高校2年生の後輩がバイトに入ってくると聞き、翌日、楽しみに出勤した私は「うっす」と挨拶され、「よろしくお願いします」と言ったものの、腹の中は「どっひゃーー」だった。
こんな子達を採用するなんて、よっぽど人手不足らしい。
やっと、どよーんとした亡霊から解放されると思ったのに、新しくやってきた同僚はスケバン。
それも高校にいたような、かわいいスケバンではなくて筋金入りである。
髪の毛は金髪、マスクをとると口紅は赤紫色。
もちろん長いタイトスカートに、かかとをつぶした革靴。
これから私は亡霊とスケバンに挟まれて、どうやって日々を過ごして行けばいいのか?本当にため息しか出て来なかった。
私が気を揉んでいるというのに全く仕事をする意欲のない亡霊は、スケバンたちには「仕事のやり方は、この人に聞いて」と私を指さし、ふらふらと売り場を離れていった。
頭の中には、スケバンとどう接していいかということしかなかった。
しばし、お互い見合っていたものの、私は相手がスケバンだと思うから怖いだけで、普通の年下の女の子が来たと思えばいいんだと、自分自身に言い聞かせた。
仕事のやり方を教えると、一応、彼女達は「うっす、うっす」と返事をしながらうなずいていた。
現像の受付カウンターの中にいると、アルバイトだか社員だかわからない。
ましてや化粧をばっちりして、毛まで染めているスケバンの方が私よりも、ずっと大人に見えるので、お客さんはスケバンのところに行き、「これ、お願いします」とカメラやフィルムを差し出したりする。
いくらスケバンと言えども、慣れないことにはうろたえる。
すると私のところに来て「うっす」とドスのきいた声で言うのだ。
「はい、はい」私もスケバンの機嫌を損ねるのは嫌なので、彼女のかわりに仕事をやってあげる。
そうするとお客さんが帰ったあとに「うっす」と言いながら、ぺこりと頭を下げる。
何でもかんでも「うっす」ですませてしまう、ボキャブラリーの無さにびっくりしつつ、スケバンと揉めることなく、私は一日を終えたのである。
つづく
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