産経
2016年3月13日
韓国経済の低迷が顕著である。2015年の国内総生産(GDP)成長率は前年比2・6%と、3%台の政府目標は未達だった。
朴槿恵(パク・クネ)政権は中国経済の失速など外的要因を強調するが、苛烈(かれつ)極まるこの国の「大学入試」や「詰め込み教育」のなれの果てという見方もできる。
中高生の学習到達度が世界トップ層なのに、55歳以降の学業能力、学習意欲は経済協力開発機構(OECD)最下位層にまで落ち込む。大学入学時に韓国のエリートがそのピークを迎えているようでは経済成長も心許ない。
「大学入試」がヤマ場という不幸
韓国紙、朝鮮日報(電子版)によると、
韓国開発研究院国際政策大学院の李周浩教授(元教育科学技術部長官)が、OECD加盟21カ国などを対象に11~12年に実施された「国際成人力調査(PIAAC)」の資料と、
12年実施の「学習到達度調査(PISA)」の資料を基に、韓国人の学業能力を分析。
中学生、高校生の学習到達度は世界トップレベルを誇るが、大学生になった20歳以降は徐々に低下し、35歳からはOECD平均以下に下がり、さらに55歳以降は最下位レベルにまで落ち込むことが分かったという。
「大学入試」というヤマ場を越えた後は低下の一途をたどるという現実が浮かび上がる。
具体的には、韓国の学生は06年以降、3回行われたPISAで、数学的応用力と読解力でOECD加盟国のうちいずれも1~2位を記録している。
政府はこれを「韓国教育の成果」とアピールしてきた。
一方でPIAACの得点を年齢別に分析した結果、韓国人は20歳以降、学業能力が相対的に低下し続けていた。
高校生では数的思考力(数学)と読解力はそれぞれオランダと日本に次ぐ順位だったが、20歳からは順位が急落し、35~44歳はOECD平均を下回った。
55歳以上は調査対象のOECD21加盟国のうち20位に沈んだ。
ニートのレベルも世界トップ
つまり、韓国人の学業能力ランクは、40年の年月を経てOECDトップレベルから最下位レベルに落ちてしまうわけだ。
年齢を重ねるごと、新しいことを学ぼうとする学習意欲、職場内の学習指標ともに乏しくなっていくのである。
ただ、そうした現実の背景に韓国の厳しい就職戦線があることも見逃せない。
あまりに極端な学歴社会のため、就職活動も熾烈(しれつ)だ。せっかく猛勉強して一流大学に入っても、思うような職に就けないという若者がわんさかいるのである。
必然的に青年無職者(NEET、ニート)も増えてしまう。
韓国紙、中央日報(電子版)は、OECDの調査を引用して韓国のニートの学業能力は2位だと報じた。1位は日本だった。
OECDによれば加盟国全体で見るとニートは3900万人に達し、日本と韓国のニートは読解力・数的思考力が「低い水準」に該当する者がそれぞれ3%、5%で、最も少なかったという。
学業能力が高いにもかかわらず、進学や就職、職業訓練をしない、あるいはできない若者が多いという現実。
学習意欲を失い、やる気も削(そ)いでしまうことだろう。韓国で自殺者が多いのもうなずける。
低質な大学の増加がもたらす弊害
朝鮮日報は、韓国人の学業能力ランクが年齢を重ねるごとに沈んでいくのは、小中高校での暗記中心の詰め込み教育による学習意欲の低下と、国際的水準に満たない低質な大学の増加が背景にあるという識者の分析を紹介している。
特に1990年代後半以降、韓国で大学が急増したものの、質的な成長を遂げられなかったことを指摘する声が大きいという。
韓国開発研究院国際政策大学院の李周浩教授は「上位レベルの大学よりも、相対的に質の低い下位レベルの大学への進学が増え、大学が社会に必要な人材を育てられなかった」と説明する。
優秀な若者が入学しても、きちんとした教育を受けられないのである。
このままでは、韓国人の能力が年を取るにつれ低下するという悪循環が続くことは避けられない。
政府、大学、さらには企業がこうした現状に真剣に向き合わなければ、経済の低迷は止まらないし、社会のゆがみもひどくなるだろう。
努力が報われない社会。ニートの学業能力の順位が韓国を上回った日本に対するメッセージととれなくもない。