高校生の頃、顔はともかく、髪の毛だけは綺麗だったのでロングにしていた。
合わせ鏡を使い、背中の真ん中くらいまである、黒くてツヤのある髪の毛を、うっとり眺めていたものだ。
座っているので胴長、短足もわからない。
合わせ鏡で見た私の後ろ姿の上半身は、完璧であった。
新発売されるシャンプーは全て試し、もちろんリンスも怠ることなく、美しい髪の毛を維持するのに執念を燃やしていた。
本人は南沙織と大差はないと思っていたのに、友人は私の事を「ミッキー吉野」と呼んだのだ。
確かに体重は、当時60キロはあったと思う。
家に帰り、母親に、あんまりではないか!っと訴えたのだが、母親は「うまいこと言うわねぇ~」と感心していた。
ひどいのになると「山伏と呼ばれるのと、ミッキー吉野とどっちがいい?」と聞いてくる者まで出てきた。
私はむかっとして何か月もかけて伸ばした髪を肩に届くくらいの長さに切った。
すると皆に、武田鉄矢みたいと言われた。
又、頭にきて、アゴくらいの長さに切ったら、菅原洋一と言われた。
とにかく暗黒の思春期であった。
この経験により私は、見てくれの女っぽさを武器に男をひっかけようとする技術を磨くことなく捨て去ったのである。
つづく
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