勝又壽良の経済時評
(2017年4月8日)
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
韓国、「大統領選」経済成長政策語らず「分配」のみ論じる
極端な「大衆迎合」で、口当たりのいいことばかり主張
韓国の次期大統領選は熱を帯び始めているが、韓国経済をどうするかという本質的な議論は出ていない。
新聞メディアが、日本経済を手本とした改革問題を取り上げる程度である。韓国も今年から高齢社会入りした。低成長を打破し、どうやって増大する社会保障費を捻出するか。
そういう議論はどこからも聞かれないのだ。
朴槿恵前大統領逮捕という大事件後、韓国をいかに立て直すかという話も聞かれない。
『朝鮮日報』(3月29日付)は、「国民所得3万ドルの壁、成長掲げる韓国大統領候補は不在」と題する社説を掲げた。
国民総所得(GNI)とは、GDP(国内総生産)に海外所得を加えたもの。ほぼ、GNP(国民総生産)概念に等しい。
韓国は、この国民総所得で連続11年、1人当たり2万ドル台に止まっていること嘆いている。
早く3万ドル台に駆け上って、先進国並みになりたいと焦っているのだ。
3万ドル台を実現するには、経済改革に取り組まなければならない。
だが、韓国社会の「反企業ムード」は、反成長ムードを煽っている。
経済成長への関心は持たず、分配ばかりに関心を向けるのは、韓国特有の「労働貴族」の発想法と似ているのだ。
働かないで給料だけ上げろ、という主張でもあるのだ。
高度経済成長時代(1970年代)の日本では、「くたばれGDP」という言葉が流行っていた。
これは、朝日新聞のキャンペーンであり、一世を風靡した。
行き過ぎた経済成長政策を咎めるもので、それなりの意味はあった。
現在の中国は、この「くたばれGDP」の標語がぴったりとあてはまる。
韓国は、逆に潜在成長率一杯の成長を実現しないと、高止まりした失業率の改善も不可能である。
こういう、合理的な考えが、韓国には存在しないのだ。
(1)「昨年の韓国の1人当たり国民総所得(GNI)が2万7561ドルと集計された。
実質国内総生産(GDP)の成長率は2.8%だった。
韓国の国民総所得は1995年に1万ドルを超え、2006年以降は10年連続2万ドル台で推移している。
3万ドル超えは先進国入りを果たすかどうかの目安となる経済指標の一つだ。
日本とドイツは2万ドルから3万ドルまで5年、英国、カナダは8年、米国は9年を要した。
韓国経済が2万ドル台にとどまる期間が長引くと、『中進国のわな』に落ちたのではないかと懸念する声が出てくるはずだ」。
1人当たり国民総所得が、2万ドルから3万ドルへ達するに要した年数は、日本とドイツで5年であった。
英国、カナダは8年、米国は9年を要した。ところが、韓国ではすでに11年間も2万ドルに留め置かれている。
その鬱憤が、このパラグラフに現れている。確かに、日独は5年間の「スピード出世」であった。
それから見ると、韓国の11年はすでに倍以上の時間、足踏みさせられている。さらに、今後も足踏みが続く。
昨年の韓国の国民総所得は2万7561ドルである。
前年比で1.4%増(390ドル)である。
ドル換算だから、為替相場の動向にも左右されるが、年間390ドル程度の増加では、3万ドルに達するには後6年はかかる計算だ。
韓国が先行きに不安を持つのは当然であろう。
だが、この段階で「成長よりも分配を」という主張も短絡すぎる。
あと一踏ん張りして、社会保障費の原資を稼ぎ出さなければならないはずである。
(2)「韓国銀行は今年の成長率が2.5%にとどまると予想した。
新たな成長動力も見当たらない。
こうした状況で韓国社会には
『国民所得を高めてどうするのか』
『富を分配すべきだ』といった退行的な考え方が横行している。
国民所得とは一国がつくり出すパイの大きさを示す。
パイが大きくならなければ十分な分配もできない。
経済成長を通じパイを育てようという主張には人気がなく、分配・福祉で分け合おうという主張に票が集まる。
人気を失う覚悟で『まだ我々は成長が必要だ』と叫ぶ政治家はほとんどいない。
まだ十分な背丈に達していないのに成長疲労を患った社会にどういう未来が待ち構えているかは想像に難くない」。
韓国は、今年から「高齢社会」に移行している。
総人口に占める65歳以上の人口が14%を上回ったのだ。
この段階で1人当たり国民総所得が2万7561ドルであるのは、まだ「成長よりも分配」をという段階ではない。
日本の1人当たり国民総所得は3万6680ドル(2015年)である。
日本は円安の影響で伸び悩んでいるが、それでも韓国との差は9119ドルもある。
韓国がこの段階で、「分配優先論」を言い出すのは早すぎる。少なくも、潜在成長率の達成を目指す必要はあろう。
前述の通り、韓国では「左翼張り」の主張が高い人気を得ている。
反企業を訴え、財閥企業をヤリ玉に上げれば、国民から拍手喝采を受けるという情緒社会だ。
いまの韓国は何をなすべきか。そういう理詰めの話は人気を集めないのだ。
ひたすら感情に訴える情緒主義が主流である。
『韓国経済新聞』(3月31日付)は、「残り40日の韓国大統領選挙、誰も成長を話さない」と題する社説を掲げた。
この記事では、大統領選で与野党が国家ビジョンを語らない、不思議な選挙運動を糾弾している。
前大統領が逮捕される異常事態の中で、「国家再建」のビジョンが出てきて当然であろう。
こういう情緒選挙の結末は、韓国の衰退を決定づけるであろう。
(3)「大統領選挙まであとわずか40日だ。
にもかかわらず大統領候補の誰も成長を話さない。
かなり前から大統領選挙に向けて準備してきた候補は多かったが、国の未来、国富の根源には触れない。
国家経済を成長させるという政党もない。
低成長構造から抜け出す戦略も、国の将来に対する真摯な悩みも見えない、おかしな選挙だ。
選挙の後が心配だ。
支持率で上回る『共に民主党』の党内選挙でも成長や国家ビジョン競争は見えない。
これまで見慣れてきた野党の間の勢力争い、地域情緒に訴える政派間の覇権争いの様相だ。
『国民の党』の党内選挙、金鍾仁(キム・ジョンイン)議員らのいわゆる『反文連帯』も似ている」。
「共に民主党」、「国民の党」はいずれも革新派だ。
大統領選では、「共に民主党」の文在寅氏が有利とされ、30%台の支持率を保っている。
だが、この文氏の政策は人気取り臭が強く、果たして大統領としてやっていけるのかと疑問符が付けられている。
高支持率の背景は、ばらまき政策と韓国固有の「反米」的なトーンを出した演説が人気を得ている。
その他には、目を引く政策がゼロという、中身の薄い演説を続けている。
大統領選では、候補予定者の誰も韓国の未来、国富の根源には触れない。
低成長経済構造から抜け出す戦略も、国の将来に対する真摯な悩みも見えないのだ。
まさに、「感情8割、理性2割」の韓国らしい大統領選挙なのだ。
低レベルの選挙運動をしながら、「反日」になると俄然、熱を帯びて盛り上がるのだろう。
この民族は一体、何を考えているのか。
国家の基本戦略をめぐって大いに議論を闘わせるべきなのだ。
「反日」で人気を集めようという戦略は、朴前大統領の失敗で明らかなように、国際情勢を無視した「戯言」にすぎない。
韓国の安全保障は、「反日」では成り立たなくなっている現実を認識すべきである。
「反日」ではなく、「知日」こそ韓国の生きる道であろう。
(4)「保守を標ぼうしてきた『自由韓国党』と『正しい政党』も変わらない。
真の保守価値には背を向け、ポピュリズム競争に加わっている。
政策的アイデンティティーを失い、自体の分裂で選挙自体を左側に傾かせた自称保守政党の支離滅裂は深刻な状況だ。
今からでも本然の政綱に基づいた成長戦略を講じなければいけない」。
「自由韓国党」と「正しい政党」は、いずれも旧「セヌリ党」(与党)である。
朴前大統領の支持をめぐって分裂した保守派である。
だが、真の保守価値には背を向けて、ポピュリズム競争に加わっている、という。
朴氏の逮捕という事態を受けて、その余波が少しでも大統領選に影響しないように防戦していると見られる。
これでは、保守派の受け皿として機能せず、韓国政治の混乱は収まるまい。
仮に大統領選で敗れても、保守の価値を結集する努力を放棄すれば、韓国保守はジリ貧に陥ろう。
本来、韓国では保革連立政権が求められる緊急事態にある。その認識が、政党にも国民にも皆無だ。
(5)「大統領候補らが出している『分配公約』は改めて言及する価値もない。
公共部門で職場を分けようという『大きな政府』主張から
バラ色一色の労働時間短縮、最低賃金引き上げのほか、
全国民に月給を与えようというような基本所得保障論まで終わりがない。
経済民主化の旗幟のもと企業を締めつけるだけでは足りず、
『財閥解体』レベルのスローガンまで出ている中、成長戦略を聞こうとするのは無理なことなのかもしれない」。
韓国では、日本の民主党が政権を執った時と同様に、ばらまき政治で人気を集めている感じがする。
小沢一郎という「マジシャン」に、日本の有権者は乗せられたが、その後遺症は大きかった。
特に、民主党の安保知識は100%ゼロ状態で、沖縄基地問題は混乱だけが残された。韓国でもその懸念が大きい。
文在寅氏は「第二の小沢一郎」の危険性を持っている。
彼は、米国と反目し中朝へ接近するのでないかと危惧されている。
そうなれば、韓国はデッドラインを踏み超えるのであろう。
文氏が、韓国の「小沢一郎」になったなら、韓国の運命はそこで終わりになろう。
(6)「今の大韓民国に必要な戦略は明確だ。成長なしにはいかなる福祉も持続可能でない。
大半の大統領候補が公正と平等を叫ぶが、どのような公正なのかはっきりしない。
はっきりしているのは成長のない公平と分配は貧困の道という点だ。
低成長から抜け出せなければ企業と市場が生み出す雇用も期待しにくい。
所得3万ドル達成どころか2万ドル維持も難しくなれば、それこそ「ヘル朝鮮」になるだろう。
成長がなければ安保も社会統合も基本的に不可能になる。
より大きな問題はポピュリズム政治がこのように経済的な自由を殺すという点だ。
有権者は誰が真の成長を語るのか注目する必要がある」。
大半の大統領候補者が、公正と平等を叫んでいるという。
口当たりのいい言葉だから、当然であろう。問題は中身である。
「成長のない公平と分配は貧困の道である」という指摘はその通りである。
韓国は、儒教倫理国ゆえに、過去回帰型文化である。
改革は極めて困難な国である。およそ、「進化」しない国家である。
国民も政治家に改革を求めず、情緒的な選挙を繰り広げているのだ。
地域対抗意識などが現在に持ち込まれている。
(2017年4月8日)
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
韓国、「大統領選」経済成長政策語らず「分配」のみ論じる
極端な「大衆迎合」で、口当たりのいいことばかり主張
韓国の次期大統領選は熱を帯び始めているが、韓国経済をどうするかという本質的な議論は出ていない。
新聞メディアが、日本経済を手本とした改革問題を取り上げる程度である。韓国も今年から高齢社会入りした。低成長を打破し、どうやって増大する社会保障費を捻出するか。
そういう議論はどこからも聞かれないのだ。
朴槿恵前大統領逮捕という大事件後、韓国をいかに立て直すかという話も聞かれない。
『朝鮮日報』(3月29日付)は、「国民所得3万ドルの壁、成長掲げる韓国大統領候補は不在」と題する社説を掲げた。
国民総所得(GNI)とは、GDP(国内総生産)に海外所得を加えたもの。ほぼ、GNP(国民総生産)概念に等しい。
韓国は、この国民総所得で連続11年、1人当たり2万ドル台に止まっていること嘆いている。
早く3万ドル台に駆け上って、先進国並みになりたいと焦っているのだ。
3万ドル台を実現するには、経済改革に取り組まなければならない。
だが、韓国社会の「反企業ムード」は、反成長ムードを煽っている。
経済成長への関心は持たず、分配ばかりに関心を向けるのは、韓国特有の「労働貴族」の発想法と似ているのだ。
働かないで給料だけ上げろ、という主張でもあるのだ。
高度経済成長時代(1970年代)の日本では、「くたばれGDP」という言葉が流行っていた。
これは、朝日新聞のキャンペーンであり、一世を風靡した。
行き過ぎた経済成長政策を咎めるもので、それなりの意味はあった。
現在の中国は、この「くたばれGDP」の標語がぴったりとあてはまる。
韓国は、逆に潜在成長率一杯の成長を実現しないと、高止まりした失業率の改善も不可能である。
こういう、合理的な考えが、韓国には存在しないのだ。
(1)「昨年の韓国の1人当たり国民総所得(GNI)が2万7561ドルと集計された。
実質国内総生産(GDP)の成長率は2.8%だった。
韓国の国民総所得は1995年に1万ドルを超え、2006年以降は10年連続2万ドル台で推移している。
3万ドル超えは先進国入りを果たすかどうかの目安となる経済指標の一つだ。
日本とドイツは2万ドルから3万ドルまで5年、英国、カナダは8年、米国は9年を要した。
韓国経済が2万ドル台にとどまる期間が長引くと、『中進国のわな』に落ちたのではないかと懸念する声が出てくるはずだ」。
1人当たり国民総所得が、2万ドルから3万ドルへ達するに要した年数は、日本とドイツで5年であった。
英国、カナダは8年、米国は9年を要した。ところが、韓国ではすでに11年間も2万ドルに留め置かれている。
その鬱憤が、このパラグラフに現れている。確かに、日独は5年間の「スピード出世」であった。
それから見ると、韓国の11年はすでに倍以上の時間、足踏みさせられている。さらに、今後も足踏みが続く。
昨年の韓国の国民総所得は2万7561ドルである。
前年比で1.4%増(390ドル)である。
ドル換算だから、為替相場の動向にも左右されるが、年間390ドル程度の増加では、3万ドルに達するには後6年はかかる計算だ。
韓国が先行きに不安を持つのは当然であろう。
だが、この段階で「成長よりも分配を」という主張も短絡すぎる。
あと一踏ん張りして、社会保障費の原資を稼ぎ出さなければならないはずである。
(2)「韓国銀行は今年の成長率が2.5%にとどまると予想した。
新たな成長動力も見当たらない。
こうした状況で韓国社会には
『国民所得を高めてどうするのか』
『富を分配すべきだ』といった退行的な考え方が横行している。
国民所得とは一国がつくり出すパイの大きさを示す。
パイが大きくならなければ十分な分配もできない。
経済成長を通じパイを育てようという主張には人気がなく、分配・福祉で分け合おうという主張に票が集まる。
人気を失う覚悟で『まだ我々は成長が必要だ』と叫ぶ政治家はほとんどいない。
まだ十分な背丈に達していないのに成長疲労を患った社会にどういう未来が待ち構えているかは想像に難くない」。
韓国は、今年から「高齢社会」に移行している。
総人口に占める65歳以上の人口が14%を上回ったのだ。
この段階で1人当たり国民総所得が2万7561ドルであるのは、まだ「成長よりも分配」をという段階ではない。
日本の1人当たり国民総所得は3万6680ドル(2015年)である。
日本は円安の影響で伸び悩んでいるが、それでも韓国との差は9119ドルもある。
韓国がこの段階で、「分配優先論」を言い出すのは早すぎる。少なくも、潜在成長率の達成を目指す必要はあろう。
前述の通り、韓国では「左翼張り」の主張が高い人気を得ている。
反企業を訴え、財閥企業をヤリ玉に上げれば、国民から拍手喝采を受けるという情緒社会だ。
いまの韓国は何をなすべきか。そういう理詰めの話は人気を集めないのだ。
ひたすら感情に訴える情緒主義が主流である。
『韓国経済新聞』(3月31日付)は、「残り40日の韓国大統領選挙、誰も成長を話さない」と題する社説を掲げた。
この記事では、大統領選で与野党が国家ビジョンを語らない、不思議な選挙運動を糾弾している。
前大統領が逮捕される異常事態の中で、「国家再建」のビジョンが出てきて当然であろう。
こういう情緒選挙の結末は、韓国の衰退を決定づけるであろう。
(3)「大統領選挙まであとわずか40日だ。
にもかかわらず大統領候補の誰も成長を話さない。
かなり前から大統領選挙に向けて準備してきた候補は多かったが、国の未来、国富の根源には触れない。
国家経済を成長させるという政党もない。
低成長構造から抜け出す戦略も、国の将来に対する真摯な悩みも見えない、おかしな選挙だ。
選挙の後が心配だ。
支持率で上回る『共に民主党』の党内選挙でも成長や国家ビジョン競争は見えない。
これまで見慣れてきた野党の間の勢力争い、地域情緒に訴える政派間の覇権争いの様相だ。
『国民の党』の党内選挙、金鍾仁(キム・ジョンイン)議員らのいわゆる『反文連帯』も似ている」。
「共に民主党」、「国民の党」はいずれも革新派だ。
大統領選では、「共に民主党」の文在寅氏が有利とされ、30%台の支持率を保っている。
だが、この文氏の政策は人気取り臭が強く、果たして大統領としてやっていけるのかと疑問符が付けられている。
高支持率の背景は、ばらまき政策と韓国固有の「反米」的なトーンを出した演説が人気を得ている。
その他には、目を引く政策がゼロという、中身の薄い演説を続けている。
大統領選では、候補予定者の誰も韓国の未来、国富の根源には触れない。
低成長経済構造から抜け出す戦略も、国の将来に対する真摯な悩みも見えないのだ。
まさに、「感情8割、理性2割」の韓国らしい大統領選挙なのだ。
低レベルの選挙運動をしながら、「反日」になると俄然、熱を帯びて盛り上がるのだろう。
この民族は一体、何を考えているのか。
国家の基本戦略をめぐって大いに議論を闘わせるべきなのだ。
「反日」で人気を集めようという戦略は、朴前大統領の失敗で明らかなように、国際情勢を無視した「戯言」にすぎない。
韓国の安全保障は、「反日」では成り立たなくなっている現実を認識すべきである。
「反日」ではなく、「知日」こそ韓国の生きる道であろう。
(4)「保守を標ぼうしてきた『自由韓国党』と『正しい政党』も変わらない。
真の保守価値には背を向け、ポピュリズム競争に加わっている。
政策的アイデンティティーを失い、自体の分裂で選挙自体を左側に傾かせた自称保守政党の支離滅裂は深刻な状況だ。
今からでも本然の政綱に基づいた成長戦略を講じなければいけない」。
「自由韓国党」と「正しい政党」は、いずれも旧「セヌリ党」(与党)である。
朴前大統領の支持をめぐって分裂した保守派である。
だが、真の保守価値には背を向けて、ポピュリズム競争に加わっている、という。
朴氏の逮捕という事態を受けて、その余波が少しでも大統領選に影響しないように防戦していると見られる。
これでは、保守派の受け皿として機能せず、韓国政治の混乱は収まるまい。
仮に大統領選で敗れても、保守の価値を結集する努力を放棄すれば、韓国保守はジリ貧に陥ろう。
本来、韓国では保革連立政権が求められる緊急事態にある。その認識が、政党にも国民にも皆無だ。
(5)「大統領候補らが出している『分配公約』は改めて言及する価値もない。
公共部門で職場を分けようという『大きな政府』主張から
バラ色一色の労働時間短縮、最低賃金引き上げのほか、
全国民に月給を与えようというような基本所得保障論まで終わりがない。
経済民主化の旗幟のもと企業を締めつけるだけでは足りず、
『財閥解体』レベルのスローガンまで出ている中、成長戦略を聞こうとするのは無理なことなのかもしれない」。
韓国では、日本の民主党が政権を執った時と同様に、ばらまき政治で人気を集めている感じがする。
小沢一郎という「マジシャン」に、日本の有権者は乗せられたが、その後遺症は大きかった。
特に、民主党の安保知識は100%ゼロ状態で、沖縄基地問題は混乱だけが残された。韓国でもその懸念が大きい。
文在寅氏は「第二の小沢一郎」の危険性を持っている。
彼は、米国と反目し中朝へ接近するのでないかと危惧されている。
そうなれば、韓国はデッドラインを踏み超えるのであろう。
文氏が、韓国の「小沢一郎」になったなら、韓国の運命はそこで終わりになろう。
(6)「今の大韓民国に必要な戦略は明確だ。成長なしにはいかなる福祉も持続可能でない。
大半の大統領候補が公正と平等を叫ぶが、どのような公正なのかはっきりしない。
はっきりしているのは成長のない公平と分配は貧困の道という点だ。
低成長から抜け出せなければ企業と市場が生み出す雇用も期待しにくい。
所得3万ドル達成どころか2万ドル維持も難しくなれば、それこそ「ヘル朝鮮」になるだろう。
成長がなければ安保も社会統合も基本的に不可能になる。
より大きな問題はポピュリズム政治がこのように経済的な自由を殺すという点だ。
有権者は誰が真の成長を語るのか注目する必要がある」。
大半の大統領候補者が、公正と平等を叫んでいるという。
口当たりのいい言葉だから、当然であろう。問題は中身である。
「成長のない公平と分配は貧困の道である」という指摘はその通りである。
韓国は、儒教倫理国ゆえに、過去回帰型文化である。
改革は極めて困難な国である。およそ、「進化」しない国家である。
国民も政治家に改革を求めず、情緒的な選挙を繰り広げているのだ。
地域対抗意識などが現在に持ち込まれている。