韓国大統領、矛盾を露呈 慰安婦合意新方針、国内でも批判
2018年1月11日05時00分
韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は10日、新年の記者会見で、2015年の日韓慰安婦合意の再交渉を否定するとともに、日本側に「真実と正義という原則に立脚した解決を促す」と注文をつけた。
自国の国民感情と対日関係の両方に折り合いをつけようとしたが、日本政府は「さらなる措置は受け入れられない」と猛反発。韓国内でも批判が強まっており、かえって矛盾を露呈した形だ。
国内外約200人の記者が出席した会見で文氏は、自身が大統領選で再交渉を公約した日韓合意について「両国間が公式的に合意した事実は否定できない」と述べ、公約を撤回した。
その一方、「完全な問題の解決」のために「日本が真実を認め、被害者に心を尽くして謝罪し、それを教訓に再発防止のために国際社会と共に努力」することが必要との認識を示した。
あくまで自主的な行動を促すとのニュアンスだが、日本にボールを投げた形だ。
会見後、ソウルの日本大使館近くにある、慰安婦問題を象徴する「少女像」周辺で元慰安婦の支援団体が集会を開いた。
約300人が「屈辱的な日韓合意は無効だ」「日本政府に10億円を返還せよ」と声を上げた。
韓国政府は今後、「後続措置」を決める際は、元慰安婦や支援団体の意見を聴くと説明しており、こうした主張に影響される可能性もある。
康京和(カンギョンファ)外相は9日、再交渉はせず、
日本政府が元慰安婦の支援財団に拠出した10億円と同額を韓国政府の予算から支出するとした新方針を発表したが、
10日付の韓国メディアは「世論と韓日関係の板挟みになり、『合意は認められないが再交渉の要求もしない』という矛盾した対策を打ち出すしかなかった」(朝鮮日報)、
「前政権の外交失策を問いただして国家信頼度を傷つけた」(中央日報)などと批判的に報じた。
日本政府は10日、外務省の金杉憲治アジア大洋州局長が在日韓国大使館の李熙燮(イヒソプ)公使に厳重抗議し、「日韓合意の着実な実施が重要」との立場を改めて伝えた。
政府は9日にも、康外相が日韓合意の新方針を発表したことで厳重抗議していた。
日本政府内では文政権への不信感が高まっている。
菅義偉官房長官も10日の定例会見で「韓国側がさらなる措置を求めることは全く受け入れられない」と述べ、「合意を1ミリたりとも動かす考えはまったくない」と強調した。
(武田肇=ソウル、松井望美)