国立がん研究センターは15日、2014年に新たにがんと診断された患者数(発症者数)は、約86万7千人と発表した。男女合わせての部位別では、大腸がん胃がんを上回り最も多かった。若い世代を中心にピロリ菌感染が減り、胃がんの患者が減少しているためとみられる。

 がんと診断された患者のデータを都道府県から集めてまとめた。13年までは推計値だったが、14年は各都道府県のデータの精度が高まったことで、初めて合計値を発表した。14年の発症者数は男性50万1527人、女性36万5881人の計86万7408人。13年(合計値)から1万8578人増え、過去最高を更新した。

 部位別では男性は胃、肺、大腸、前立腺、肝臓の順、女性は乳房、大腸、胃、肺、子宮の順に多く、いずれも13年と同じ。一方男女合計では、2位だった大腸がん胃がんに代わり1位となった。片野田耕太・がん統計・総合解析研究部長は「大腸がんが増えている要因には、食習慣の欧米化や飲酒などが背景にあるとされるが、胃がんピロリ菌のような明らかな要因はなく、はっきりしない」と話す。

 ログイン前の続き都道府県別に、がんと診断された人の割合(発症率)と死亡率も公表した。全国を100とし90未満や90~100未満、100~110未満、110以上で4分類すると、全体の発症率が110以上は男性9府県、女性4道県。日本海側や近畿、中国地方で高い傾向があった。死亡率は男性は青森や秋田など4道県、女性は北海道で110以上だった。松田智大・全国がん登録室長は「死亡率が高い地域は、検診で精密検査が必要とされても、病院に行かずに発見が遅れる例があるようだ」と語る。

 部位別では、大腸がんは青森、岩手、秋田の3県が男女ともに発症率、死亡率が110以上だった。発症率が高い理由ははっきりしないが、死亡率は医療機関に通いにくい地域で高いとの指摘もある。胃がんは発症率、死亡率が男女ともに110以上だったのは秋田や山形、新潟など。東北や近畿、日本海側で高く、食塩の摂取量や喫煙率の高さが影響しているとみられる。肺がんは、喫煙率の高い北海道で男女とも発症率、死亡率が110以上だった。肝臓がん肝炎ウイルスの感染者の多い西日本を中心に高かった。

 18年に新たにがんと診断される患者や死亡者の予測数も発表した。患者数は男性57万4800人、女性43万8700人の計101万3600人。男性は胃、大腸、肺、女性は乳房、大腸、胃の順に多い。死亡者数は37万9900人で17年とほぼ同じだった。(土肥修一、月舘彩子)

2014年にがんと診断された患者の割合(発症率)、死亡率が高い地域

 

※全国を100として、地域による年齢構成の差を調整して比べて110以上の都道府県。国立がん研究センター調べ

 

【全部位・男性】

●発症率    ●死亡率

 富山県     青森県

 広島県     秋田県

 石川県     鳥取県

 島根県     北海道

 愛媛県

 和歌山県

 鳥取県

 奈良県

 京都府

 

【全部位・女性】

●発症率    ●死亡率

 富山県     北海道

 広島県

 北海道

 石川県

 

【大腸・男性】

●発症率    ●死亡率

 青森県     青森県

 富山県     秋田県

 秋田県     岩手県

 沖縄県     茨城県

 岩手県     沖縄県

 和歌山県

 広島県

 

【大腸・女性】

●発症率    ●死亡率

 富山県     青森県

 秋田県     岩手県

 青森県     北海道

 岩手県     秋田県

 島根県     富山県

 京都府

 広島県

 

【胃・男性】

●発症率    ●死亡率

 富山県     秋田県

 新潟県     青森県

 山形県     山形県

 秋田県     和歌山県

 石川県     栃木県

 鳥取県     茨城県

 宮城県     島根県

 島根県     新潟県

 広島県     奈良県

 福島県

 和歌山県

 奈良県

 愛媛県

 大阪府

 兵庫県

 岩手県

 香川県

 青森県

 福井県

 京都府

 

【乳房(女性)】

●発症率    ●死亡率

 沖縄県     東京都

 東京都     佐賀県

 広島県     青森県

 富山県     神奈川県

 北海道

 福岡県