上海下町写真館2010

上海より半年ぶりに帰国しました。マイペースで故郷の風景や歴史などをご紹介します。

読書の秋:「上海の顔役たち」

2010年10月13日 08時30分53秒 | 読書
この本は、もともと上海の夕刊紙「新民晩報」に連載され、人気を博して1987年に単行本となった<大亨>(大親分)をテキストとして翻訳されたものです。
上海の租界成立から辛亥革命、国民党と軍閥や共産党との抗争、日中戦争と汪精衛傀儡政権の樹立、日本敗戦後の国民党政権の樹立そして中華人民共和国成立まで。
中国激動の近代史の裏を生きた上海のゴッドファーザー物語です。

1.主な登場人物

○黄金栄(1868~1953)
上海南市三牌楼の茶館の長男として誕生。フランス租界警察に入る(20歳)
数々の自作自演の犯罪を解決し、警察内の地位を上げていくが、密告により一時警察署を辞任し蘇州へ隠遁(31歳)。
手腕を買われ租界警察に復職(33歳)
辛亥革命後、各地の軍閥が覇権を争う不安定な政情の時代、
フランス租界を基盤に表はフランス租界警察の刑事部長、裏は密輸麻薬の強奪や政敵の暗殺を請け負うなど、
手荒い裏家業で英国租界にも勢力を拡大していく。
この頃、不遇の蒋介石を門下に入れ援助する。
山東省で発生した上海天主教のフランス人司教拉致事件を裏社会の繋がりで見事解決し、上海人の大喝采を浴びる。
租界当局は孫文の上海訪問を阻止しようとしたが、警察署の部下や暗黒街の手下を使って上海滞在中の孫文を護衛した。
晩年は組織を杜月笙に任せ、中華人民共和国成立後も上海に残り85歳で病没した。

フランス租界警察を退職し、晩年(63歳)の黄金栄が創設者黄楚九の死後手に入れた大世界。

「娯楽の殿堂」は麻薬や売春の温床となり「悪の殿堂」と化す。

○杜月笙(1888~1951)
父親は楊樹浦の小さな米屋を商っていたが5歳のとき死別。
母親も2歳の時に死別しており、父親の死後、浦東の高橋鎮で母方の祖母に養育される。
上海に出て伯父の果物屋で働く(13歳)
青幇に入門、黄金栄の門下に入る(20歳)。
黄金栄の桂生夫人に目をかけられて、黄金栄の片腕となるまで組織内を成り上がっていく。
民族主義が台頭し、多発する外国企業と労働者の争議を解決し、市民の喝采を浴びる。
1927年、共産党が組織した上海労働者の武装蜂起に対し、武装部隊を組織し蒋介石クーデターに協力。
日中戦争勃発後は香港に逃亡したが、上海の組織を使い汪精衛傀儡政権と日本との秘密協定を暴露。
太平洋戦争終結後上海に戻り上海市長になることを夢見ていたが、蒋介石国民党政権に裏切られる。
中華人民共和国成立前に再び香港へ逃亡し、その後上海へ帰れる日を待ちわびながら64歳の誕生日に病没。

杜月笙が設立した旧「中匯銀行」

現在は北京銀行が営業しており、優秀歴史建築にも指定されている。

○張嘯林(1877~1940)
江蘇省慈渓に大工の子として生まれる。地元で騒ぎを起こし上海へ逃げ出る(23歳)
40歳の時、黄金栄の門下に入るり、軍閥の威信を背景にのし上がって行く。
旧日本軍上海占拠後樹立された汪精衛傀儡政権に協力し、対立する蒋介石国民党に暗殺される。(63歳)

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