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造船不況、韓国のラストベルト・巨済島文在寅氏を“消極的な支持”「俺たちの代表じゃない」

2017-04-11 15:07:14 | 日記

造船不況、韓国のラストベルト・巨済島文在寅氏を“消極的な支持”「俺たちの代表じゃない」

2017.4.11 07:54更新

産経

造船不況、韓国のラストベルト・巨済島韓国大統領選は、一部世論調査で中道左派の第2野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)元共同代表が支持率首位に浮上するなど左派系最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表の独走から戦況が一変した。

投開票まで1カ月を切り、事実上の一騎打ちの様相を見せる。

現場ルポを通じ、保守政権への国民の失望や韓国社会が抱える課題を浮き彫りにしながら、票の行方を追った。

(韓国・巨済(コジェ)島 時吉達也)

釜山(プサン)からバスで約80分。

雨の降りしきる街に降り立つと、鮮やかなオレンジ色の作業用雨具姿の人々が行き交っていた。

出前の配達、駐車場の管理人。背中にはそれぞれ、韓国の造船「ビッグスリー」の一つである「サムスン重工業」の社名が印刷されている。

「着心地がいいから、街の人はみんなこれを使うんだ」(配送業の男性)。造船業従事者が労働者の7割を占める街の風景だ。

対馬(長崎県)から五十数キロの距離にある韓国南東端、巨済島。

1980年代以降韓国経済の主力となった造船業の中心地で、近年まで世界の「造船1番地」として存在感を示していた。

近隣の蔚山(ウルサン)などとともに不況知らずの繁栄を誇ってきた造船地帯が今、未曽有の危機に瀕(ひん)している。

世界的な物流の減少や中国企業の進出に伴い、韓国の造船受注量は過去10年で3分の1以下に減少。

昨年には17年ぶりに日本を下回った。

ビッグスリーの一つで、サムスンと同様に巨済で大型造船所を経営する「大宇(デウ)造船海洋」に対しては3月、国が6兆7千億ウォン(約6700億円)規模の金融支援に乗り出すことが決まった。

影響は飲食店など地域経済にも波及し、住民は政治への不信感を募らせる。

現地メディアは一帯を「韓国のラストベルト」と呼ぶ。

「この間まで、『犬が一万ウォン札を口にくわえて歩く街』といわれてたんだけどね」。

午後5時、巨済島東部の玉浦(オッポ)地区。

大宇の造船所で働く2万人以上の労働者が一斉に帰路に就く中、共働きの妻とともに会社を出てきたカン・ムシンさん(51)はかつての繁栄を懐かしんだ。

造船マンとして23年を過ごし、2000年代前半には月に700万~800万ウォンを稼いだのも過去の話だ。

日に日に同僚が減っていくなか、6人の子供を抱え将来の見通しは全く立たない。

大統領選に水を向けると、「文在寅に投票することになる。保守は誰も期待できないから」と話した。

一方、「造船業の行方は世界経済次第。大統領候補がどんなに聞こえのいい公約を掲げても関係ない」と期待は薄い。

家族と離れ、単身で出稼ぎ生活を送るパク・ビョンスンさん(51)も「投票する人がいない。

一番重要なのは造船業の景気を何とかしてくれる人だけど…」と嘆く。「あえて一人挙げろというなら、文在寅が一番マシなのかな」とため息をついた。

巨済は文在寅氏の出身地でもある。

しかし、地元特有の熱気は感じられない。移動中のタクシーで、男性運転手は「あいつはただの避難民。別に俺たちの代表じゃない」と吐き捨てた。

北朝鮮で暮らしていた両親が朝鮮戦争で韓国に避難し、行き着いた巨済島で生まれた文氏。

同じ巨済出身でも、地元選出の国会議員を経て大統領に上り詰めた金泳三(キム・ヨンサム)氏とは異なり、若い時分に巨済を離れた文氏に愛着を持つ人は多くない。


「それでも、今回は保守に入れるわけにはいかないから」。

保守政権を担ってきた朴槿恵前大統領の逮捕が影を落とす。

話を聞いた20人以上の中に、保守政党候補を推す声はなかった。
 
夜を迎えた玉浦地区の繁華街。

大宇の作業着姿のままで飲み歩く労働者らの姿があったが、「どの店も満席で、店に入れないほどだった」というかつてのにぎわいは失せていた。

安哲秀氏を支持しているという男性は「まあ結果を見ててよ。韓国人は文在寅なんかに政権を任せるようなことはしないから」。

赤ら顔で記者の背中を強くたたいた。

翌朝。日雇いの現場作業員の仕事を紹介する事務所を訪れると、仕事にあぶれた10人近い造船業出身者らが花札に興じていた。

大統領選について尋ねる記者に対し、一人の男性が視線も向けずにつぶやいた。

「クノミクノミヤ(どいつもこいつも同じだ)」

ラストベルト さびついた工業地帯という意味で米東部から中西部にかけ、鉄鋼など主要産業が衰退した地域を指す。

産業空洞化による地域経済の低迷や人口減少、移民増加が進む中、政治不信を募らせた白人労働者らが2016年米大統領選で過激な改革を訴えたトランプ氏の支持に回り当選に貢献した。