「戦にこだわる西郷様を篤姫様が改心させたお陰で江戸城無血開城が成り、それ以後一切戦は無いまま平和のうちに明治の世を迎えることになったのでございます。」
さすがに、そういうナレーションこそ入らなかったが、NHK大河サヨクプロパガンダドラマ『篤姫』では江戸城開城後の関東・北陸・東北・北海道での戊辰戦争は“無かった”ことにされてしまった。平成20年12月14日の最終回「一本の道」でも、一切触れられなかった。
“何よりも平和を願い戦を嫌う篤姫が、西郷の心を動かし武力討幕方針を捨てさせ、江戸と日本を滅亡から救った。” そんなNHKのフィクションの辻褄合わせの為に、江戸城開城より後の戦争は無視されてしまったのだ。
関東・北陸・東北・北海道の戦場になった地域に住む人々は果たしてどう思っただろう。自分たちの先祖が払った犠牲や味わった辛苦を、ウソ話に都合に悪いからとバッサリ切り捨てられてどう感じただろうか。
彼らから苦情が来たら、製作陣らはどう答えるつもりなのだろう。
「無かったことにしたわけではありません。構成の都合上、描かなかっただけです。」
そう言うのかもしれないが、映像でも科白でもナレーションでも一切登場しなかった以上、NHK大河ドラマ『篤姫』の世界ではそれらの戦争は間違いなく“無かった”のである。
近代日本誕生の過程で数多くの犠牲が払われ血が流された。今の日本があるのはそのお陰である。近代日本誕生の捨石となった人々に対する感謝と敬意を、我々日本人は抱き続けねばならないはず。戊辰戦争の犠牲者はその人々の多くの部分を占めている。たとえ創作物であっても完全無視されていいのだろうか?