私の若い頃のヘアスタイルは極端なショートとロングの繰り返しだった。
ロングから、いきなりベリーショートにすると「どうしたの?失恋でもしたの」と聞かれたのに、40歳位を境に、ヘアスタイルをがらっと変えたのにもかかわらず、誰も何も言わなくなった。
それどころか、「短くすると楽でしょ」と見てくれよりも実用性を重んじてそうしたかのように言うのである。
若い女性の髪形を見て「どうしてあんなに不必要に、長い髪をしているんだろうか」と思うのだが、彼女達にとっては、髪の毛をいじっている時間が自分が美人だと、うっとり出来る時間なのである。
先日、白馬の温泉に行った時に、長い髪の若い女性が隣に来たことがあった。
彼女はまるで人魚姫みたいに横座りをして「ふふーん、ふふーん」と鼻歌を歌いながら、嬉しそうな顔をして左肩のあたりにまとめた濡れた髪をさする。
そして両手で濡れた髪を、上げたり下げたりしながら、鏡に映る自分の顔をうっとり眺めている。
そして時折、満足そうに、にっと笑ったりするのである。
横で見ていて「そんなに、うっとりするような顔でもあるまいに」と言いたくなったが、とにかく彼女は、自分の長い髪をいじくっては、至福の時間を過ごしていたのだ。
長い髪だと、どういうわけだか、女性は自分が綺麗だと錯覚するようだ。
というのは実は私もそうだったからだ。
高校生の頃、さかりがついていた私は、とにかく男の子にもてたい一心で髪の毛を伸ばしていた。
鏡の前の自分を見ると、髪の毛が短い時よりは何となく女らしいように見えた。
髪の毛をかきあげて、にたっと笑ったりすると、密かに憧れている男の子も、ころっとまいるような気がしていた。
顔はともかく、髪の毛だけは綺麗だったので後ろを向くともっと良かった。
つづく
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