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米中のはざまで揺れる韓国:北朝鮮核への危機感鈍く、大統領選に向け政争激化

2017-04-18 19:20:15 | 日記
角田 卓士

ジャーナリスト。元共同通信ソウル支局長。1962、岡山県生まれ。早稲田大学卒業後、87 年に共同通信に入り、93年から本社社会部で警視庁(警備・公安)や警察庁などを担当。韓国語学留学を経て2000年から03 年までソウル特派員、07年から12 年までソウル支局長を務め、同年に共同通信を退社。以後はフリー。

[2017.04.14]

北朝鮮による核兵器の実戦配備が目前に迫る脅威となる中、米トランプ政権は「軍事行動」も排除しない断固たる姿勢を示し、朝鮮半島情勢にきな臭さが漂い始めた。

しかし朴槿恵(パク・クネ)大統領罷免、逮捕で混乱が続く韓国では、5月9日の大統領選に向け政争が激化。

外交安保政策をめぐる世論も四分五裂で、当事者能力を失った政府と国民は右往左往するばかりだ。



“親北”政権誕生の悪夢に危機感

「大統領弾劾・罷免は政治的陰謀であり無効だ」「韓国はなぜ、北韓(北朝鮮)の喜ぶことばかりするのか」

太極旗(韓国国旗)の小旗を手に悲壮な表情で気勢を上げるのは、親友による国政介入疑惑に端を発した一連の事件で逮捕された韓国前大統領、朴槿恵容疑者の熱烈な支持者や保守派の市民たち。

4月に入っても毎週土曜日には、ソウル市役所前の広場を埋め尽くす「太極旗集会」が続いている。

国政介入疑惑が発覚した昨年10月以降、左派の市民団体や急進派労組が中心となり、「朴槿恵大統領退陣」を求める「ロウソク集会」が週末ごとにソウル中心部で開催。

次々と噴出する疑惑に憤慨した一般市民が大挙加わり、参加者数が最高で32万人(警察発表)に達した日もあった。

しかし、ロウソク集会が次第に下火になる一方で、「太極旗集会」は勢いを増し、年明けには参加者数が逆転したと言われる。

昨年末には、朴槿恵容疑者の支持率は既に5%前後に落ち込み、長年の支持者が「自分が保守だと人前で話すのも恥ずかしい」と話すほど失望と反発を招いていたにもかかわらず、今なぜ多くの市民が太極旗集会に集まるのか。

当時、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏が次期大統領候補の中で支持率トップを独走し、「当選確実」という雰囲気が広がっていた。

これに焦ったのが、普段はデモと無縁な年配者たちだ。

「(朴槿恵容疑者にも)落ち度はあったが、ロウソク集会を扇動する従北(親北朝鮮)勢力を放置すれば、韓国が滅びかねない」という切羽詰まった思いで立ち上がったという。

文在寅氏は当初、大統領に当選したら米国より先に北朝鮮を訪問するとし、南北協力事業である北朝鮮の開城工業団地(韓国政府が昨年2月に核実験などに対する制裁措置として操業停止)の再稼働を公言。

米韓の情報機関は、同団地と金剛山観光事業(2008年に中断)の収益が北朝鮮の核・ミサイル開発に使われたと分析しており、「国際的な制裁強化で外貨不足に苦しむ金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、文在寅政権誕生を心待ちにしているはずだ」と元韓国政府高官は断言する。

4月に入り、中道路線の第2野党「国民の党」の大統領候補、安哲秀(アン・チョルス)氏の支持率が急上昇したのも、与党系候補が事件の逆風で苦戦する中、「文在寅氏の当選だけは阻止したい」という保守派の力と見られている。

国民の党は対北朝鮮包容政策を実行した故金大中(キム・デジュン)元大統領の支持勢力が軸になり、新政治民主連合(現「共に民主党」)から分裂して結成。

安哲秀氏は、朴槿恵容疑者が僅差で当選した前回大統領選の因縁(候補者一本化を通じて文在寅氏を手助けした)があり、保守派にとっては旧敵だが、今回は「敵の敵は味方」というわけだ。どちらが当選しても政治、社会の分裂に終わりは見えない。

中国の圧力強化、暗雲漂う米韓同盟

韓国の命運を握る米中両国からの風当たりも厳しくなるばかりだ。

北朝鮮の弾道ミサイル攻撃に備えた米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備を巡っては、安哲秀氏が配備を容認する一方、

文在寅氏はつい最近まで事実上の見直しを主張し、中国寄りのスタンスを鮮明にしていた。

先行きの混乱を憂慮した米国は先手を打って3月初め、予告なしに装備の搬入を開始し、中国政府と韓国の親中国派をけん制した。

THAAD配備に関し、中国を仮想敵国とした日米によるミサイル防衛体制強化の一環ととらえる中国の習近平政権は、韓国に配備承認撤回を要求。

中国国内で韓国芸能人の活動などを制限する「限韓令(韓流禁止令)」や、韓国旅行商品の販売禁止を含めた経済制裁で圧迫を強めている。

習近平国家主席にとって、朴槿恵政権下で米中二股外交を展開しながら中国にすり寄ってきた韓国が、再び米国側に寝返るのを放置するわけにはいかないからだ。

韓国内では中国の傍若無人ぶりに「嫌中感情」が広がったものの、米国や日本に対する場合と違い、大きな反中国デモは見られない。

中国に従属してきた長い歴史もあってか、「中国に逆らうと恐ろしい目に遭う」という国民感情が背景にある。


中国では韓国製品の不買運動がやまず、対中輸出依存度が高い韓国経済を直撃。

ソウルの観光名所にあふれていた中国人観光客の姿が急速に消えていく様子は韓国人の不安を増幅させ、大統領選のムードに影響を与える可能性もある。

親米路線をとった李明博(イ・ミョンバク)政権で外交安保担当の大統領府高官を務めた金泰孝(キム・テヒョ)氏は、朝鮮日報への寄稿文(4月3日付け掲載)で、

「(3月下旬に)ワシントンで米国の外交政策立案に関与する人物たちと会った結果、共通の関心事は北韓(北朝鮮)の出方ではなく米韓関係だった」とし、文在寅氏が大統領になれば米国との関係悪化が避けられないと警鐘を鳴らした。「これ以上、裏切るな」という米国からのメッセージといえる。

「軍事行動」排除しないトランプ政権

韓国政府が内憂外患で身動きとれない中、トランプ大統領は習近平国家主席との米中首脳会談で、北朝鮮問題で中国の協力が得られなければ単独行動も辞さない考えを伝達。

これに先立つ安倍晋三首相との電話会談では「すべての選択肢がテーブルの上にある」と語り、軍事力行使も排除しない姿勢をあらためて表明した。

これは軍事行動という切り札をちらつかせながら北朝鮮を揺さぶると同時に、同国に強い影響力を持つ中国に対し、本気で問題解決に取り組むよう迫ったものだ。

今後の北朝鮮の態度によっては対話解決の可能性は皆無ではないが、米国は最終手段として核・ミサイル施設に対する先制攻撃や、金正恩氏ら現指導部を殺害・排除し体制転換を図る「外科手術」の準備を進めて行くのも間違いないだろう。

米国はクリントン政権時代の1994年、北朝鮮・寧辺(ニョンビョン)の核施設に対する空爆を検討したことがある。実行した場合、

北朝鮮の反撃でソウルが「火の海」となり、韓国市民だけで100万人以上の犠牲者が出るとの試算が出たことに加え、

韓国に在住する米国人の避難に時間がかかることから決断できないままに。

結局、訪朝したカーター元大統領と会談した故金日成(キム・イルソン)主席が核開発凍結を約束したため、危機は回避された。

韓国政府内では「中東やアフリカでの軍事作戦とは異なり、(北朝鮮に対する)先制攻撃は被害が甚大な上、全面戦争に発展する危険性が高く、非現実的な選択肢だ」(当時を知る政府関係者)との見方が支配的だ。

しかし、現在の北朝鮮は、ミサイルの弾頭に搭載可能なほど核兵器の小型化に成功していると見られ、米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発にも拍車をかけている。

当時とは比較できないほど脅威は増大し、「核武装阻止のために残された時間はわずか」という点で日米韓当局の見方は一致、今後の展開は予断を許さない。

有事なら在日米軍基地攻撃も

一方、ソウルの街角で韓国人に尋ねると、

繰り返される核実験や弾道ミサイル発射に慣れっこになり、「北が同胞である韓国人に核攻撃を行うはずがない」という楽観論が目立ち、

「朴槿恵政権の強硬政策が韓(朝鮮)半島の緊張を高めた原因であり、南北対話が何より重要だ」という声も根強い。

万一、朝鮮半島有事になれば、北朝鮮は韓国攻撃と同時に、在日米軍基地に向け多数の弾道ミサイルを発射する可能性が高い。

弾頭にはVXガスなどの化学兵器が搭載される恐れもある。韓国人の「平和ぼけ」はかなり重症のようだが、日本にとっても他人事ではないだろう。

韓国次期政権と国際関係:朴槿恵外交の「負の遺産」に直面

2017-04-18 18:58:50 | 日記
韓国次期政権と国際関係:朴槿恵外交の「負の遺産」に直面

木村 幹

神戸大学大学院国際協力研究科教授、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。1966年大阪府生まれ。京都大学大学院法学研究科博士課程中退。

博士(法学)。ハーバード大学、高麗大学、世宗研究所、オーストラリア国立大学、ワシントン大学等の客員研究員を歴任。

主著に『日韓歴史認識問題とは何か』(ミネルヴァ書房、2014年、読売・吉野作造賞受賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(ミネルヴァ書房、2003年、サントリー学芸賞受賞など)。


[2017.04.13]

韓国次期政権と国際関係:朴槿恵外交の「負の遺産」に直面

朴槿恵(パク・クネ)前大統領の罷免や逮捕で揺れる韓国。5月9日には大統領選挙が行われ、新たな政権が誕生する。

次期政権は前政権で失墜した国際的信用を取り戻し、周辺諸国と意思疎通を図ることが早急に求められる。

大統領選、進歩派の勝利ほぼ確実

2017年3月31日未明、前日午前から深夜にまで及ぶ尋問を終えた韓国のソウル中央地方裁判所は、収賄などの容疑で朴槿恵前大統領への逮捕状を発行した。

朴槿恵はこれにより即日収監され、1948年の大韓民国成立以来、大統領経験者として3人目の逮捕となった。

前大統領を巡る捜査の進展は、並行して行われている次期大統領選挙にも深い影を落としている。

3月10日に弾劾が成立して罷免された後も前大統領のスキャンダルが繰り返し報じられる中で、朴政権を支えてきた保守勢力は党勢回復のきっかけさえつかめないでいる。

朴政権の与党であったセヌリ党の流れを引く自由韓国党内では、朴支持派と非支持派が対立し、スキャンダルにどう向き合うかを依然決めかねている。

こうした中で、一時は回復の勢いを見せた同党支持率は再び低迷し、10%台前半に留まっている。

同党にとって悩ましいのは、国民の大多数が弾劾に賛成し、またスキャンダル追及に厳しい姿勢を見せている一方で、一部には熱烈な朴支持勢力が存在する事である。

すなわち自由韓国党は、朴批判に転じれば同党の主たる支持基盤である朴支持勢力の支持を失い、逆に朴支持を続ければ大多数の国民の支持は得られない、という深刻なジレンマに直面している。

旧与党から前大統領との決別を訴えて党を離れた勢力が立ち上げた「正しい政党」も、

朴支持勢力から「裏切り者」というレッテルを貼られ、5%以下の超低支持率に沈んでおり、韓国の保守勢力は「朴槿恵の頸木(くびき)」に苦しめられる形になっている。

重要なことは、朴前大統領の弾劾とその後の刑事処罰へと向かう状況が、単に政権を崩壊させたのみならず、韓国の保守勢力がこれまで依拠してきた基盤を大きく破壊したことである。

結果として、1998年の金大中(キム・デジュン)政権成立以降、保守・進歩の二大勢力間の角逐に彩られてきた韓国の政治構造は、大きな変化に直面しつつある。

5月9日に予定されている大統領選に向けた世論調査で首位を独走してきたのは、2012年の大統領選に当時の統合民主党から出馬した、「共に民主党」所属の文在寅(ムン・ジェイン)。

彼は03年から08年まで、進歩派・盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領を秘書室長などとして支えた。

盧政権における主流派中の主流派である。そして世論調査で、

この文在寅を猛追するのは「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)だ。

2人は4月3日と4日にそれぞれの党内で大統領候補予備選に勝利し、公認候補となった。いずれも進歩色の強い人物であり、よほど大規模なスキャンダルの発覚などがない限り、次期大統領が進歩派の候補者から選ばれることはほぼ確実な状況である。

朴政権で周辺国との関係悪化進む

それでは、進歩派が政権を握るとみられる韓国の次期政権はどのような外交政策を展開するのだろうか。

ここで確認しなければならないのは、保守勢力と同様に新政権もまた、朴政権の残した「負の遺産」に直面せざるを得ないことである。

実際、現在の韓国外交の状況は極めて深刻なものである。

米国でトランプ政権が成立したこともあり、米韓両国の関係は決して円滑でない。

3月中旬に日本、韓国、中国を歴訪したティラーソン国務長官は米メディアのインタビューの中で、日本を「最も重要な同盟国」、韓国を「重要なパートナー」と述べて、同じ北東アジアの同盟国である両国の重要性に明確な差をつけた。

米中対立の焦点が朝鮮半島から南シナ海に移る中で、米国にとって韓国の戦略的重要性は低下している。

トランプ大統領が重視する貿易問題の行方も相まって、米韓関係の今後は予断を許さない。

より深刻なのは中国との関係である。

3月7日に始まった在韓米軍基地への地上配備型ミサイル迎撃システム「THAAD」配備に反発する中国政府は、

中国人団体観光客の韓国渡航を事実上禁止し、THAAD配備の用地を提供したロッテ財閥系の中国国内のスーパーを閉店させるなど、

露骨な経済圧力をかけている。

日本との関係もまた、2015年末の慰安婦合意後も円滑とは程遠い。

日本政府はソウル・釜山双方の日本在外公館前に設置された慰安婦を象徴する少女像の撤去を求め、今年1月9日から4月4日までの約3カ月にわたって在韓大使を日本に帰国させた。

一方、安全保障上最大の脅威である北朝鮮はミサイル実験を繰り返し、各国は北朝鮮への制裁を強めている。

このような状況の下、韓国の新政権が取り得る外交的選択幅は広くない。

不安定なトランプ政権の対韓国政策を肯定的に変えるための手段はほとんどなく、中国が反発を強めるTHAAD問題で、いったん配備されたミサイルシステムを米国に撤去させるのもほぼ不可能だ。

日本との間の懸案である少女像撤去問題では、強硬な姿勢を見せる日本政府と撤去に反対する世論との間で、韓国政府はどちらを選んでも大きなリスクを負うことになる。

北朝鮮との関係改善は韓国の進歩勢力がこれまで最も重視してきたことであるが、国連から厳しい制裁が科されている北朝鮮への融和政策に韓国が単独で乗り出せば、国際社会の非難を浴びることは目に見えている。

独自の外交政策が招いた八方ふさがり

次期政権にとって不幸なのは、奔放とさえいえた朴政権の活発な外交政策が、結果として韓国の選択肢を制限させてしまったことである。

2013年に朴政権が出発した当時、北東アジアでは米中両国の対立が今日ほど深刻ではなかった。

だからこそ、この段階の韓国政府には一定の自由度が存在した。

しかし14年ごろになると南シナ海を巡る問題を契機に米中対立は激化し、米国は中国重視政策を進める韓国への不満を大きくした。

にもかかわらず、前大統領はその後も中国を重視し続け、米国の怒りを買った。

結局、政権末期には米国、次いで米国が重視する日本との関係において、大きな外交的譲歩へと追い込まれた。

その前者の表れが中国との関係を理由にそれまで韓国が婉曲(えんきょく)に拒否を続けてきたTHAAD配備の容認であり、後者が15年末の日韓慰安婦合意における韓国側の法的賠償放棄に他ならなかった。

国際情勢の変化にもかかわらず、政策を変えなかったために追い込まれていったのは、北朝鮮との関係においても同様だった。

日米両国が制裁を強める中、発足当初の朴政権は開城工業団地を通じた経済交流を活発化させ、2015年の南北交易は歴代最高額を記録した。

しかし、北朝鮮はこれをあざ笑うかのように核兵器とミサイルの実験を継続。

やがて周辺国からの圧力もあり、韓国政府は開城工業団地閉鎖へと追い込まれた。

結果として北朝鮮との関係においても、独自外交最大のカードを失うことになった。

一言でまとめれば、

朴政権の外交とは、

経済成長などによって自信をつけた韓国が日米中ロといった大国の間で独自外交を展開し、逆にその国力の大きさゆえの限界に直面する過程だった。

周辺国は独自で派手な動きを見せる韓国に警戒を強め、この動きを阻止するために強いカードを切ることになった。

そして周辺の有力国が同時に強いカードを切った時、米中両国の狭間に置かれた韓国は新たな外交的選択を取れなくなったわけである。

日本や北朝鮮が韓国に対して強い姿勢を見せているのもこのことを熟知しているからであり、国際環境は韓国にとって八方ふさがりの状況になっている。

次期政権は国内外と「意思疎通」を

韓国の新政権はここからどのようにすればいいのだろうか。

当然のことながら、行わなければならないのは、朴政権期に失墜した外交的信用をもう一度取り戻すことだ。

それにまず必要なのは、外交チャンネルを大きく開くことであろう。

日本や北朝鮮に対する政策に典型的に見られたように、朴政権は時に首脳会談などのチャンネルを閉じることを相手国に対する「圧力」として利用しようと試みた。

しかし、それによって事態は動かず、逆にその「独善的」な外交姿勢を多くの国から非難されることになった。

突出した経済的・軍事的能力を持たない韓国にとって、自らを巡る国際的な状況を単独の影響力で動かすのは難しい。

従って状況を改善したければ、周辺国との協力は必須である。そのためには早期に各国首脳と会談を行い、新大統領と新政権が信頼に足る外交パートナーであることを積極的にアピールする必要がある。

そうすれば周辺国、とりわけ進歩派が率いる新政権を警戒する日米両国の姿勢は大きく変わるだろう。

第2に行うべきは、

周辺国との協議なしに拙速な外交的メッセージを出すのを慎むことである。

これまで韓国では、世論を考慮した外交政策の変更が繰り返されてきた。

しかし民主主義の体制下においても、外交政策は他国との信頼関係の下で行われるものであり、国内事情のみを理由にして一方的にその方針を転換することは不適切だ。

それにもかかわらず韓国では、世論とその支持を受けた政権交代を理由に、新たな政権が出発すると従来の外交政策が一変することが繰り返されてきた。

その結果、周辺国からの外交的信頼が大きく損なわれて今日に至っている。

具体的に行うべきことは何か。最も重要なのは国際情勢を国民に対して率直に説明し、「取ることが可能な選択肢」を明確に提示して議論することである。

民主主義体制下にあるからといって、何らの議論もなしに国民の意思をそのまま政策に反映するのは、あるべき政治の姿ではない。

むしろ民主主義体制だからこそ、日々の生活に追われ、内外情勢の複雑な事情を知り得ない国民に対し、自国や政府が置かれた状況を分かりやすく説明し、粘り強く対話することが重要なのである。

さもなければ次期政権もまた、強硬な世論と困難な国際環境の狭間で早期に立ち往生することになるだろう。

最後に1つ。朴政権下で韓国の人々が大統領を批判するキーワードに選んだのは「(意思)疎通の欠如」だった。

つまり、朴槿恵が世論に応えないことを彼らは批判した訳である。

しかしながら本来、意思疎通とは国民から政府へ一方的に向けられるべきものではない。

政府が国民に状況を丁寧に説明すれば、それによって国民は理解を深めていく。

もちろん、同様の「意思疎通」は周辺諸国との間にも必要だ。

新政権はいかにして国内外との意思疎通を深めていくのか。お手並み拝見、となりそうだ。

(文中敬称略)