2019/03/13、・一か国受注依存率20%上限リスク、=さかいもとみ、在英ジャーナリスト=、
(1)経緯、3月10日にエチオピア航空302便が墜落し、乗客・乗員が全員死亡するという痛ましい事故が起きて以降、多くの国や航空会社が、アメリカの航空大手ボーイングの最新鋭機「737MAX8」の一時運航停止を決める異例の事態となっている。同型機は昨年10月29日にもインドネシアで墜落しており、わずか5カ月で2度も離陸してから数分後に墜落という共通性がありながら、いずれも原因が特定されていないことが不安につながっている。
「737MAXシリーズ」は燃費のよさが奏功し、すでに5000機以上を受注。ボーイング始まって以来の大ベストセラー機になることがほぼ約束されている。シリーズには、座席定員によってラインナップが737MAX7、8、9、10の4バージョンある。
ボーイング737と呼ばれる機体は、50年前に登場した同社を代表する近距離機で、これまでに1万機以上が送り出されている。MAXシリーズは737の「第4世代」と呼ばれる機型で、燃費のよいエンジンに換装しているほか、翼端には特殊な形状のウイングレッドという小さな翼を付けている。また、さらに客室の開放感が極めて向上しており、飛行機に乗り慣れない人でも「従来機とは明らかに居住性が違う」と感じるようだ。
(2)受領機数70機中国運航一時停止、エチオピアでの墜落事故に敏感に反応したのは中国だった。航空関連事業を所管する国の機関、中国民用航空局(CAAC)は事故翌日の11日、中国国内の航空会社に対し、同日午後6時(現地時間)以降の737MAX8全機の運航を一時停止するよう勧告を行った。
中国は同型機をこれまでに70機あまり受領、現在世界の空を飛んでいるMAXシリーズ350機(1月末現在)のうち5分の1を占めている。目下、アメリカを飛ぶ同型機は65機なので、中国が国別で最も大きなマーケットとなっているわけだ。
もっとも中国の航空会社が保有する旅客機は3000機を超えており、それからみればMAXシリーズの割合はわずかだ。それでも同型機の運航停止のあおりで、11日に同型機を使って飛ぶ予定だった355フライトのうち、62便については機材のやりくりがつかずキャンセルとなったほか、145便が遅延したという(中国の航空情報サイト・飛常准=VariFlightによる)。
中国が今回の事故への対応が早かったのはなぜだったのだろうか。乗客を国籍別でみると中国は8人で、ケニアの32人、エチオピアの9人についで3番目に多かった。それに加え、犠牲となったのは「80后」「90后」と呼ばれる若い世代だった。
また、中国は近年「一帯一路」政策のもと、アフリカへの開発援助の動きを活発に行っており、技術者だけでなく大量の出稼ぎ者も現地へと送っている。そんな事情もあって、この事故への中国国内での関心は高いようだ。一方、メーカーのボーイングからみて、CAACによる「737MAX8運航停止の判断」は極めて厳しい決定だったと言える。中国航空各社は同型機を合計180機発注、ボーイングが中国にこれから納める機体の約85%はMAXシリーズが占めている。同社は中国のジェット機市場について「史上初の1兆ドル(110兆円)規模に達するマーケットとなる」と予測しているが、その主力の販売先で自社の稼ぎ頭が飛べなくなる、という影響はことのほか大きいものと言えるだろう。
https://toyokeizai.net/articles/-/270830?page=3
(1)経緯、3月10日にエチオピア航空302便が墜落し、乗客・乗員が全員死亡するという痛ましい事故が起きて以降、多くの国や航空会社が、アメリカの航空大手ボーイングの最新鋭機「737MAX8」の一時運航停止を決める異例の事態となっている。同型機は昨年10月29日にもインドネシアで墜落しており、わずか5カ月で2度も離陸してから数分後に墜落という共通性がありながら、いずれも原因が特定されていないことが不安につながっている。
「737MAXシリーズ」は燃費のよさが奏功し、すでに5000機以上を受注。ボーイング始まって以来の大ベストセラー機になることがほぼ約束されている。シリーズには、座席定員によってラインナップが737MAX7、8、9、10の4バージョンある。
ボーイング737と呼ばれる機体は、50年前に登場した同社を代表する近距離機で、これまでに1万機以上が送り出されている。MAXシリーズは737の「第4世代」と呼ばれる機型で、燃費のよいエンジンに換装しているほか、翼端には特殊な形状のウイングレッドという小さな翼を付けている。また、さらに客室の開放感が極めて向上しており、飛行機に乗り慣れない人でも「従来機とは明らかに居住性が違う」と感じるようだ。
(2)受領機数70機中国運航一時停止、エチオピアでの墜落事故に敏感に反応したのは中国だった。航空関連事業を所管する国の機関、中国民用航空局(CAAC)は事故翌日の11日、中国国内の航空会社に対し、同日午後6時(現地時間)以降の737MAX8全機の運航を一時停止するよう勧告を行った。
中国は同型機をこれまでに70機あまり受領、現在世界の空を飛んでいるMAXシリーズ350機(1月末現在)のうち5分の1を占めている。目下、アメリカを飛ぶ同型機は65機なので、中国が国別で最も大きなマーケットとなっているわけだ。
もっとも中国の航空会社が保有する旅客機は3000機を超えており、それからみればMAXシリーズの割合はわずかだ。それでも同型機の運航停止のあおりで、11日に同型機を使って飛ぶ予定だった355フライトのうち、62便については機材のやりくりがつかずキャンセルとなったほか、145便が遅延したという(中国の航空情報サイト・飛常准=VariFlightによる)。
中国が今回の事故への対応が早かったのはなぜだったのだろうか。乗客を国籍別でみると中国は8人で、ケニアの32人、エチオピアの9人についで3番目に多かった。それに加え、犠牲となったのは「80后」「90后」と呼ばれる若い世代だった。
また、中国は近年「一帯一路」政策のもと、アフリカへの開発援助の動きを活発に行っており、技術者だけでなく大量の出稼ぎ者も現地へと送っている。そんな事情もあって、この事故への中国国内での関心は高いようだ。一方、メーカーのボーイングからみて、CAACによる「737MAX8運航停止の判断」は極めて厳しい決定だったと言える。中国航空各社は同型機を合計180機発注、ボーイングが中国にこれから納める機体の約85%はMAXシリーズが占めている。同社は中国のジェット機市場について「史上初の1兆ドル(110兆円)規模に達するマーケットとなる」と予測しているが、その主力の販売先で自社の稼ぎ頭が飛べなくなる、という影響はことのほか大きいものと言えるだろう。
https://toyokeizai.net/articles/-/270830?page=3