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北大海底地震計事件雑感

2007-01-13 07:41:57 | 科学
昨日、北の大学の元教授の海底地震計事件に対する判決が出た。
彼は不当判決だといった。
彼に正義はあるのだろうか?
彼は一体何を守ろうとしているのだろうか?地位も名誉も、そして財産の一部も全て失ってまで守るべきものは?
それは居直ってまで守るべきなのか?

同じ地球科学の分野に身を置く私としてはこの件に対する意見は整理しておかなければならない。
この事件を生み出す土壌となった一般問題と彼の個人的犯罪性とは区別しなければならない。
一般問題を酌量の余地としても、それは実刑を執行猶予付きにする程度のもの、との判決であったはずである。

この先生は私より年は随分上ではあるが、私は若いときから、学界やシンポジウムでお会いし、会うと挨拶程度のことばは幾度となく交わしていた。だから事件が発覚したときは大変な驚きであった。正直、大学や地球科学全体が誤解され、社会から受ける指弾を考えると、「とんでもないことをしてくれたものだ」と思った。彼は多くの本を書いて、研究論文も多く、地球科学の広告塔的役割りを果たしていたのであるからなおさらである。本当はやっては行けないことをやったのに、「俺は悪くない!」と叫べば益々指弾される。そんなことくらい分かっているはずなのに。彼を尊敬し、もり立てて来た人たちがかわいそうである。純朴に真っ正直に研究している、彼の学生であった幾人かの研究者を私は知っているが、彼らの思いを考えると、そんな「居直り」は彼らの心を痛めるだけであろうに、と思う。

彼の主張は、海底地震計開発に関わる経費は全て大学の研究費から支出されたが、その開発に関わる知識や技術は自分のものであり、そこから得られた利益の使い道は自分で決めてもいいはず、だから自分の口座に入れた、ということだろうか?

厳密にこの事件をfollowしているわけではないので違うかもしれないが、上のように主張しているとすると、かの青色発光ダイオードの発明に似ている。すなわち、「経費は会社から出た。しかし、その開発に関わる技術と知識は自分のもの、従って適切に利益は分配されるべきもの。」

しかし、違う。
自分の知識と技術によって得られた経費の利益は、きちんと届けて正式に自分の収入とする道もあるし、それに伴う税の発生は年度末に税務署に届ければなんの法的問題も発生しないはずである。彼がもっぱら使用する研究費としたいなら、委任経理金という口座を大学に設けてもらう手だてもある。彼は大学に支払うと見せかけて自分の口座に振り込ませた。だから明白な詐欺。「それは定年後の引き続く研究のためだ!」と居直ってもだれも理解しない。彼ほどの有名人ならば定年後も研究費を獲得する道はいくらでもあったはず。事実、彼は極地研究所の所長になったのだから。

発光ダイオードの場合は、とんでもない利益を生んだのだから、その知識と技術の個人の独創に関わる部分を分配せよ、と主張した。和解する前にはビタ一文、自分のポケットに入れてはいない。法的整備が不完全な場合、これが法治国家において戦う道。
海底地震計事件の彼は法が悪いと居直って、自分のポケットに入れてしまった。これは無法国家の道。総理大臣だって許されないのに、ちょっと有名な程度の研究者に許される訳もない。やるなら法の不備と戦う準備をしてやるべきであったはずである。

ということで今回の事件は私から見ても全く弁護の余地なし。私には彼が何を守ろうとしているのか、わからない。少なくともコミュニティーのためにはなにもない。むしろ害毒である。この事件の発覚時から、どのくらいの人が苦しんだか考えて欲しいものである。(マスコミで大々的に名が出ているが、あえて出さない。こちらも匿名だからそれはモラルバランス。2チャンネル化はしたくない)
コメント
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