魂に触れるとか、魂を揺さぶられるとかいう大げさな言い方がある。
たいていは映画やドラマについての安物のキャッチコピーだ。
本音は視聴率や、興行収入をあげるためのPRである。
だからお金で買える程度の価値でしかない。
2年ぶりくらいに草間彌生さんの展覧会を見た。
これはすごい。
ほんとにすごい。
閲覧者が自由に書く草間さんへのメッセージ帳には
「すごい、やばい、何も言えない!」などの言葉が並んでいた。
まさに「魂のようなところ」をぐらぐら揺すぶられる。
強烈な磁力に吸い込まれてしまう。
これはもはや作為の世界ではない。
何かが彼女に取り憑いて、あるいは彼女が何かに取り憑いて心象世界を表現する。
統合失調症という病気をもった草間さんの、生きるための死との葛藤だ。
絵の中のあらゆるドットや目玉は命を宿した細胞か何かの生きものだ。
海中の原生動物のようでもある。
ともかく何かの生きものの体内でうごめいている、別の意志を持った生命体だ。
連絡帳の最後にはこうあった。
今回はリアルな植物ネタではないが
チューリップとカボチャにからめてみた。
草間さんの世界は生きものと同じくらいに、いやそれ以上に生々しく息づいていたのだ。
それを見る人を励ましてくれるとは何とありがたいことか。
オレも充電されたような、放電されたような何とも言い難い心境だ。
台風一過に似ている気がする。
何か大きな、重要な何かが通り抜けていったのだ。
それは他に名前を付けようがない、草間彌生さんという体験だ。
それを確認するためにまた彼女の元へ足を運ぶことになるのだろう。
嗚呼、ボタニカル!