ゆるキャン群馬キャンプ編の安中市エリア聖地巡礼、「アプトの道」の続きです。「峠の湯」の横の地下通路をくぐってから10分余り歩いたところで、上図のように前方にレンガ造りの建物の一部が見えてきました。
レンガ造りの建物は「アプトの道」の左側に、そして右側にはトロッコラインの「まるやま駅」のホームがありました。この「まるやま駅」はかつての信越線の丸山信号所の施設を再利用しているそうです。
改めて左側のレンガ造り建物を見ました。このアングルで作中に登場しています。
原作コミック第16巻95ページ1コマ目です。作中の説明どおりの旧丸山変電所跡です。明治四十五年(1912)の信越線の電化工事に伴って設けられた二ヶ所の変電所のうちの一ヶ所です。
「アプトの道」沿いに建てられた案内説明板の位置からみた、建物の正面観です。作中では広域レンズでの画になっていて建物のほぼ全部が描かれています。
このシーンですね。原作コミック第16巻95ページ2コマ目です。瑞浪絵真が案内説明板を読んでいます。各務原なでしこは建物の窓に近寄って中をのぞきこんでいます。
瑞浪絵真が読んでいた案内説明板を読みました。
補足すると、明治期の横川~軽井沢間の電化工事に際して設けられた施設は、横川火力発電所、丸山変電所、矢ヶ崎変電所の三ヶ所がありました。本来ならば変電所は、横川~軽井沢の中間に設置するのが理想的ですが、地形的に建設が困難であったため、急勾配区間の両端にそれぞれ変電所を設置することになり、横川側にこの丸山変電所、軽井沢側に矢ヶ崎変電所が設けられました。
この二ヶ所の変電所に、横川火力発電所から地下のケーブル送電線によって電気が供給され、変電所から架線に送電されて急勾配区間のアプト式電気機関車が運行されていたわけです。
窓のひとつに近寄りました。一ヶ所だけ、窓の下にベンチ状の足場が置いてありました。その窓が、各務原なでしこが中をのぞきこんだ窓です。
右のシーンですね。原作コミック第16巻95ページ3コマ目です。作中では中に何があるかは言及されていませんが、実際に見たところでは、変電施設の機械などを据え付けたコンクリート製の台座や、何らかの廃材などが置いてありました。
ですが、各務原なでしこにはそれらが何か分からなかったようで、左のシーンで謎のリアクションをとっています。
横川火力発電所、丸山変電所、矢ヶ崎変電所の三ヶ所のうち、この丸山変電所以外は廃止解体されて現存していません。したがって、この丸山変電所の建物が明治期の電化関連施設の唯一の現存遺構であります。
建物は平成六年(1994)に「旧碓氷峠鉄道施設」の構成物件として国の重要文化財に指定されています。それにともなう修復工事が平成十二年(2000)から平成十四年(2002)に行われ、陥没していた屋根やボロボロのレンガ壁なども元通りになりました。建物周囲の草藪も取り除かれ、御覧のような綺麗な芝生となって整備されています。線路跡の架線などはそのまま保存されています。
トロッコラインの「まるやま駅」のホームと駅名標です。駅名標は碓氷峠鉄道文化むらのトロッコライン設置に伴ってリニューアルされていますが、ホームはかつての丸山信号所跡のそれを再利用しているといい、壁面がレンガ積みのまま保たれています。
丸山変電所跡の建物は、熊ノ平駅跡から歩いていくとまず1棟が見えますが、その隣にもう1棟、同じような外観の上図の建物があります。
「アプトの道」を進んで変電所跡の反対側へ進んでみました。御覧のように2棟が並んでいます。西側、上図の向こう側つまり軽井沢側の建物が機械室にあたり、手前の、東側の横川側の建物が蓄電池室であったそうです。
これらの建物は、昭和三十八年(1963)のアプト式運行の廃止後は、放棄され荒廃していましたが、修復工事によってほぼ建築当初の外見に戻されています。 (続く)