えられない性質のものであったからでしょう。

 こうなると、逸見エリカ率いる黒森峰女学園の次の試合、対聖グロリアーナ女学院戦も観てみたい気持ちが強くわきあがってまいります。第4話で、しっかりと観られるでしょうか。

 

コメント (2)
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