~今月の特選句~
病み上がり心を癒す彼岸花・・・良臣
山小屋の訛り飛び交う夕餉かな・・・世紀雄
俳句・川柳などの短詩型文芸の同好会「花衣会」では、毎月各自3句の作品を
会報に投句し発行しています。
その発行数は、今月で91号になりました。
また、昨年から勉強会として、句会を2ヶ月毎に開催しています。
今回は、その内容を報告します。
第14回 「花衣会」句会開催!!
と き 令和1年 10月18日(金) 午後2時から
ところ 広島市基町 NTT基町ビル7階 会議室
出句数 各自3句
リーダー 立川 良臣
講 師 岡部 泰行
出句3句の中から、1句ずつ選句した作品を掲載します。
星月夜少年の日の影絵老い・・・岡部 泰行
細道の過ぎて現る花野かな・・・沖本 惠子
柿よりも買い気を誘うトマトの赤・・・勝島 千波
給食室カボチャカレー香児笑顔・・・立川 良臣
北の端の岬に揺るる秋灯火・・・土居 旭
秋来れり歩いて行こか宮島線・・・中山 洋爾
蛍火も馳走となりし山の宿・・・長岡 和子
バトン落ち悲鳴が上がる運動会・・・浜本 文雄
サングラス外して見いる山野草・・・林 世紀雄
今回も力作ありがとうございました。
勉強会での研鑽の成果が、少しずつ現れているのではないでしょうか。
次回は、12月20日(金)午後2時からです。
投句は、3句を12月13日頃迄に土居までお願いします。
次回もよろしくお願い致します。
~じゆうな広場~
「八月や六日九日十五日(作者不詳)」
林 世紀雄
この8月、山登りした後の15日、子供と千鳥ヶ淵戦没者墓苑に参拝した。
数年前、女房と参拝して以来である。 天皇陛下、安部首相等の献花がしてあったが、
式典の終わった午後のせいか、参拝者はまばらだった。
私は戦死した父の顔を知らず、母一人の手によって育てられ、父の倍以上の長生きを
させてもらっている。 母は亡くなったが、今の私や家族があるのは母のお陰である。
戦後の母子家庭、私を含め3人の子供を育ててくれた。 言葉に表せないほどの苦労
があったことだろう。 こうして子供と参拝できるのも、平和であってこそ出来るもの
である。 決して戦没者、遺族等を出すような戦争は二度としてはいけない。と、願い
つつ、千鳥ヶ淵戦没者墓苑を後にした。
8月と言えば先の戦争。 そこで識者の戦争関連の新聞記事がありましたので、記事の
一部を紹介します。
〇女優 高田敏江 朗読劇「忘れない」ために
~~手弁当で30年以上続けていた朗読劇「夏の会」を、女優の高齢化で来年終了する。
平成という時代は終わり、先の戦争はどんどん遠くなる。しかし遠くなるからこそ伝え
なければならないこと、忘れてはいけないことがある。
原爆、沖縄、そして福島。被害に逢われた人からすると「忘れられる」ことほど、つら
いことはない。だから私たちは、何らかの形で伝え続けていかなくてはならない。自分の
戦争体験に照らしあわせても、こう断言できる。
戦争は、人間を狂気に陥れる。 若い人には、平和を守る努力を続けて欲しい。
〇作家 柳田邦男 戦争・災害・ハンセン病
~~戦後俳句に新境地を開いた俳人、金子兜太さんが昨年2月に98歳で亡くなられた。
戦争末期にトラック島の部隊で海軍中尉だった。 爆弾や飢えで部下が死んでいく悲惨
さは、生涯消えないほど深く全身に刻まれ、反戦平和の俳句を折々に詠み続けた。
私の心に鋭く刺さるその代表的な一句。
「水脈の果て炎天の墓碑を置きて去る」
敗戦によって島を去る船から振り返れば、戦友たちの墓碑の数々を己は見捨てるように
して、祖国へ帰る。 生き残った者の罪責感が伝わってくる。
~~戦争や災害やハンセン病などの被害とは何かについて、半世紀以上取材して見えて
きたのは、災厄は発生時の死傷だけで終わるものでなく、60年、70年たっても続くとい
うことだ。 その全体像を俯瞰してはじめて、非戦を誓う平和国家の建設や、災害、公害、
事故の惨事、病気への偏見、差別を繰り返さない安全、安心な社会の構築のために何をな
すべきか、その条件が見えてこよう。
〇心療内科医 海原純子 8月の記憶
~~昭和39年の東京オリンピックの頃は、テレビは普及していたが、カラーテレビは
高価で珍しく、カラーテレビのある家に集まって、皆でオリンピックを見たのだそうだ。
今は電話一人一台だし、テレビはスマホで見る時代。 たった数十年の間に私たちの
環境は激変した。 その当時のことはもうすっかり忘れているし、その頃のコミュニケー
ションスタイルも過去のものになった。 しかし、何といっても一番忘れられているのは、
戦争の記憶ではないだろうか。 つらいことや苦しかった記憶は覚えていたくないものだ
し、忘れてしまいたいものだ。 ただこのところ気になるのは、社会的地位がある人達の
発言や行動の中に、かつて戦争に突入していった日本の亡霊を感じて、背筋が凍る思いを
することだ。 それと同時に、そうした発言や行動を容認したり、見過ごしたりするメデ
ィアがあることも気になる。
私は戦争を知らない。でも、戦争で亡くなっていった方々の理不尽な思いを知る遺族の
方々にとって、戦争は過去のことにはならないと想像できる。
15日にはその思いを感じつつ、祈りをささげたい。
*このコーナーは、花衣会会員の自由な想い、意見、感想などを
綴ったコラムです。
遠慮なく投稿願います。 お待ちしております。(土居記)