2013年7月11日(木)
7月11日は世界人口の日(World Population Day)である。1987年7月11日に世界の人口が50億人を突破した。
これをきっかけに、世界人口の急速な増加が引き起こす食糧不足問題などに関心を持ってもらうため、国連人口基金(UNFPA)がこの日を制定した。
韓国でも、この日を「人口の日」と定めている。ただし、その位置づけは国連とは逆だ。
出産率の低下と高齢化による将来の人口不足問題に関心をもってもらうため、この日を定めた。
全国各地で結婚と出産を奨励するイベントも行う。
2013年の人口の日を記念し、あるお坊さんが国務総理賞を受賞した。2005年からお見合いを積極的に開催して、これまでに1200組を結婚させたことを評価した。
ソウル市はこの日、市役所の前でダドゥンイカードを所持した家族向けのイベントを開催する。
このカードは、ソウル市が取り組む出産奨励政策である。
子供が2人以上いて、末っ子の年齢が13歳未満の家族だけが持てる。
このカードで決済すると、ファミリーレストラン、スターバックス、美容院、映画館、子供用品、ガソリンスタンド、塾、eラーニング、書店、博物館などで5~20%の割引が得られる。
テーマパーク入場料には50%割引といった特典がある。バスや地下鉄などの運賃も割引してもらえる。子供の数が多いほど割引率が高くなる。
同様の特典を持つクレジットカードを、全国の自治体が地元の銀行と提携して発行している。
全国共通の特典もある。子供が3人以上の場合、大型自動車取得税免除、電気料金20%割引、銀行で金利優遇、新築マンションを優先的に分譲してもらうこともできる。
2050年までに人口が2割減る
統計庁のデータを見ると、韓国女性1人の平均出産率は2011年に1.24人(ソウル市1.01人)、2012年に1.30人(ソウル市1.06人)を記録した。
OECD加盟国の中でも最も値が低いグループに入っている。
それでも出産率1.30は2000年以降で最も高い値である。2005年に1.08人という最低値を記録した後、少し上向いている。
2012年に出産率が伸びたのは、35歳以上の高齢出産が増えたことが影響している。
2012年に出産した女性の年齢を見ると、20代より30代以上の方が多かった。
この年の初出産の平均年齢は30.48歳。
2011年の30.25歳よりも0.23歳上がった。
2012年生まれた新生児の母親の68.0%は30歳以上で、前年比3%ポイント高くなった。
2012年、30~44歳女性の出産率(女性1000人当たり出産した子供の数)は前年比で11人ほど伸びた。
これに対して20~29歳女性の出産率は逆に1.5人ほど減っている。
出産率が2.1人を超えないと人口は減少するという。統計庁の人口シミュレーションでは、このままだと現在5000万人超の韓国の人口は2040年には4500万人に減る。
同庁は2050年には4000万人にまで減る可能性が高いと見ている。
産児制限が人口減のきっかけ
韓国の出産率は1970年には4.53人だったものが、1980年には2.63人、1990年には1.60人と急激に減少している。
その理由は70年代に始めた産児制限政策にある。
韓国が先進国になるためには人口を減らさないといけないとして、政府は子供を3人以上産むなと制限した。
当時は「子供が多いと、食べることだけで精いっぱいになり、他の消費ができないので貧乏になる」「国民の数が減れば国民1人当たり所得が高くなる(統計上)」と信じられていた。
世界銀行がお金を貸す条件として途上国に産児制限を要求していた、とう事情もあった。
政府は「良く育てた娘、10人の息子もうらやましくない」「男女区別なく2人だけ産んで立派に育てよう」という標語の看板を国中に設置し、子供を3人以上産まないようキャンペーンまで行った。
当時は、30年後には出産率が1.30まで下がり少子化と人口減少が問題になる、とは誰も想像できなかったのであろう。
「産児制限によって2人しか産めない。でも男の子を産まないといけない」という意識が社会に広まり、胎児の性別鑑定が流行した。最初の子供は性別に関係なく産むが、2人目からは性別を鑑定し男の子だけを生む傾向が強くなった。
このため、性比の不均等が深刻になった。1987年には医療法を改定し、医者は胎児の性別鑑定をしてはいけないと定めたほどである。
自然な状態における性比は女子100に対し男子104~107だという。
韓国では、1990年には女子100に対して男子116.5、1993年には115.3、1994年は115.2にまで差が広がった。
1994年の場合、3番目の子供は女子100に対して男子205.1と異常なほど男子が多かった。
男の子が産まれるまで出産する傾向がまだ残っていたとみられる。
今ではめったにみかけないが、70~80年代までは1男4女、1男5女の家庭が珍しくなかった。
法事をしてくれる跡継ぎになる男の子が産まれるまで子供を産み続けたからだ。
今では男の子を産まないといけない、という社会的空気もなくなり、胎児の性別を知りたいという人も減った。
2012年の新生児の性比は女子100対男子105.7と自然な比率に戻っている。
3番目の子供の性比も女子100対男子109.2と自然な状態に近づいてきた。
2010年からは法律が緩和され、妊娠32週以降であれば胎児の性別を教えてもいいことになった。
少子高齢化で平均年齢が10歳向上
韓国の出産率の低下は産婦人科の風景も変えた。
カーテンで仕切られたベッドがずらっと並ぶ分娩室はなくなり、ファミリールーム、VIPルームというのが増えた。
家族が出産に立ち会える個屋で出産するのだ。部屋の設備はもちろんホテルのスイートルームに近い。産後体調を回復するまで2~3週間ほどマッサージや食事の世話もしてくれる。
産まれる子供が減るということは若い労働力が減るということで、韓国の経済成長が滞る可能性がある。
統計庁の「2012年韓国の社会指標」によると、総人口に占める65歳以上の高齢者割合は1980年には3.8%にすぎなかったが、2012年には11.8%に増加。
2030年には24.3%、2040年には32.3%に達する見込みである。
死亡率は下がり、寿命は延びている。1980年には65.7歳だったものが2011年には81.2歳に延びた。
国民全体の平均年齢は2012年には38歳だったものが2040年には49.7歳に向上する。
小学校では生徒が減少している。
教員1人当たりの生徒数は2011年の17.3人が2012年には16.3人になった。
少子化の影響で学校、児童施設も減っている。
子育ての負担は女性だけ
韓国では、自治体が出産奨励策を実施したり、政府が「このままでは人口が減少して国がなくなる」と警鐘を鳴らしたりしているにも関わらず、女性は子供を産みたがらない。
政府は「良く育てた娘、10人の息子もうらやましくない」「男女区別なく2人だけ産んで立派に育てよう」という標語の看板を国中に設置し、子供を3人以上産まないようキャンペーンまで行った。
当時は、30年後には出産率が1.30まで下がり少子化と人口減少が問題になる、とは誰も想像できなかったのであろう。
「産児制限によって2人しか産めない。でも男の子を産まないといけない」という意識が社会に広まり、胎児の性別鑑定が流行した。
最初の子供は性別に関係なく産むが、2人目からは性別を鑑定し男の子だけを生む傾向が強くなった。
このため、性比の不均等が深刻になった。1987年には医療法を改定し、医者は胎児の性別鑑定をしてはいけないと定めたほどである。
自然な状態における性比は女子100に対し男子104~107だという。
韓国では、1990年には女子100に対して男子116.5、1993年には115.3、1994年は115.2にまで差が広がった。
1994年の場合、3番目の子供は女子100に対して男子205.1と異常なほど男子が多かった。
男の子が産まれるまで出産する傾向がまだ残っていたとみられる。
今ではめったにみかけないが、70~80年代までは1男4女、1男5女の家庭が珍しくなかった。
法事をしてくれる跡継ぎになる男の子が産まれるまで子供を産み続けたからだ。
今では男の子を産まないといけない、という社会的空気もなくなり、胎児の性別を知りたいという人も減った。
2012年の新生児の性比は女子100対男子105.7と自然な比率に戻っている。
3番目の子供の性比も女子100対男子109.2と自然な状態に近づいてきた。
2010年からは法律が緩和され、妊娠32週以降であれば胎児の性別を教えてもいいことになった。
少子高齢化で平均年齢が10歳向上
韓国の出産率の低下は産婦人科の風景も変えた。
カーテンで仕切られたベッドがずらっと並ぶ分娩室はなくなり、ファミリールーム、VIPルームというのが増えた。
家族が出産に立ち会える個屋で出産するのだ。部屋の設備はもちろんホテルのスイートルームに近い。産後体調を回復するまで2~3週間ほどマッサージや食事の世話もしてくれる。
産まれる子供が減るということは若い労働力が減るということで、韓国の経済成長が滞る可能性がある。
統計庁の「2012年韓国の社会指標」によると、総人口に占める65歳以上の高齢者割合は1980年には3.8%にすぎなかったが、
2012年には11.8%に増加。2030年には24.3%、2040年には32.3%に達する見込みである。
死亡率は下がり、寿命は延びている。
1980年には65.7歳だったものが2011年には81.2歳に延びた。
国民全体の平均年齢は2012年には38歳だったものが2040年には49.7歳に向上する。
小学校では生徒が減少している。
教員1人当たりの生徒数は2011年の17.3人が2012年には16.3人になった。少子化の影響で学校、児童施設も減っている。
子育ての負担は女性だけ
韓国では、自治体が出産奨励策を実施したり、政府が「このままでは人口が減少して国がなくなる」と警鐘を鳴らしたりしているにも関わらず、女性は子供を産みたがらない。
韓国保健社会研究院が2012年、既婚女性4500人を対象にアンケート調査を行ったところ、「結婚したからといって必ずしも子供を産む必要はない」と答えた人が53.5%に達した。
「必ず子供を産むべき」と答えた人は46.3%だった。
この調査は女性の価値観を調べるため3年ごとに行う調査で、「子供を産まなくてもいい」という回答が「必ず産むべき」との答えを上回ったのは調査開始以来、この年が初めてだった。
「必ず子供を産むべき」と答えた人は1997年に73.7%、2000年に58.1%、2009年に55.9%とだんだん減っている。
また「結婚後子供がいなくても問題ない」と答えた人は16.0%(2012年)で、調査開始以来最も高い数値となった。2003~2009年の調査では、この値は11~12%にとどまっていた。
「絶対男の子を産むべきだ」という回答も2000年の16.2%から2012年の8.2%に大きく減った。
韓国保健社会研究院は「調査結果から、韓国人の出産・育児に対する価値観が大きく変化していることが読み取れる。
自治体が出産奨励策を行っても出産率が伸びる余地は見えない」とコメントした。
韓国保健社会研究院が行った別の調査は、子供を産みたくない大きな理由として、次の2つを挙げている。
1つは、「経済的費用の負担」。
教育費の負担が大きすぎるという理由だ。もう1つは、「女性だけが大変になるから」というもの。
回答者は、職場では両性平等でも、家庭に戻れば「子供を育てるのは女性」という意識が依然として強い、と感じている。
家庭と仕事を両立できるよう制度的にバックアップしない限り、出産祝い金を配ったり、割引を提供するくらいでは子供を産めないというのが女性の本音だ。
国際人口科学連盟(IUSSP)は8月、世界人口総会を釜山で開催する。
世界141カ国から人口政策の専門家2000人が参加する大規模な学術大会だ。
大会準備委員会は、韓国の人々に、もっと人口増加対策に関心を持ってもらうためこの大会を誘致したという。
総会では人口対策として、移民受け入れも議題にするようだ。
「韓国の生産人口を増やし、経済に活力を与えるためには、出産率を伸ばさないといけない。
しかし出産率は伸びそうにない。ならば米国のように移民をたくさん受け入れて若い人口を増やした方がいい」と主張する学者も現れるようになった。
人口を増やすため、農漁村では自治体が国際結婚を奨励している。
さらに「国際結婚」「移民家庭」ではなく「多文化家庭」と呼び、韓国社会に溶け込めるよう各種優遇策を発表している。韓国は人口減少を食い止められるだろうか。