最終章第3話のラストにて、フラッグ車を護るあんこうチームのⅣ号戦車は相手チームの遠距離からの狙撃を受けて白旗を挙げ、西住みほ以下の主力メンバーが戦列より脱落するという衝撃的な事態となりました。
その直後にフラッグ車の車長猫田舞が砲塔ハッチを開けて外を見、西住車の撃破を確認し愕然とする場面があり、第3話はそこで終わっています。
とりあえず、現時点で想定できる流れをまとめますと、猫田舞としてはまずⅣ号戦車の撃破脱落および、フラッグ車の孤立化を僚車に報告する筈です。特に隊長の河嶋桃への連絡は必須ですが、河嶋桃のほうはそれまでずっと作戦指揮面では西住みほに頼り切っていただけに、パニック状態に陥るのは一時的にせよ避けられないでしょう。
仮にそうならなかったとしても、迅速に態勢を立て直して孤立したフラッグ車を護りにゆく作戦の指揮がとれるのかどうかは疑問符がつきます。なにしろ河嶋桃は、無限軌道杯の第1試合からずっと、作戦を立案し的確に指示を下して実際に戦果を挙げるという、隊長らしいシーンが全く描写されていないからです。第2試合でも、依然として角谷杏が車内での主導権を持ったままであるような状況が感じられたほどです。
そのような状況下において、相手の奇襲により集落の内外に四散してしまっている形の大洗女子学園チームの各車が、まずとるべき行動は、孤立したフラッグ車の護衛につくこと、次の狙撃の機会を狙っている筈のヨウコ車を捕捉してこれを無力化すること、の二つに絞られる筈です。それらの対応行動へどのチームが一番に移れるかが、今後の流れを決定づける筈です。
これに関して、個人的にはウサギさんチームの車長澤梓に期待するところが大です。それで劇場視聴時、継続高校との試合開始後からのM3中戦車リーの動きに注目していました。数度観て確認しましたが、M3中戦車リーは、例の集落内への移動や雪だるまからの奇襲への対応において、常に河嶋隊長のヘッツアーの近くにて随伴行動をとっています。これは今まであまり指摘されていませんが、重要なポイントではないかと思っています。
なぜならば、澤梓が河嶋隊長の傍に従って動いているのは、それまで西住みほ副隊長がとっていた基本行動を、西住車がフラッグ車の護衛についたまま分離した後で、西住車に替わる形で引き継いでいるから、と考えるからです。つまり、河嶋隊長と常に連携して作戦立案の補佐も可能なような位置につく、という西住みほ副隊長の基本スタンスを引き継いでいるのだ、と考えます。
それはたぶん試合前からの打ち合わせによってそのように動いているのでしょうが、しかし継続高校側の雪だるま奇襲攻撃はあまりにも突然のことで、大洗女子学園側は虚を突かれた感が否めません。そんななかで、澤梓が咄嗟の判断で隊長車をエスコートする位置を維持していたのであれば、それ自体が見事です。希望が見えてくるようではありませんか。
いずれにしても、あっという間にバラバラになってしまいましたが、その直前まで河嶋隊長車にずっと随伴していたのが澤梓のM3中戦車リーであったため、四散後も澤梓はおそらく河嶋隊長車と同じ行動をとっていると考えるのが自然でしょう。
個人的には、継続高校側の奇襲によって四散した後は、ヘッツアーとM3中戦車リーの2輌で組んだ状態であって、その態勢で僚車との合流へ向かっている際に、フラッグ車猫田舞からの報告を受け取っただろう、と想像します。つまりは西住車の撃破脱落を知るわけですが、そうなると、澤梓は次にどのような動きに移るでしょうか。
まず想定されるのは、この時点でとるべき行動二つ、孤立したフラッグ車の護衛につくこと、次の狙撃の機会を狙っている筈のヨウコ車を捕捉してこれを無力化すること、を河嶋隊長に真っ先に相談し許可を得る、でしょうか。河嶋桃も、もともと単独で作戦立案して指揮をとれる器ではありませんから、側に西住みほでなくても誰か相談役が要るならば、それが澤梓であっても、必ず話を聞き、相談したうえで次の判断に移る筈です。
なので、澤梓から作戦案の提案を受けた場合、それを河嶋桃が無下に却下することは有り得ません。河嶋自身が考えても、孤立したフラッグ車の護衛につくこと、次の狙撃の機会を狙っている筈のヨウコ車を捕捉してこれを無力化すること、の二件が最重要課題であるとの結論に自然に達するだろう、と想像されるからです。
したがって、河嶋桃は澤梓から作戦案の提案を受けた場合、それを承認することになるものと想定されます。
思えば、澤梓は重要な局面で度々独自の作戦行動を行なっていますが、決して無茶苦茶な行動はやっていません。もともと無茶な動きを独断でとれる性格ではないのです。対黒森峰女学園戦での重戦車群への単独対応など、西住隊長との連絡が普通に取れる状況下においては必ず作戦案を進言し許可を求めていました。その線で考えると、河嶋隊長と同行動をとっている場合は、間違いなく同じことをするだろう、という想定に至ります。
そして、河嶋桃も、澤梓からの作戦案に乗る形で許可を与え、そのうえで澤梓の高い作戦能力にも期待してある程度の権限移譲、つまりある程度の指揮を委ねるのではないでしょうか。
その場合、忘れてならないのが、ピンチの場面における澤梓の判断適応能力の高さです。対黒森峰女学園戦での重戦車群への単独対応は別にしても、対大学選抜チーム戦時の「ミフネ作戦」実施、対知波単学園戦時のワニに偽装したカミの動きを一番に察知しての応戦、などは見事でした。いざという時に最も重要な動きを見せてチーム全体の窮地を救っています。それらを、河嶋桃もよく知っている筈です。
そして第3話では、大洗女子学園側が最も手こずった相手であろう特二式内火艇カミを2輌とも相手に引き付けて刺し違えています。ここぞという時に相手チームの動きを大幅に封じるという行動において長けています。これが澤梓の隠れた実力の最たるものであろう、と私は感じております。
なので、第4話からの対継続高校戦の実質的な指揮は、おそらく澤梓が河嶋隊長に進言して許可を得たうえで、西住みほの立ち位置を継承する形で執るだろう、と想像しています。とるべき行動二つ、孤立したフラッグ車の護衛につくこと、次の狙撃の機会を狙っている筈のヨウコ車を捕捉してこれを無力化すること、は勿論ですが、さらに相手フラッグ車の撃破という最終目標も、澤梓ならば失念することなく常に意識し続ける筈です。日頃の面倒見の良さが、形を換えて発揮されるものと思われます。
そして、隠れた実力の最たるものであろう、相手チームの動きを大幅に封じるという行動を実施するでしょう。孤立したフラッグ車の護衛につく、次の狙撃の機会を狙っている筈のヨウコ車を捕捉してこれを無力化する、の二つの対応を僚車との合流および連携によって何らかの形で実行するでしょう。
ここで忘れてならないのが、澤梓たちウサギさんチームの重要な作戦行動が常に、試合前に参考に観た戦争映画の内容にヒントを得て実施されている点です。周知のように、対継続高校戦の前に澤梓たちは「大脱走」とおぼしき映画を観ていて、スチィーブ・マックイーンのバイクでの脱走ジャンプ場面がアニメに出ています。
このスチィーブ・マックイーンの脱走の試みは、実際には鉄条網に阻まれて失敗していますが、アニメではそこまで描かれず、有名なバイクでの大ジャンプのシーンのみがクローズアップされている感があります。
そのバイクでの大ジャンプのシーンを、対継続高校戦前という状況で考えると、個人的にはどうしても、劇場版での対カール小隊戦におけるミカ達BT-42の大ジャンプのシーンを連想してしまいます。
なので、このBT-42の大ジャンプを、何らかの形で阻止してその動きを封じる、という作戦を澤梓たちなりに映画からヒントを得て実施し、成功するのではないかと予想出来ます。この場合、BT-42はフラッグ車ですから、その動きを封じるというのは撃破を意味します。つまり、M3中戦車リーの放った砲弾が勝利をもぎ取るわけです。
仮にそれを実現し得たならば、澤梓が間違いなく第3試合、準決勝戦におけるMVPになるのは間違いありません。何よりもメンバーたちの「成長」や「覚醒」に重きを置いたストーリー作りがなされている最終章シリーズなので、澤梓の「成長」も必ずどこかで鮮やかに描かれる筈です。その最適絶好のタイミングが、第3試合の対継続高校戦なのかもしれない、と思うのです。
なので、仮にそうなったら、澤梓は名実ともに大洗女子学園チームの次期隊長としての位置を確立します。西住みほ以後の指揮官は誰になるのか、というテレビシリーズ以来の重要なポイントのひとつが、最終章シリーズにおいて見逃されるというのは有り得ないので、前々から何かと噂されている澤梓の立ち位置も、いずれは必ず定まるであろう、と今回の妄想をもって大いに期待している次第です。