日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2018-01-11 05:00:00
米国から対話の枠はめられる
北に騙される統一選手団編成
韓国大統領の文在寅(ムン・ジェイン)氏は、余りにもスタンドプレーが目に余る。
元日には、市民団体と一緒に登山する。
4日には、自ら大統領府の玄関に15分も立って、元慰安婦代表を招待。
国賓待遇の扱いで彼女たちを食事会に迎えた。
さらに帰途は、車椅子の女性に付き添って見送るなど、克明に報道陣へ公開している。狙いは、大衆迎合であろう。
文氏は細やかな情を見せるが、外交政策という国家の運命を左右する事態になると右往左往している。
もともと視野が狭いので、遠景が見通せないようである。
南北対話も、北の金正恩労働党委員長が「新年の辞」で呼びかけ、これに即応して決定したもの。
米国へ連絡は2日も遅れたという。「北核問題」の主役である米国の立場をないがしろにした、と批判されている。
米トランプ大統領と文氏の電話会談は、4日に行なわれた。
平昌五輪(パラリンピックを含む)開催中は、米韓合同軍事演習を延期することで米国側の了解を得た。
だが、米国は「南北会談」について厳しい目を向けている。文氏が例の調子で深く考えず、北に妥協するのでないかと警戒されているのだ。
米国から対話の枠はめられる
『朝鮮日報』(1月4日付)は、「南北対話を急ぐ韓国政府に米国が懸念と警告」と題する記事を掲載した。
米国が、北朝鮮との対話に向けた動きを本格化させた文在寅政権に「待った」をかけ始めた。
南北関係の進展には、北朝鮮の核問題と連携させるべきというわけだ。
米紙『ニューヨーク・タイムズ』は3日、トランプ政権の関係者らが「南北対話のテーマは五輪に限定されるべき」と話したと報じている。米国側が抱く韓国への不信感は極めて大きい。
(1)
「米国務省東アジア太平洋担当局のアダムズ報道官は3日(現地時間)、
『自由アジア放送』(RFA)の『南北間の板門店連絡チャンネル再開を歓迎するか』との質問に対し、
対北関係に関して韓国との緊密な接触を続けているとした上で『詳細は韓国政府に聞いてほしい』と述べた。
この表現は、韓米で意見に食い違いがある際によく使われる。
アダムズ報道官はまた『連絡チャンネルの再開が、北朝鮮核問題の解決に役立つと思うか』との質問には『これまで文大統領が述べてきたように、南北関係の進展は北朝鮮の核プログラムの解決と別に進むことはできない』と述べた。
ホワイトハウスの立場はさらに強硬だ。
サンダース報道官は同日の定例記者会見で、
対北政策が北朝鮮の指導者によって揺さぶられることはないとして『トランプ大統領は力で率いていく大統領だ』と述べた」
韓国は、過去の南北会談では妥協に妥協を重ねて資金援助してきた。
これが、ことごとく裏切られ核やミサイルの開発資金に使われてきた。
こういう経緯があるから、米国は南北対話の主題は、平昌五輪に限定すべきだとしている。
米国が反対しそうな結論が出れば、北に米韓不一致という印象を与え、彼らを増長させるからだ。
まさに、「北核問題」は胸突き八丁にある。
韓国は、それだけに慎重の上にも慎重であって欲しい。これが、米国の本音であろう。
(2)
「『ニューヨーク・タイムズ』はこの日、トランプ政権の関係者の言葉を引用し『南北対話に反対はしないが、テーマは五輪に限定されるべき』として、
『韓国と米国は、後に後悔する恐れのある譲歩はどんなことであっても絶対にすべきでない』と強調した。
米政権の関係者は『これまで北朝鮮は、韓米政府の政治性向が互いに異なる(保守・進歩)場合、韓米関係を引き裂こうとしてきた。米国はこのような北朝鮮の意図に抵抗するだろう』と述べた」
米国は、北朝鮮の平昌五輪参加費用を韓国が負担することにも反対している。
北朝鮮が後々、何を言い出すか分からない部分があるからだろう。
「北朝鮮は韓国の懇願によって平昌五輪に参加してあげた。
その証拠に、韓国が北朝鮮代表団の派遣費用を全て支払った」というように悪用される恐れがあるからだ。
韓国政府には、こういう面で慎重さに欠けている。
「韓国と米国は、後悔する恐れのある譲歩はどんなことであっても絶対にすべきでない」というのは、北朝鮮が百戦錬磨であることだ。
米国は、韓国が北朝鮮の平昌五輪参加費用を負担することに、次のように反対している。
「韓国の日刊紙『世界日報』は1月4日、米国政府の高位当局者が『平昌五輪に北朝鮮の選手団と応援団が参加するのは米国が関与することでない』とし『しかし、韓国が政府レベルで北朝鮮代表団に対する財政的な支援をすれば、国際社会の対北朝鮮制裁に反する可能性がある』と話したと伝えた。
この当局者は、『韓国は2000年オーストラリア・シドニーで開かれた夏季五輪当時、約500万ドル(約5億6000万円)程度を北朝鮮に支援した前例がある』としながら、
『今回の平昌五輪でもそれと似たようなことが発生してはならない』と強調したと世界日報は伝えた」(『中央日報』1月4日付)
上記の記事を見ると、北朝鮮は徹底的に「タカリ精神」であることを窺わせている。
自国選手団の派遣費用さえ韓国に払わせてきたのだ。
多分、この金額は「金王朝」の裏金としてプールされていたに違いない。
韓国こそ、とんだピエロ役であったのだ。
過去のこうした甘やかしが、現在の「北核問題」へと跳ね返っているのだろう。
「脅かせばなんとかなる」。これが、北朝鮮の韓国観になっていると見られる。
北に騙される統一選手団編成
『朝鮮日報』(1月5日付)は、「太極旗がない平昌五輪開会式、絶対に受け入れられない」とする社説を掲げた。
文在寅大統領は、民族統一という旗印を掲げて大統領に当選した経緯がある。
それ故、「南北」という壁を取り払って、朝鮮民族が一つになるシンボル「統一旗」を掲げて平昌五輪開会式を開催したい。
そういう夢を持っているはずである。
韓国は、核とミサイルを手に入れた北朝鮮を、平和の祭典である五輪に「同等の資格」で迎え入れることに矛楯を感じないのだろうか。
文氏は、感傷主義である。前後の見境もなく、「統一の夢」に酔っている。冷徹な判断を下す政治家には不向きな人である。
この社説は、平昌五輪開会式において韓国国旗の太極旗が はためかず、「統一旗」が掲揚されることがあれば、耐えられないという主張である。
北朝鮮が五輪準備段階から協力し、韓国を威嚇する核やミサイルも開発しなかったならば、「統一旗」掲揚も素直に受け入れられるはずだ。
だが、五輪開催を目前にした段階で政治的理由で参加し、「統一旗」を掲げることは韓国国民に違和感があるだろう。それこそ、「国民が感情的に受け入れない」テーマだ。
(3)
「北朝鮮の平昌オリンピック参加に向けた南北実務協議が近く開催される見通しとなったが、そこでは主に南北単一チームの構成、開会式と閉会式における共同入場行進、北朝鮮応援団の参加問題などが議題として話し合われるという。
しかし、南北単一チームは北朝鮮選手団の数が非常に少ないことや、準備のための時間がないことなどが大きなネックとなっており、女子アイスホッケーやフィギュアスケートなどを除けば現実的に難しいようだ。
ただし、共同入場行進については実現の可能性が高いという。
2000年のシドニー・オリンピックから07年に中国の長春で開催された冬季アジア大会まで、南北は9回にわたり共同で入場行進を行った前例があるからだ」
オリンピックは、民族和解と平和を祈るイベントである。
南北は、2000年のシドニー・オリンピックから07年、中国・長春で開催された冬季アジア大会まで、9回にもわたり南北統一の夢を「統一旗」に賭けてきた。
それが、すべて北によって裏切られてきた。今回の平昌もまた同じ経緯を辿るのであろう。
となれば、平昌五輪において韓国の安全保障を危機におとしめるような「取引」は御法度である。
スポーツは、スポーツと割り切ることである。
オリンピックに、過大な期待を賭ける文政権は、国際政治の厳しさを認識しない「学生運動家」上がりの集団という批判を避けられまい。言葉は悪いが、「お馬鹿さん集団」なのだ。
(4)
「もし、開会式での共同入場行進が本当に実現すれば、韓国の地で開催される平昌オリンピックで太極旗(韓国の国旗)が見られない事態となる。
これまで冬季・夏季いずれのオリンピックにおいても開会式でホスト国の国旗が登場しなかったことは1回もない。
北朝鮮が平昌オリンピック参加をきっかけに挑発行為をやめ、核廃棄に応じるのであれば、太極旗が見られない事態も受け入れは可能かもしれない」
韓国で、北朝鮮を信じているのは、「86世代」だけであろう。
「反米・親中朝」派であるから当然の結果としても、韓国の安全保障を危機に陥れるリスクを抱えてまで、「中朝」に媚びを売るのは危険だ。
韓国大統領府は「86世代」に支配されて、こういう危機感が存在しないのだ。
中朝接近が正義と思い込んでいる集団を、正気に戻すことは不可能である。
この国際環境下で、韓国に文政権が登場したのは不運というべきだろう。
(5)
「韓半島旗を先頭に入場行進を行った2000年から07年までの期間中も、北朝鮮は挑発行為をずっと続けてきたシドニー・オリンピックから2年後の02年には西海(黄海)で韓国軍艦艇に奇襲攻撃をかけて沈没させ、5人の兵士が犠牲となった。
また、06年のトリノ・オリンピック(冬季)で韓半島旗を先頭に入場行進をしてから5カ月後、北朝鮮は一度に7発のミサイルを発射し、その3カ月後には民族を恐怖に陥れる最初の核実験を強行した。
07年の長春アジア大会(冬季)で、韓半島旗を先頭に共同入場行進をしてから1年6カ月後には金剛山で韓国人観光客を射殺する蛮行に及んだ。
北朝鮮集団にとって、核武装と大韓民国の制圧は絶対的な目標であり、それ以外の行動は全てその目的を達成するための欺瞞戦略あるいは戦術にすぎない」
このパラグラフでは、北朝鮮がいかにオリンピック精神に反する蛮行を行なってきたかが羅列されている。
南北が統一選手団を組んでもそれは、単なるショーに過ぎない。
北は、韓国を欺き世界世論を誘導する。
五輪をそういう手段にしか考えていないのだ。
この北朝鮮を相手に、また統一選手団を組むのはいかにむなしく危険であるか。
文政権はそれを理解しない証拠だ。五輪精神に鑑みて、統一選手団を編成するにしても、それには自ずと限度があろう。
(6)
「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長はすでに核兵器を保有し、米国を攻撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成も目前に控えている。
それらの究極的な目標はこの大韓民国を狙ったものだ。
北朝鮮は、その政権が崩壊する直前まで核とミサイルを絶対に放棄しないことはすでに明らかになっており、また彼らが犯罪的暴力集団であるとの事実もすでに世界中が認識している。
その北朝鮮と大韓民国が平昌オリンピックの開会式で共同入場行進を行い、太極旗ではなく韓半島旗が登場すれば、国際社会は大韓民国の行動をどう受け取るだろうか。
韓国国内ではすでに韓米合同軍事演習の縮小を求めて左翼勢力が声を荒らげている。
北朝鮮の平昌オリンピック参加自体は歓迎すべきことだ。
なぜならそれだけならごく普通の国として当然の行動だからだ。
それによって開会式で大韓民国の国旗である太極旗が見られなくなることだけは絶対に受け入れられない」
韓国の政治情勢が不安定な理由の一つは、国論の統一が不可能であることだ。
左派勢力が中朝と結んでおり、国益を考えた行動に欠けている。
これほど、海外勢力と手を結んでいる国家も珍しい。
旧李朝でも同じ動きであった。それぞれ清国とロシアと結託した派閥が存在した。
これに比べると、日本と気脈を通じる勢力は劣勢であった。
ともかく、外国勢力と手を結ぶという常識では捉えられない政治集団が、韓国には存在している。
韓国は、朝鮮戦争で北朝鮮と中国の侵略を受けた国である。
その侵略国家に親近感を持つ政治勢力が、文在寅政権である。この一事を以て、全てが理解できるであろう。
彼らの政治信条として、何と批判を受けようと北と統一選手団を組みたいのだ。
それは、「病的なもの」と言える。手の施しようがない以上、傍観しているしか道はない。日本が、その余波を受けない努力をするだけであろう。