大腸がん、胃がんを上回り最多 ピロリ菌感染減が原因か
2018年9月15日05時03分
国立がん研究センターは15日、2014年に新たにがんと診断された患者数(発症者数)は、約86万7千人と発表した。男女合わせての部位別では、大腸がんが胃がんを上回り最も多かった。若い世代を中心にピロリ菌感染が減り、胃がんの患者が減少しているためとみられる。
がんと診断された患者のデータを都道府県から集めてまとめた。13年までは推計値だったが、14年は各都道府県のデータの精度が高まったことで、初めて合計値を発表した。14年の発症者数は男性50万1527人、女性36万5881人の計86万7408人。13年(合計値)から1万8578人増え、過去最高を更新した。
部位別では男性は胃、肺、大腸、前立腺、肝臓の順、女性は乳房、大腸、胃、肺、子宮の順に多く、いずれも13年と同じ。一方男女合計では、2位だった大腸がんが胃がんに代わり1位となった。片野田耕太・がん統計・総合解析研究部長は「大腸がんが増えている要因には、食習慣の欧米化や飲酒などが背景にあるとされるが、胃がんのピロリ菌のような明らかな要因はなく、はっきりしない」と話す。
都道府県別に、がんと診断された人の割合(発症率)と死亡率も公表した。全国を100とし90未満や90~100未満、100~110未満、110以上で4分類すると、全体の発症率が110以上は男性9府県、女性4道県。日本海側や近畿、中国地方で高い傾向があった。死亡率は男性は青森や秋田など4道県、女性は北海道で110以上だった。松田智大・全国がん登録室長は「死亡率が高い地域は、検診で精密検査が必要とされても、病院に行かずに発見が遅れる例があるようだ」と語る。
部位別では、大腸がんは青森、岩手、秋田の3県が男女ともに発症率、死亡率が110以上だった。発症率が高い理由ははっきりしないが、死亡率は医療機関に通いにくい地域で高いとの指摘もある。胃がんは発症率、死亡率が男女ともに110以上だったのは秋田や山形、新潟など。東北や近畿、日本海側で高く、食塩の摂取量や喫煙率の高さが影響しているとみられる。肺がんは、喫煙率の高い北海道で男女とも発症率、死亡率が110以上だった。肝臓がんは肝炎ウイルスの感染者の多い西日本を中心に高かった。
18年に新たにがんと診断される患者や死亡者の予測数も発表した。患者数は男性57万4800人、女性43万8700人の計101万3600人。男性は胃、大腸、肺、女性は乳房、大腸、胃の順に多い。死亡者数は37万9900人で17年とほぼ同じだった。(土肥修一、月舘彩子)
2014年にがんと診断された患者の割合(発症率)、死亡率が高い地域
※全国を100として、地域による年齢構成の差を調整して比べて110以上の都道府県。国立がん研究センター調べ
【全部位・男性】
●発症率 ●死亡率
島根県 北海道
【全部位・女性】
●発症率 ●死亡率
富山県 北海道
北海道
【大腸・男性】
●発症率 ●死亡率
【大腸・女性】
●発症率 ●死亡率
青森県 北海道
【胃・男性】
●発症率 ●死亡率
【乳房(女性)】
●発症率 ●死亡率
北海道